1.歯科医悩ます「銀歯」高 診療報酬の改定追いつかず
日経電子版 5月6日
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国際商品市況の高騰が歯科医という意外な場所に影響を及ぼしている。歯の治療に不可欠な「銀歯」の価格が、原材料貴金属の価格高騰により上昇が続いているためだ。投機マネーの影響もあって相場が急騰する一方、政府の決める治療費は一定期間据え置かれる。銀歯の仕入れ価格が治療費を大きく上回り、歯科医にとって悩ましい状況が続いている。
「治療をしても利益ゼロや赤字になる。とてもやっていられない状況だ」。神奈川県横須賀市で歯科医院を営む医師の田中敏章さんは嘆く。銀歯の正式名称は「鋳造用金銀パラジウム合金」。銀のほか、銀より高価な金とパラジウムを含む。特に含有率が2割と多いパラジウムの高騰が銀歯高に響いている。パラジウムは主に自動車の排ガス触媒に使う貴金属だ。「近年中国などで環境規制が強まり、規制クリアの要となる触媒の需要が増している」(日本貴金属マーケット協会の池水雄一氏)。
パラジウムの国際相場は4月に史上最高値を更新。足元では1トロイオンス約3000ドル近辺と、過去5年で約5倍に上昇した。新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴い自動車需要が増加。そこに金融緩和であふれるマネー流入も加わり、高騰に拍車がかかっている。パラジウム高を映し、歯科医が仕入れる銀歯の価格も高騰している。全国保険医団体連合会の調査によると、昨年2月頃には一時政府の決める公定価格では仕入れの実勢価格の6割程度しかカバーできなくなった。残りの逆ざや分は歯科医がかぶる。
実勢価格と公定価格のずれが拡大したのは、貴金属の値動きを公定価格に迅速に反映できないためだ。銀歯の公定価格は基本的に2年に1度の診療報酬改定に合わせて決まる仕組み。半年以内に原料価格に5%以上の変動があった場合に見直すルールはあったものの、ここ数年の急騰に追いつかなかった。これに対応して厚生労働省は昨年3月、原料価格の変動幅が15%と大幅に動いた場合に、より短期で公定価格を見直す制度を新たに導入した。それでも根本解決にはなっていない。
公定価格は4月現在1グラム2668円。一方で、4月上旬時点の仕入れの実勢価格は3200円前後と、2割弱の赤字が発生している。だが、4月中旬に開かれた中央社会保険医療協議会では今年10月までの公定価格の据え置きが決まった。価格の算定期間における貴金属の変動幅が、見直しの基準となる15%に達していないとみなされたためだ。今後相場がさらに高騰して逆ざやが広がっても、現行制度に変化がない限り公定価格は今後半年間変わらない。
逆ざやは歯科医の賃金となる技術料を圧迫している。歯科医が利益の出ない銀歯を避け、利幅の大きい高額な治療ばかり勧めれば患者の負担も増すことになる。厚労省はプラスチックを用いた代替材の保険適用も進める。ただ現時点では「治療面で銀歯などの金属の方が優れている」(歯科医)との見方も多い。一部の歯科医からは、逆ざや分を患者から徴収したいとの声も上がる。現在は認められていないが、かつて自費診療材料費を保険給付で振り替えて、上回った差額を患者から徴収できる仕組みがあり、1970年代には高額な医療費を請求する一部の歯科医の存在が社会問題化した。政府は76年にこの仕組みを廃止した経緯がある。
制度の矛盾で生じた逆ざやのツケを患者に回そうとすれば問題を再燃させかねない。神奈川県保険医協会の高橋太事務局次長は「経済力にかかわらず治療を受けられるという皆保険制度の理念に反する」と指摘する。短期で動く貴金属相場の実態に即し、歯科医と患者の負担のバランスがとれた公定価格を決められる制度を求める声が強まっている。
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2.日本記録出しても「今年で最後」 陸上金井、決意のわけ
朝日新聞デジタル 5月4日 |
競技生活は今年が最後。引退後は歯科医師の道へ。そんな青写真を描いている陸上選手が、東京五輪を目前にして日本新記録をマークした。先月29日に広島であった織田幹雄記念国際大会の男子110メートル障害決勝で、金井大旺(たいおう)(ミズノ)は1台目からリードを奪い、元日本記録保持者の泉谷駿介(順大)らを寄せ付けなかった。自己ベストを一気に0秒11更新し、高山峻野(ゼンリン)が2019年に出した13秒25の日本記録を0秒09縮めた。
金井が出した13秒16は、2019年ドーハ世界選手権なら銅メダル、16年リオデジャネイロ五輪なら銀メダルに相当する。日本選手初の五輪の決勝進出が現実味を帯びてきた。レース前に掲げていた目標は五輪参加標準記録(13秒32)の突破だっただけに「想定をはるかに上回ったので、自分でもびっくりしています」。冬場の練習で踏み切り時に重心を高いまま維持できるようになったことが、好記録の要因のひとつという。
北海道函館市にある実家は歯科医院を営んでいる。自身も東京五輪を最後に競技から引退し、医大に進んで歯科医をめざすと以前から公言してきた。日本記録をたたき出しても「今年で最後という思いに変わりはない」と断言する。「区切りをつけてやっているからこそ、こういう記録につながった。もう一度、この冬のトレーニングができるか、と聞かれても『イエス』とは言えない」
陸上は小学校3年生の時に地元のクラブで始めた。進学校として有名な函館ラ・サール高へ進学。卒業後は医療系の大学で学ぼうと考えていた。高校3年で出た全国高校総体が転機となった。結果は5位。「競技をやるからにはトップをめざしたい」。男子400メートル障害の元日本記録保持者、苅部俊二氏が指導にあたる法大へ進んだ。大学4年の17年にユニバーシアードで4位入賞、翌年の日本選手権では13秒36の日本新(当時)で初優勝を飾った。19年には世界選手権を経験するなど順調に階段をのぼってきた。
あこがれの選手は劉翔(中国)だ。04年アテネ五輪の110メートル障害で優勝し、アジア選手として五輪のトラック種目でただ1人の金メダリストとして輝くスーパースターだ。「今でも動画を見ます。スピードもテクニックも全部がワンランク上の選手で、自分の参考にはなりませんが。」13秒16をマークしたことで、劉翔の持つアジア記録(12秒88)に次ぐアジア歴代2位に名を連ねた。
6月末の日本選手権で3位以内に入れば五輪出場が決まる。「まずは五輪の出場権をしっかり獲得すること。その上で五輪の準決勝で、織田記念の時のような動きができるようにピークを作って決勝進出をめざしたい」 五輪に向けても、その後についても、めざす道は明確だ。
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3.期限切れ国保保険証、自治体への返却不要に 制度見直し
朝日新聞デジタル 4月28日 |
有効期限が切れた国民健康保険と後期高齢者医療制度の被保険者証を、市区町村の窓口に返すように義務づけている制度について、総務省行政評価局は28日、自分で破棄できる制度に見直すよう厚生労働省にあっせんした。厚労省も見直しの必要性を認めており、近く関係省令を改正する。
国民健康保険や後期高齢者医療制度の被保険者証には、1-2年の有効期限がある。厚労省は省令で、医療機関での誤使用や悪用を防ぐためとして、 期限が切れた被保険者証は速やかに市区町村の窓口に返却する義務を定めている。
しかし、四国行政評価支局(高松市)に「更新のたびに自治体の窓ロに行って返却しているが、医療機関も確認するため、期限が切れても悪用は考えられず、自分で破棄してもよいのでは」との行政相談が寄せられたことをきっかけに、管内を調査。その結果、9割の自治体が本人による破棄を事実上認めており、返却を求めていない実態が浮かんだ。そこから全国的な見直しの検討が進み、所管する厚労省保険局も、実態を踏まえて「特段の支障はない」との見解を示すに至ったという。
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4.歯科医によるワクチン接種、有識者懇で了承
讀賣新聞オンライン 4月24日 |
厚生労働省は、歯科医による新型コロナウイルスのワクチン接種を認める方針を決めた。医師や看護師が不足する地域で、歯科医に接種の協力を得ることで、5月以降に本格化する高齢者向け接種を滞りなく進めたい考えだ。23日の有識者懇談会で了承され、近く自治体向けに通知する。
歯科医の接種が認められるのは、〈1〉集団接種の特設会場で医師や看護師の必要な人数が確保できない〈2〉接種にあたる歯科医が接種の知識や技能に関する研修を受けている――などの条件を満たした場合になる。会場では医師による問診後、歯科医が接種する。
医師法などでは、ワクチン接種が可能なのは医師や看護師らに限られる。
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