新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、自宅療養者が急増し26万人を超えた。新たな変異株「オミクロン株」は重症化リスクが他の変異株に比べて低いとされる一方、感染力が強く感染対策が難しい部分もある。自宅療養者になった場合、どんな点に気をつければいいのか。
オミクロン株は主に上気道に感染するため、 感染者は重い肺炎などを発症しにくく、デルタ株などこれまでの新型コロナと比べて重症化リスクが低いとされている。広島県がオミクロン株に感染した疑いのある昨年12月22日〜今年1月5日の390人の症状を分析したところ、7割に 37.5度以上の発熱があった。デルタ株が主流だった昨夏の「第5波」と比べて、喉の痛みや鼻水、筋肉痛が目立った。
オミクロン株による感染者の急増を受けて、 国は医療機関への負担を減らすために全員を入院させていた措置から、原則自宅や宿泊施設での療養に切り替えるよう方針を転換した。後藤茂之厚生労働相は1月24日、感染が拡大して受診や検査に時間を要する地域では、同居している家族などの濃厚接触者で発熱などの症状が出た場合は、検査をしなくても医師が新型コロナの感染を診断できるとの方針を示した。
○重症化率低い
では、体調に異変を感じたらどうすればいいのか。ナビタスクリニック新宿の久住英二医師は「普段めったに風邪を引かない人が『風邪を引いた』と感じたら、まずコロナだと思っていい」と指摘する。多くの人は高熱が出ても、2〜3日でピークを越えるとみられ、 「新型コロナは50歳未満では、重症化や死亡するケースは極めてまれだった。オミクロン株になってさらに重症化率が下がっている」といい、安心して療養に専念するよう助言している。
自宅療養者は、昨年12月に国内で初めて承認されたコロナ患者用の飲み薬「モルヌピラビル」を服用できる。ただし、対象は限られており61歳以上か、18歳以上で基礎疾患やBMI(体格指数)が30以上など重症化リスクのある軽症・中等症患者に限定される。また、発症から5日以内に使い始めなければいけないが、感染者が急増している影響で、抗原検査キットが不足したり、PCR検査の結果が出るまでに2日以上かかったりするなど出遅れが発生。その結果、5日以内の服用がギリギリになるケースが増えているという。
○市販の解熱剤でよい
モルヌピラビルの投与対象外の人には、医療機関で解熱鎮痛剤が出される。久住医師は「喉の痛みが強くて食事や水分が取れないと脱水となり、状態が悪化する。市販の解熱鎮痛剤でいいのでしっかり使い、水分を摂取すべきだ。オンライン診療などでより効果的な薬を出してもらえる場合もある」と話している。
昨夏の第5波では自宅療養を余儀なくされた結果、自宅で容体が急変し死亡した患者もいた。救急車を呼ぶ目安としては、安静にしていても息苦しい▽体の半分が重くて力が入らない▽手足をうまく動かせない▽意識が薄れる▽経験したことのない苦しさを挙げている。
また、自宅療養で気になるのが家庭内感染だ,デンマークのデータでは、感染者の出た世帯のうち、親など他の家族の人にうつした割合はオミクロン株だと31%に上り、デルタ株の21%を上回った。
感染制御学が専門の愛知県立大の清水宣明教授は「(家族に)症状が出ていない場合であれば、部屋の換気をできるだけよくして、不織布マスクを着用したり、寝室を別にしたりといった対策を1週間は続けた方がいい」と話している。
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