1.歯科医院はコロナ感染リスクが医療界トップ…それでも感染ゼロの理由
日刊ゲンダイ 11月3日 |
3月に世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスのパンデミックを表明、欧米諸国が緊急事態宣言を発令した頃、米国金融出版社「GO Banking Rates」が、各職業のコロナのリスクスコアを算定。スコアが100に近いほど感染リスクが高いのだが、歯科衛生士99.7、歯科医92.1と歯科関連が医療関係でもトップだった。ほかの医療関係では、開業医90.1、正看護師86.1、放射線技師84.1、内科医79.8、救急隊員70.7。
「患者さんの中には、歯科の診療を抑制する動きも出ました。しかし、歯科診療を介しての感染は(10月20日時点で)一例も報告がありません。このスコアは、労働統計局のデータに基づき、どれだけの人と近接する仕事か、他人にどれだけ接近して行う仕事か、仕事中に危険にさらされる頻度をみたもので、人に近接する仕事として気をつけてくださいというメッセージとして捉えています」(日本歯科大学付属病院口腔外科 小林隆太郎教授)
小林教授によると、歯科診療でコロナ感染が起きていない理由として、やはり消毒の徹底が挙げられるという。「オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)による滅菌の施行、消毒アルコール、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒の習慣がコロナ以前から身に付いていました」
○ 平熱より1度高ければ発熱と捉える
院内感染防止のために、医療従事者やスタッフが正しい知識を持ち、標準予防策を全員が確実に行う。その中には歯科医院ならではの対策とは別に、私たちが日常に取り入れたいものもある。まず、体調管理だ。これまで「コロナでも症状がない人が多い」といわれてきたが、そうではないことが最近の報告で分かった。
「ベルン大学の79研究、6616例のメタ解析では、無症状のまま経過する割合は20%、症状が出現する割合は80%と、ほとんどが有症状との報告です。これまで無症状者が50%や70%と特定の地域のみの報告でしたが、結局、無症状者はインフルエンザよりやや多いくらいということになります」
日本歯科大学では診療の際に、患者の体調、味覚・嗅覚の異常の有無について質問。体温の測定も行い、平熱より1度以上の体温上昇を発熱と捉え、コロナの感染者を見つけ出すようにしているという。私たちも日頃から体調をチェックしておくこと。平熱は何度か確認し、折に触れて体温チェックを取り入れることは、コロナの早期発見、ひいては感染拡大防止に役立つ。
○ 空調設備より換気の方が発症リスクを下げる
次に、定期的に窓開けを行い、換気を徹底すること。コロナは、飛沫感染と接触感染が主な感染経路だが、マイクロ飛沫やエアロゾルと呼ばれるウイルスを含むごく小さな水滴からの感染もある。換気のできない部屋では、エアロゾルが3時間以上も空中に浮遊。エアコンなどで拡散されると、普通の飛沫では届かない距離にいる人にも感染する可能性がある。
「SARSの際には、空調のある設備の整った病院より、窓を開け放っていた公立病院の方が院内感染率が低かったとの報告もあり、換気の重要性が指摘されています」さらに、「密集・密接」の回避。
「スタッフルームでは対面・近接横並びの食事、密接状態での会話に注意し、食事は窓を向いて一人ずつ取っています」コロナの家庭内感染もよく言われるが、マスクを外して過ごす家庭内では、食事中は、可能であれば向かい合わないように席に座った方がいいかもしれない。
○ 歯科の定期健診は「不要不急」ではない
「歯周病と全身の重症疾患の関係が報告されています。歯科は定期的に、継続的に通い、管理をすることが重要。特に大切なのは軽症者で、自分は歯周病じゃないと思っていてもケアが必要で、重症化予防をする必要があります。長期間プロフェッショナルなケアが受けられないと悪化する可能性があります。継続的に口腔内の衛生管理をすることが健康寿命につながります。」
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2.政府、医療機関へのマイナンバーカード普及に躍起
朝日新聞 11月3日 |
残り約5カ月で4倍に増やせるか――。政府が医療機関へのマイナンバーカードのシステム普及に向け、てこ入れを強めている。来年3月中にカードを健康保険証として使えるようになるが、対応を予定する医療機関数は目標の4分の1にとどまっているためだ。
2日夜、東京・霞が関の厚生労働省。平井卓也デジタル改革相と田村憲久厚労相が、顔認証で本人確認をするカード読み取り機器を体験した。田村氏は「利便性がさらにあがる」。平井氏は「思ったより早い。時代が変わったなと思ってもらえる」とアピールした。両氏がわざわざ実演してみせたのは、導入を予定する医療機関がまだ少ないことが背景にある。厚労省によると10月25日時点で約3万6千施設と、全国約23万施設の約15・7%に過ぎない。来年3月の開始時に目標とする60%は遠いのが実態だ。
同省は、保険証が一体となったマイナンバーカードのシステムを使えば、患者の年齢や所得に応じて自己負担額の上限が決められている「高額療養費制度」の手続きが簡単になるなど医療事務も省力できるとする。過去に処方された薬や健康診断の情報をみて、それぞれの患者にあった診療もできる利点も訴える。菅政権はあらゆる分野のデジタル対応を加速する方針を掲げている。そのカギとなるマイナンバーカードは普及率が2割と低迷しており、来年3月の保険証との一体化には普及のてこ入れをはかる狙いもある。
厚労省は周知不足などに加え、医療機関が導入費負担に消極的なことが課題とみる。既に、医療機関のデジタル化を支援する基金を活用し、読み取り機器を病院には3台まで、診療所や薬局にも1台を無償で提供し始めた。システム導入でも、医療機関の規模に合わせて2分の1~4分の3を補助する制度を整えたが、補助率の引き上げで拡充することも検討中だ。
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3.ユーファクター、アルツハイマー薬の臨床研究 乳歯を活用
日本経済新聞 10月29日 電子版 |
再生医療スタートアップのユーファクター(東京・千代田)は11月、アルツハイマー治療薬の臨床研究を始める。乳歯から採取した幹細胞を培養して、上澄み液を鼻の奥に投与する。幹細胞そのものを使った治療法に比べて安価でできる可能性がある。研究で効き目や安全性が確認できれば、臨床試験(治験)を始める計画だ。
東京都内の診療所で臨床研究を実施し、1年間で数十人の参加を目指す。幹細胞の培養液に含まれる「サイトカイン」と呼ぶたんばく質が脳の神経細胞などの再生を促す仕組み。1日2回、2週間の投与で症状改善を目指す。名古屋大学医学部の上田実名誉教授がユーフアクター取締役に就任し、技術面を指導する。アルツハイマー治療を巡っては幹細胞を使った再生医療が研究されているが、上田取締役は「一般的に培養が難しいため高額な治療費や、投与した細胞ががん化するリスクがある」と指摘する。
歯の神経から採取する幹細胞は骨髄などから採取するものより入手しやすく、様々な再生医療への活用が期待されている。ユーファクターは幹細胞そのものではなく、その分泌物のサイトカインを投与することでリスクを抑えた治療法の確立を目指す。
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