1.新潟大歯学部ベンチャー、歯ブラシの定額サービス提供へ
日本経済新聞 電子版 3月12日 |
口腔ケアの重要性を伝えようと、新潟大学歯学部の学生が新たに大学発ベンチャーを立ち上げた。歯科医と連携して患者の特徴に合わせた歯ブラシを提案するほか、毎月定額で商品を届けるサービスを展開する。歯ブラシの定期的な交換を促し、むし歯の予防に役立てる。歯科予防の先進県、新潟から歯磨きの正しい方法を普及させようとの試みだ。
新潟大で口腔ケアの普及啓発に取り組む学生団体が2月に新会社「SNOWHITE」(新潟市)を立ち上げた。毛先の長さや硬さが異なる20種類の歯ブラシの開発に着手し、2022年までに発売する。 商品の設計は社外取締役に就いた同大歯学部の教員が助言する。歯や歯肉の状態はヒトによって様々だ。スノーホワイトの大塩優多最高経営責任者(CEO)は「ドラッグストアなどの小売店に並ぶ歯ブラシは種類が多すぎて自分に合ったものを選ぶのが難しい」と指摘する。
口内環境に合わない歯ブラシを使うと歯の菌や汚れの除去率は最大で50%落ちるという。こうした課題に対処するため、同社は歯科医院と連携する。歯科医が患者の歯の状態を診断。同社がそろえる20種類の歯ブラシから患者に適したものを処方し、提供する。歯ブラシ1本の価格は1000円を想定する。一般品より高価格だが、歯科医が処方するため、効果的に磨けることを売りにする。
歯ブラシは通常、1カ月の使用で歯垢の除去率は30%落ちるため、定期的な交換が必要だ。同社は月額1000円前後で利用者に歯ブラシを届ける「サブスクリプション(サブスク)型」のサービスを検討している。自分に合った歯ブ、ラシや他の商品の磨き心地を試したい利用者に毎月必要な本数を送る。
大塩CEOは筑波大在学中に歯科衛生の技術に興味を持ち、新潟大歯学部に進学した。口内環境が不衛生だとがんや糖尿病など命に関わる病気につながるため、「口腔ケアの重要性を伝えたい」(大塩CEO)と考え起業した。新潟は歯科予防教育が進んだ県として知られる。文部科学省によると、県の12歳児の虫歯の平均本数は0.3本と、19年連続で全国最少だった。教育現場で虫歯予防に効果があるフッ化物を含んだ水で口をゆすぐ取り組みが普及しているのが一因だ。
ただ、成人後の虫歯の本数は全国平均並みになっている。「むし歯の予防は歯磨きが基本だということをサービスを通じて発信したい」(大塩CEO)。当面は新潟県内を中心に事業展開する予定で、22年に約600万円の年間売り上げを目指す。
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2.「既にマスク不足」2割 茨城県内医療機関 長期化へ懸念
毎日新聞 3月11日 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、茨城県内の医療機関の2割が、既にマスク不足に陥っていることが県保険医協会の緊急調査で判明した。現状では足りていても備蓄量が30日以内との回答が7割超で、医療機関の間でマスク不足の長期化への懸念が広がっている。
協会は「医療者の感染拡大が発生すれば、地域医療は崩壊する」として、県にマスクやアルコール消毒液の安定供給などを要請。県は、感染者を治療する医療機関や救急病院にマスク約7万5000枚を無償提供することを決めているが、協会側は「個人クリニックまで配布してほしい」と訴えている。協会の調査は5~8日に実施。会員の医療機関1654施設にファクスでアンケート用紙を送付し、返送された615施設の回答を集計した。
マスクの在庫について「既に足りていない」と回答したのは、医療機関全体20.2%。入院施設を持たない「医科診療所」で24.6%、「歯科診療所」は12.6%、入院施設がある「病院」は11.1%だった。「現在足りている」と回答した施設に備蓄量を尋ねたところ、医療機関全体では「15~30日分」の50.6%が最多だった。「31~60日分」が19.4%、「8~14日分」が15.3%、「7日以内」が7.4%と続いた。
協会によると、一部の個人クリニックでは、院長や従業員が開院前や休日にドラッグストアの列に並んでマスクを買い求めたり、個人用のマスクを持ち寄ったりしているという。
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3.歯科医の説明や助言、AIが橋渡し アスタ
日本経済新聞 電子版 2月20日 |
物流関連のコンサルティングを手掛けるアスア(名古屋市)は2月下旬から、歯科医院が患者に送るメッセージを人工知能(AI)で自動作成するサービスを始める。スマートフォンのアプリを活用して治療内容や口腔ケアのアドバイスを送る。応用したのは、トヨタ自動車向けに培った技術だ。「ご来院ありがとうございました。痛みなどはありませんか」「引き続きブラッシングに取り組んでください」。メッセージは歯科医院の電子カルテなどをベースに患者の症状に合わせて自動作成する。
診察データが症状の改善などを示せばAIが判別してメッセージに変換する。患者がメッセージを見ているか、メッセージを理解できているかなど、関心の度合いに応じて表現を変える。「デジタル・ハイジニスト」のサービス名で展開する。アスアがトヨタ向けに開発したメッセージサービスの技術を応用した。走行履歴のデータを基に燃費など運転に関する診断書を送るサービスで、ドライバー一人ひとりに合ったメッセージを自動作成する。トヨタはコネクテッド機能のある新型車で同サービスを始めている。
アスアによれば「歯科医院の中には患者に丁寧に説明したいが、なかなか十分な時間を取れないところも多い」(天野裕介取締役)という。メッセージの自動化で患者への説明を充実させ、業務の効率化にもつなげる。
メッセージの配信で定期健診を促す狙いもある。厚生労働省がまとめた2016年の「国民健康・栄養調査」によると、過去1年間で歯科医院を受診した20歳以上の人は5割にとどまった。「国際比較しても日本は先進国の中で口腔ケアヘの関心はまだ低い」(アスアの間地寛社長)。歯科医院は数カ月に1度の定期健診を勧めており、来院の動機づけにつなげる。
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4.75歳以上の医療費どうなる 現役世代負担増の可能性も
朝日新聞 2月28日 |
75歳以上が診療所や病院の窓口で払う、医療費の自己負担割合の引き上げをめぐる具体的な議論が27日、始まった。今は原則1割で一定の所得があれば3割だが、政府は昨年末の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、2割の区分を新設する方針を表明。その対象とする所得の線引きだけでなく、3割負担の対象を広げるかも焦点になる。
75歳以上は後期高齢者医療制度の対象で、約1700万人いる。現役並みの所得があるとして3割負担になるのは、単身世帯なら年収約383万円以上、課税対象となる所得が145万円以上の場合。政府は、この基準の見直しも検討項目に盛り込んだ。少子高齢化で医療費の増加が課題になる中、自己負担を増やすことで、医療制度を支える現役世代の負担を軽くする狙いがある。ところが27日の社会保障審議会部会では、3割負担の人を増やすと、逆に「現役世代の負担増になりかねない」との指摘が出た。
後期高齢者医療制度では、1割負担の人の医療費は半分が公費で賄われる一方、3割負担の人の医療費は公費負担がなく、その分は現役世代の保険料で賄っている。そのため3割負担の人が増えれば、公費負担は軽くなるが、現役世代の負担は増える構図だ。この点をどう考え、実際に所得基準を見直すかが論点になる。
一方、新設する2割負担の対象規模をめぐっては、「『原則2割』に」(経済団体)、「乱暴ではないか」(日本医師会)などと意見が割れた。政府内でも、財務省などは「半分以上を2割負担に」との主張が根強いが、厚生労働省は「75歳以上は所得が減り、医療費がかかる。多くの人に2割負担を求めるのは非現実的だ」(幹部)と慎重だ。政府は6月の「骨太の方針」までに具体策を決める。
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