1.次期診療報酬改定に向けた評価の対象 歯科医療技術は76件
11月16日 日本歯科新聞 |
令和4年度診療報酬改定に向け、新規保険収載や既収載技術の見直し、適応疾患の拡大などの対象となる医療技術は768件(新規288件、既存480件)。10日の中医協診療報酬基本問題小委員会と総会で報告があったもので、歯科関係では、「歯科用CAD/CAM装置を用いたファイバー補強高強度コンポジットレジンブリッジ」「CAD/CAMインレー修復に対する光学印象法」「CAD/CAMインレー修復」「インフォームドコンセントへの口腔内スキャン検査の応用」など新規22件、既存54件が評価対象となる。
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2.小野薬品、特許の崖に備え急務 オプジーボ和解の背景
日本経済新聞 11月15日 |
小野薬品工業はがん免疫薬「オプジーボ」の特許使用料を巡る訴訟で、原告である京都大学の本庶佑特別教授に解決金など50億円を支払い、京都大に230億円を寄付することで和解した。オプジーボの特許は2031年ごろに切れる。一般的に薬の商品化は基礎研究から10年以上かかり、現状でオプジーボの穴埋めは難しい。アカデミア (学術界)や海外企業と提携して有望な薬候補を探すうえで、法廷闘争によるイメー ジ悪化を抑える必要があった。
小野薬品の21年3月期の連結売上収益は3092億円で、このうちオプジーボ関連は6割を占める。主な関連収益は、①自社のオプジーボの売り上げ②欧米などでオプジーボを販売する米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)からのロイヤルティー収入③オプジーボの特許にからむ米メルクからのロイヤルティー収入がある。オプジーボは24年以降、収益が減る可能性がある。③のメルクからのロイヤルティー収入は21年3月期に243億円あったが、24年から減少が始まり27年にゼ口になる。 ①と②についても28~31年ごろに国内外で特許切れを迎える。後発品が登場し売上高は大幅に減る見通し。
メルクのがん免疫薬「キイトルーダ」という強力なライバルもいる。米医薬コンサルティングのIQVIAによると、20年のキイトルーダの世界販売が151億ドル超(約1兆 720億円)だったのに対し、オプジーボは83億ドル(約9500億円)だった。日本国内でもキイトルーダの後じんを拝す。
小野薬品は「オプジーボ後」を見据え、がんや免疫などを重点領域として経営資源を集中する。国内外で約200件の共同研究を進め、年間の研究開発費を現在の700億円から1000億円規模に増す計画だ。ノーベル賞受賞者である本庶氏との訴訟の長期化はこの動きに水を差しかねない。小野薬品の相良暁社長は「提携がやりにくいという事は一切なかった」と説明するものの、マイナスイメージがつきまとう。
アカデミアや海外企業が小野薬品との提携を嫌がれば潜在的な成長の種を失う。機関投資家が投資を敬遠したり、採用でも優秀な人材を逃したりする可能性がある。小野薬品は本庶氏に提訴された直後の20年7月当時、徹底抗戦の構えだった。しかし、大阪地裁で判決が出ても控訴審に進めば決着まで時間がかかる。本庶氏側が06 年の特許使用のライセンス契約について新たに訴訟を起こす可能性もあった。このため態度を軟化し、今回で「最終決着」とする道を選んだ。和解で本庶氏とのいがみ合いに区切りがついた。今後は成長維持という決着がない課題に向き合う。
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3.国民医療費、3年連続で最多更新 1人当たり2.5%増の35万1800円
讀賣新聞オンライン 11月9日 |
厚生労働省は9日、2019年度に保険診療にかかった医療費の総額である国民医療費が、前年度比2.3%増の44兆3895億円だったと発表した。1人当たりでは同2.5%増の35万1800円となり、いずれも3年連続の増加で、過去最高を更新した。国民医療費の増加について、同省は、高齢化や医療の高度化が要因としている。国民医療費は医療保険給付や公費負担、自己負担の総額で、保険診療の対象となる医科、歯科の診療費や薬局の調剤料などを含む。保険診療外の先進医療などは含まない。
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4.大きさ2倍の歯の模型、視覚障がい者へ届けたい「いい歯の日」にCF
朝日新聞 デジタル 10月22日 |
歯を守るためには正しい歯磨きを学ぶことが必要だ。でも、自分の歯を見ることができなかったら? 大阪大学は視覚障害者の歯磨き指導に役立ててほしいと、通常の2倍の大きさの歯の模型を作った。全国の視覚支援学校や大学付属病院などに寄贈するため、11月8日(いい歯の日)にクラウドファンディング(CF)を始めた。
きっかけは2014年、阪大歯学部付属病院(大阪府 吹田市)を全盲の女性(当時20)が訪れたこと。女性は歯科医師の説明を受けても、どの歯が虫歯なのか、なかなか理解できない。一般的な模型を触らせてみたが、小さすぎて歯や歯茎の境目がわかりにくいという。
「視覚障害者は自分の口の中の構造をわかっていないことが多い」。同病院の村上旬平歯科医師(47)はそう話す。目が見える患者は、鏡を見ながら「前から〇〇番目の歯並びが悪いので丁寧に磨いて」などと言われれば理解できる。だが視覚障害者はそれが難しいという。そのため適切な歯磨きができず、虫歯や歯周病になってしまうことも少なくない。
「見えなければ、手を使って口の構造を知ってもらおう」。阪大は付属歯科技工士学校の小八木圭以子さん(43)を中心に、視覚障害者の意見を聞きながら模型の改良に取り組んだ。縦・横・高さが通常の2倍の歯の模型を、大人用、子ども用、生えかけの3セット用意。歯は歯茎部分に固定せず、磁石でくっつくようにした。歯を動かして患者の歯並びを再現し、「この歯は前に出ているから、歯ブラシを縦にして磨かないといけない」などと伝えるためだ。
16年にできた模型は日本障害者歯科学会でも評判を呼び、17年度のグッドデザイン賞を受賞した。府内の一部の視覚支援学校では、実際に歯磨き指導に活用されている。「小さな子どもでも、触って楽しみながら歯磨きを学んでくれる」と好評だ。記者もアイマスクをつけ、模型を使って歯磨き指導をしてもらった。一つ一つの歯が大きく取り外しもできるので、歯科医師がどの歯について話しているかがわかりやすい。歯並びの悪い箇所や親知らずも再現されていたので、手探りでも口の中をイメージすることができた。
この模型の課題は、価格だ。通常の模型は3万円以下だが、販大の模型は10万円ほど。―般向けではないので需要も限られており、量産してくれる企業は見当たらない。その結果、全国には行き渡らなかった。
そこで阪大はCFの活用を決めた。目標は1200万円。達成できれば、全国の視覚支援学校に加え、視覚障害者の支援団体、各地の大学付属病院を合わせた計約120カ所に模型を寄贈する。CFを進める阪大の十河(そごう)基文教授によると、大人が歯を失う主な原因は歯周病で、予防には歯磨きが有効だ。「学校や病院など、視覚障害者があらゆる機会に正しい歯磨きを学べる環境作りが必要だ。すべての人の『健口(けんこう)』のため、協力してほしい」と話している。
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