1.高齢者医療費、負担増 住民税非課税は対象外
毎日新聞 11月19日 |
75歳以上の高齢者の医療費自己負担を1割から2割に引き上げる制度改正を巡り、政府は住民税が課税されていない6割弱の人は引き上げの対象外にする検討に入った。今後、所得の上位20〜43%(年金収入のみの単身世帯モデルで年収約240万〜155万円)の間で複数の線引きの案を議論し、12月に具体的に決める予定だ。
75歳以上の自己負担は原則1割で、現役並み所得(単身世帯で年収383万円以上)があれば3割(所得上位7%以上)だ。政府は一定所得以上がある1割負担の人を2割に引き上げる予定で、線引きを議論している。日本経済団体連合会などは収入の少ない住民税非課税世帯と現役並み所得者を除いた「一般区分」(全体の52%)すべてを2割にするよう求めていた。
ただし、高齢者本人が低収入で住民税非課税であっても、同居の家族が住民税を課税されているため一般区分に含まれているケースがある。75歳以上の 15%(約270万人)が該当する。このケースについて「一定所得があるとは言えない」 「自己負担を2割に引き上げると同居の家族にしわ寄せが来る」との批判があったことなどから、自己負担を1割に据え置く方向だ。
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2.保険証の将来的廃止を マイナカード普及へ自民が提言案
朝日新聞デジタル 11月17日 |
自民党は17日のデジタル社会推進本部 (本部長・下村博文政調会長)で、デジタル化の推進に向けた第1次提言をまとめた。マイナンバーカードが近く健康保険証として利用できるようになることを受け、保険証を将来的に廃止するよう求めている。カードの普及を後押しするねらいだ。提言は18日に政府に提出される予定で、2030年の将来像と25年までの改革工程表を今年末までに示すことも求めた。 関係省庁は具体的な工程表づくりに着手する見通しだ。
マイナンバーカードは来年3月から、本人が希望すれば保険証の機能を上乗せし、6割程度の医療機関で使えるようになる見込みだ。来年秋以降、薬の利用歴を本人や医療機関などが閲覧したり、医療費情報を確定申告に活用したりできるようにもする。ただ、多くの人がそのまま保険証を使い、カードへの移行が進まない可能性もある。そこで提言では、法令で健康保険組合などに課される保険証の発行義務を緩め、「将来的に健康保険証を廃止する」とした。いずれは保険証の発行をやめることで、カード利用を促したい考えだ。
平井卓也デジタル改革相は17日の会見で、保険証の将来的な廃止について「カードの取得が進めば、将来的には保険者(保険組合など)の判断で発行しなくてもよいというのは当たり前。保険証発行のコストも助かる」と述べた。ただ、カードを取得するかどうかは任意で、政府が9月から大規模なポイント還元を実施しているにもかかわらず、取得率は2割強にとどまる。カードを持たない人が多いまま保険証を使えないようにすれば、健康保険を利用できない人が出たり、カード取得が事実上の義務となったりするおそれもある。
田村憲久厚生労働相は同日の参院厚労委員会で「保険証をなくすのはまだ先の話だ」と述べ、慎重な姿勢を示した。同省は同日、カードを保険証として使える医療機関を増やすため、カードリーダーなどの準備費用を原則として全額補助する方針を発表。保険証として使える病院などを増やすことを優先する。
―方、提言では、カード発行などを担う「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」は、地方自治体が共同運営する今の組織を見直し、「デジタル庁が直接関与できる組織」に変えるべきだとした。また、デジタル庁は「既存の府省の寄せ集めでは本末転倒。政府・地方公共団体、民間のデジタル化をけん引する強力な司令塔機能が必要」として首相がトップの内閣直属の組織とすることを要求。国のシステム統一は3年、地方は5年で進めるとし、地方にはデジタル庁が資金や人材を支援するよう求めた。
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3.障がい者歯科の認定医数 歯学部ない沖縄県がトップの理由
毎日新聞 11月15日 |
高齢化社会の進展などで、障がいや認知症を抱える患者が増えるなか、専門知識と経験を生かし優しい治療を目指す「障がい者歯科」が注目されている。全国に約10万人いる歯科医師のうち「日本障がい者歯科学会」(事務局・東京)の試験や実習を受けるなどして、障がい者歯科の認定医の資格を-得ているのは1235人。九州・沖縄・山口では173人の認定医が活躍している。
障がいや病気を抱えた患者は、同じ姿勢を ―定時間保つのが難しいなどの理由で、歯科に行きづらいことがある。 「障がい者歯科」では患者の特性が十分に把握され、さまざまな配慮がある。専門機関と連携し、障がいが重い場合は全身麻酔を使って集中的に治療するケースもある。認定医の数を人口10万人当たりで見ると、沖縄が1.93人で全国トップ。長崎が2位(1.88人)、福岡5位(1.49人)とトップ10に3県が入っている。
沖縄の認定医は28人。県内の障がい者歯科をけん引しているのは県歯科医師会が運営する県口腔保健医療センター(南風原町)だ。水野和子診療部長(56) は「沖縄県には歯学部がなく、地理的にも応援を頼みにくい。開業医らが早くから『自分たちで何とかしなければ』と熱心に学び、高い意識を持っていた」 と説明する。一方、認定医が25人いる長崎は、長崎大学歯学部と県歯科医師会が長年、密接に連携。歯学部では初年度から障がい者歯科を扱い、大学病院が研さんの場になっている。また、県歯科医師会は離島や、過疎地に歯科医師と「巡回歯科診療バス」を派遣している。
沖縄、長崎とも県歯科医師会が障がい者を診ることができ、必要があれば専門性の高い医療につなぐことのできる「協力医」を育成。沖縄約130人、長崎約 300人が活動している。福岡には76人の認定医がいる。九州で最も長い歴史のある障がい者歯科のーつ、 「おがた小児歯科医院」 (福岡市博多区)では言語訓練などにも取り組む。 石倉行男院長(53)は「障がい者歯科では継続的に受診してもらうことが大切で、認定医がさらに一般開業医に広がっていくことが理想的だ」と期待する。
2016年の開院以来、多くの障がい者を受け入れてきた福岡県春日市のリチャード歯科を訪ねた。ミーティングで、認定医の木村敬次リチャードさん (51)が「歯科医と歯科衛生士が1人の患者さんに同時に声をかけると混乱させてしまうことがあるので気をつけよう」と話していた。ダウン症の長女(8) を通院させている40代の男性会社員は「5歳の初診時、歯科治療を怖がっていた娘が自分から診療椅子に座るまでスタツフが笑顔で促しながら30分近く待ってくれた。うれしかった」と話した。日本障がい者歯科学会元理事長で現在も福岡で認定医の育成に取り組む緒方克也さん(72)は「誰もが口の中を健康に保つ権利がある。介護士や教育関係者など多職種が地域で協力していくことが大切だ」と話す。
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4.むし歯治療で接着剤 「MARIMO」を初の商品化
朝日新聞デジタル 11月10日 |
歯科用の金属製品などを手がける大阪市のメーカー「YAMAKIN(ヤマキン)」が、扱いやすく接着力が高い歯科用接着剤の新商品を売り出している。高知工科大などが開発したナノ粒子の多孔質集合体「MARIMO(マリモ)」を使い、初めて商品化した。
MARIMOは二酸化チタンやジルコニアなどの金属酸化物を材料にしたナノ粒子(0.1ミクロン以下)の球状集合体で、表面に無数の凹凸があり、表面積が大きい。高知工科大の小広(こびろ)和哉教授の研究チームと研磨剤メーカーの宇治電化学工業(高知市)が2015年に大量合成を実現し、商品化に道を開いた。
接着剤「KZR―CAD マリモセメントLC」はジルコニアでできたMARIMOを活用した。重度のむし歯治療で使われるプラスチック製のかぶせ物を接着する場合、従来の主流品では2種類の材料を混ぜ合わせる工程が必要だった。だがマリモセメントは混ぜる必要がなく、光を数秒当てるだけで固まり、はみだした余剰の接着剤を取り除くのが簡単。接着力の耐久性も従来品と遜色なかったという。
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