1.全世代型社会保障検討会議 中間報告 高齢者以外も安心へ、制度はどう変わるか
12月25日 毎日新聞 |
政府の全世代型社会保障検討会議が19日、中間報告を公表した。「高齢者だけではなく、子どもや現役世代まで広く安心を」と掲げた改革。年金、働き方、医療など私たちに身近な制度はどう変わるのか。ポイントをまとめた。
○年金 選択肢拡大で就業後押し
公的年金の制度改正では、現在60〜70歳の間で選べる受給開始年齢を75歳にまで広げることが盛り込まれた。受け取り開始を遅らせるほど年金が増額される仕組みで、高齢者の就業を後押しする狙いがある。
公的年金の受け取りは65歳が基本。現行は繰り上げると月0.5%減、遅らせると月0.7%増となる。制度改正では、繰り上げの減額率を現状の0.5%から0.4%に縮小する一方、遅らせた際の増額率は維持。そのため75歳から受け取り始めると、65歳に比べ84%増えることになる。
国民年金だけの人が将来、低年金に陥らないようにする対策も打ち出す。パートなど非正規で働く人の厚生年金の加入対象を広げるため、現状で加入義務がある「従業員501人以上」との企業規模要件を、2022年10月に101人以上、24年10月に51人以上と2段階で引き下げる。51人以上とした場合、対象者は新たに65万人増えると試算されている。ただ、厚生年金の保険料は労使で折半するため、企業の負担も年間1590億円増える見通しだ。政府は中小企業への支援策とセットで進める。
厚生年金の「在職定時改定」と呼ばれる仕組みも導入。65歳以上で働いた人の年金額は現在、70歳になった時やその前に退職した時に合わせ改定されるが、在職中に毎月改定し年金を支給する。例えば毎月の給与20万円前後で1年間働くと、年約1万3000円の年金を新たに受け取れる。
○労働 フリ-ランスの保護策を
多様な働き方を推進するため、中途採用や経験者採用など転職の促進、兼業・副業がしやすい環境の整備を推進する。フリーランスで働く人が増加傾向にあるため保護策を来年夏の最終報告に向けて検討する。従業員301人以上の大企業には中途採用や経験者採用の割合の公表を求める。ライフスタイルに合わせて働きたいという人や新しい職場で能力を発揮したい人のニーズに対応するため転職市場を活性化させるのが狙い。年明けの通常国会に法改正案を提出する。
兼業・副業は希望する人は多いが、労働時間の管理の難しさから解禁する企業は少ない。政府は新たな技術の開発や第二の人生設計にとって有効な手段としており、環境整備に向けた議論を加速させる。フリーランスで働く人が安心して働けるためのルールづくりに向け省庁横断で問題点を把握・整理する。立場の弱いフリーランスは一方的な契約の打ち切りや報酬の不払いなどの被害が深刻化しているためだ。
○医療 大病院で徴収額を上乗せ
医療分野では、紹介状なしで大きな病院を受診した患者に原則1〜3割の窓口負担に加え、初診では5000円以上、再診では2500円以上の徴収を病院に義務付けている現行制度について、さらに一定額を上乗せすることを検討する。2022年度までの導入を目指し、1000〜2000円程度を軸に来年夏までに具体的な内容を決める。大病院は専門的な医療を担い、それ以外は地域の診療所などが担当するといった役割分担を進める狙いがある。現在は全額が病院の収入となっているが、上乗せ分が公的医療保険財政に入る仕組みに改める。
現在は、高度な医療を提供する大学病院など全国に86ある「特定機能病院」と、地域の核となる「地域医療支援病院」のうち400床以上の334病院が対象。来年4月からは地域医療支援病院について200床以上に拡大し、計約670に増えることが既に決まっている。22年度までに地域医療支援病院などに限らず、200床以上の病院でさらに対象を広げる。また、75歳以上の後期高齢者が病院の窓口で支払う医療費の自己負担は原則1割(現役並み所得の人は3割)で、2割への引き上げを巡り、今後75歳を迎える人から順次適用する案もあったが、75歳以上で一定の所得があれば一律に2割の対象とする方針だ。
○予防・介護 成果を重視し競争促す
中間報告には、病気や介護を予防する取り組みを強化する方針も明記された。具体的には、高齢者の健康維持に積極的な自治体を支援する交付金について、成果に応じて額にめりはりを付ける。自治体間の競争を促し、膨張する社会保障費の抑制を目指す。病気予防については、国が都道府県と市区町村に支出している「保険者努力支援制度」の交付金を拡充。生活習慣病の重症化予防、歯科健診やがん検診の受診率向上などに成果を上げた自治体に手厚く配分する。
介護にも同様の仕組みの交付金があり、(1)地域の身近な場所で高齢者が集まり、運動や交流を楽しむ「通いの場」の拡大(2)介護現場で掃除や片付けなど補助的な仕事をする高齢者の「介護助手」参加人数増といった取り組みの実施状況を評価する。
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2.鳥取県が消えるぐらいの人口減 子供あきらめるロスジェネ
12月25日 朝日新聞 デジタル |
今年、新たに生まれた日本人の赤ちゃんが推計86万4千人にとどまり、初めて90万人を下回る。人口の自然減は51万人余りで、鳥取県の人口に近い人が減ったことになる。加速する人口減少は、日本社会の持続可能性に黄信号をともしている。
「人口の多い団塊ジュニア世代がほぼ出産年齢を過ぎ、いよいよ人口の少ない世代が親となっている。縮小する親世代が、さらに小さな子世代を生む『縮小再生産』が始まっている」。国立社会保障・人口問題研究所の元副所長、金子隆一・明治大学特任教授は話す。「令和まで結婚・出産を遅らせる『改元効果』は、あってもわずかでは。特定の出来事ではなく、経済状況の影響かもしれない。」
いま親になることが多い30代半ばから40代後半は、90年代半ばからの景気低迷期に社会に出た就職氷河期世代、ロストジェネレーションと呼ばれる。非正規採用が多く、賃金水準も他の年代より低い。「子どもは欲しいが、男性の正社員も少なく職場結婚が難しい」(43歳、女性契約社員)。「家族を持ちたいが、まずは正規採用が先」(42歳、男性パート)。不安定雇用に悩むロスジェネ世代の証言だ。この世代以降も非正規率は高く、社人研が15年の調査で未婚者に「結婚への障害」を尋ねると、男女とも「資金」が4割強で最多だった。
政府は、子どもが欲しい人の望みがかなった場合の「希望出生率」1.8の実現を目指す。裏返せば、子を持ちたくても諦める人が多いことを意味する。そんな状況を、家族社会学者の落合恵美子・京都大学教授は「家族からの逃走」と表現する。「男女とも結婚や出産で失うものが多い。保育所不足や教育費の高さに加え、引きこもりなどで子が自立できない恐れもある。国の支援が弱いため、家族を持つことに二の足を踏んでしまう。」
安倍首相は2年前、少子高齢化を「国難」と呼んで衆院を解散した。その後、働き方改革や幼児教育・保育の無償化などの政策、スローガンを掲げてきたが、出生数を見る限り効果は出ていない。「生産年齢人口の減少対策は、女性の就労促進、仕事と出産・子育ての両立を可能にする政策・制度、さらに移民受け入れが必須だが、どれも不十分です」と落合教授は指摘する。親となる世代が減っている以上、仮に出生率が回復しても、数十年は人口が減少する厳しい時代が続く。ただ、もし出生減に歯止めがかからなければ、今世紀後半になっても人口は下げ止まらずに減り続ける。いま有効な手立てを採らなければ、この国の未来はやせ細っていく。
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3.お口のケア 妊娠中に落とし穴 かかりやすい病気とは
12月24日 毎日新聞 |
口の中の環境が変わり、つわりで歯磨きが難しくなるなど、妊娠中は歯周病やむし歯になりやすい。歯周病は早産のリスクが高いという報告もあり、専門家は「妊娠中でも口の中を清潔に保つ習慣を身につけて、生まれてくる子どものケアにつなげてほしい」と訴える。
「歯と歯の間の歯肉が、きれいな三角形になっているかチェックしてみて」。10月上旬、東京都文京区主催の母親学級で、歯科衛生士の鈴木絢子さんが約15人の妊婦に呼びかけた。鏡を持って自身の歯茎を見つめる参加者に、鈴木さんは「妊娠中は女性ホルモンが増えるが、歯周病菌は女性ホルモンが大好き。菌が増えて、歯茎の腫れや出血が増えやすい」と説明した。
磨き残しがなくなる歯磨きの方法として、「スタートとゴ-ルを決めて、一筆書きのようにブラッシングするといい」などと助言。じっとしているのが苦手な乳幼児の歯磨きも、いつも同じスタートとゴ-ルの歯を決めると、見通しが立って協力してくれやすいという。参加した妊娠4カ月の女性会社員(28)は「つわりで空腹になると気持ち悪くなるので間食が増えた。歯茎が少し腫れ気味だったので、安定期になったら歯科検診に行きたい」と話した。
妊娠中は、つわりによる咽吐や唾液の減少で口の中が酸性になりやすく、むし歯になりやすい。女性ホルモンの増加に伴い歯周病菌が増え、歯周病のリスクも高まる。成人の約7割がかかる歯周病は糖尿病や肥満、認知症につながると言われる。妊婦の場合、歯周病の炎症物質が子宮収縮を誘発すると考えられ、早産の危険が1.78倍、低体重児出産の危険は1.82倍になるという報告もある。
「ライオン」は、ホームページで妊娠期(初期、中期、後期)に分けて口腔ケアの方法を紹介している。例えば、初期はつわりがあるため「ヘッドの小さい歯ブラシを使う」「マウスウオッシュを使う」などと助言。中期は一度に食べられる量が減って間食が増える時期なので、食後の歯磨きが重要だ。また、体調が安定する時期なので、治療を受けるのに適しているという。後期は、出産準備で忙しくなる時期。母親にむし歯がある場合、子どもが21歳になった時のむし歯の割合が3倍になるというデータを紹介し、赤ちゃんにむし歯菌をうつさないよう引き続き口腔ケアを心掛けてと呼びかける。
今年9月末から、日本産科婦人科学会が監修する妊産婦向けスマホアプリ「Babyプラス」で、日本歯科医師会が監修する予防歯科情報の提供が始まった。歯科医院での定期的な健診で歯磨き指導を受けると同時に、自身でも歯磨きやデンタルフロスなどのセルフケアを行うよう勧めている。
妊娠中の歯科治療について、よく寄せられる心配事についても回答。例えば、エックス線撮影した時の胎児への影響については、「歯科治療で使うエックス線の放射線量はごくわずか。子宮から離れており、影響はないと考えられている」と助言。麻酔の使用についても「局所麻酔で、使用量もわずか。胎児には影響はない」と解説する。日産婦の木村正理事長は「妊娠中の口腔ケアは非常に大切。自身の体を考えるいいきっかけになる」と話している。
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4.医師・歯科医師の行政処分について
12月18日 厚生労働省 医道審議会 医道分科会 |
医師14名、歯科医師4名に対する行政処分について諮問がなされ、審議の結果、医師12名、歯科医師4名に対する行政をする旨の答申をした。
(歯科医師)4名
歯科医業停止1年6月 1件(大麻取締法違反1件)
歯科医業停止1年 1件(大麻取締法違反1件)
歯科医業停止3月 2件(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反1件)
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