1.健診サボれば交付金減 国保改革の打算
11月1日 日本経済新聞 電子版 |
身体測定や血液検査、メタボ健診などをサボると減点になります。会社員の人事評価ではない。自営業者らが加入する国民健康保険(国保)改革の一環として、国保の運営主体の都道府県に健康づくりへの意欲を高めてもらう新制度だ。厚生労働省は2020年度から導入しようと枠組み作りを進めている。
評価指標をもとにきちんと取り組めばプラス評価となって交付金が増える、というのが従来の制度だ。「マイナス評価」といういかにも都道府県の受けが悪い制度にもかかわらず、厚労省が検討に踏み切った裏側には、予算を巡る財務省との複雑な駆け引きがあった。
時計の針を1年前に巻き戻す。「今のままでは前年度並みの予算は約束できません」。19年度の予算編成過程で財務省の予算査定チームは厚労省の担当者に伝えた。やり玉に挙がったのが特定健診・保健指導の予算だ。
財務省が都道府県の1人あたり医療費と交付金の配分を分析すると、医療費の高い都道府県に交付金が手厚く配られたり、交付金の効果検証が十分できていなかったりといった綻びが浮かんだ。都道府県の取り組みや健康づくりへの動機づけがまだ足りないとみて、予算縮小を示唆したのだ。交付金は国保の運営主体が市区町村から都道府県に移管したことに伴い、18年度から本格的に始まったばかり。厚労省は制度を根付かせるために何としても予算を確保したい。しかし、効果をもっと発揮しないと制度の土台が崩れかねない。
予算維持か、制度改正か。交渉の過程で、財務省は都道府県の動機づけを強めるためにマイナス評価の導入検討を厚労省に迫った。厚労省は「制度のメリハリを強化する」との建前でマイナス評価の検討を財務省と約束し、代わりに減額予算を回避した。関連予算は18年度は840億円、19年度は910億円。70億円のプラスで決着した。マイナス評価の導入検討に対し、都道府県からは「ペナルティーじゃないか」「今更マイナスと言われても」と反対意見が相次ぐ。厚労省は「マイナスでも拠出を求めるわけではない。あくまでメリハリを付けるため」と説明する。財務省と一緒に作った「メリハリの強化」という切り口で、制度の詳細設計を急ぐ。
経済官庁の官僚は「予算編成では手持ちのカードをいつ切るかが大事だ。誤ると取れるモノも取れなくなる」と漏らす。今は20年度の予算編成作業のまっただ中。予算は各府省庁間の条件闘争の産物でもある。お互いに諦めるモノと守るモノをどう選ぶのか。省益でもなく個人の手柄でもなく、国益を最優先する条件闘争であってほしい。
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2.紹介状なしの受診で5千円以上負担、対策の病院を拡大へ
10月30日 朝日新聞 デジタル |
診療所などの紹介状がなく大病院を受診した患者に初診なら5千円以上の追加料金を義務づける制度について、厚生労働省は来年度から対象病院を広げる方針だ。今400床以上の病院が対象だが、200床以上への拡大を軸に調整する。軽症患者の診療所での受診を促し、大病院は重症患者の治療に専念できるようにするのが狙い。介護保険サービスの利用料金の上限引き上げも検討する。
厚労省は30日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、紹介状のない患者から追加料金を徴収する病院の範囲拡大を提案し、おおむね了承された。来年1月以降の中医協で正式決定し、来年度の診療報酬改定で導入する。追加料金は、原則1〜3割の窓口負担とは別に支払うもの。初診で5千円以上、再診で2500円以上で、金額は各病院が決める。救急患者らは例外とされ、支払う必要はない。
厚労省によると、追加料金の徴収が義務づけられているのは全国に420病院あり、対象を200床以上にすると673病院に増える。200床以上は、全病院の約3割だという。この制度は、2016年度に500床以上の病院などで始まり、18年度から400床以上に拡大された。厚労省の調査によると、18年度に対象となった病院では、同年10月の初診患者のうち紹介状のない患者の割合は42.7%で、前年より4.4ポイント減った。今も200〜399床でも徴収することはできる。
介護保険制度改革では、厚労省は高所得世帯の介護サービス利用料の自己負担の月額上限引き上げを検討している。増え続ける介護給付費を抑制するためだ。いまの月額上限は、市区町村民税の非課税世帯が2万4600円(生活保護受給者らは1万5千円)、それ以外は4万4400円となっている。利用者は、所得に応じて介護費用の1〜3割を自己負担するが、負担額が上限を超えた分は払い戻される。
今回の改革案では、現役並み所得(年収約383万円以上)がある世帯の月額上限を見直す。年収約383万〜約770万円未満は4万4400円で据え置くが、約770万円以上は9万3千円、約1160万円以上は14万100円とする案を軸に検討している。医療保険での70歳以上の自己負担の月額上限に合わせた変更となる。
18年度の介護保険料は、65歳以上は平均で月5869円で、00年度の約2倍。一方、40〜64歳は約5700円で約2.7倍となっている。28日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会では、有識者から「現役世代との(負担の)公平性の観点からも、現役並み所得がある人の月額上限は引き上げるべきだ」などの意見が出ていた。
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3.後期高齢者医療、2割負担 経済3団体提案 自民戦略本部
10月25日 毎日新聞 |
政府が掲げる全世代型社会保障制度改革の具体化に向けた自民党の「人生100年時代戦略本部」(本部長・岸田文雄政調会長)が24日開かれた。日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所の3団体がそれぞれ、高齢者の自己負担引き上げなどの社会保障改革案を提言した。
各団体は、75歳以上の後期高齢者医療の自己負担割合を現行の原則1割から2割に引き上げることや、医療機関を受診するすべての患者から一律100円程度の定額負担を求める制度の導入を提案。また、風邪薬など市販品と類似する有効成分の医薬品について、保険適用から除外するよう求めた。現在は、医療機関で処方されれば年齢に応じて1〜3割の自己負担で済む。
経済3団体は現役世代が支払う年金や健康保険料を通じて、高齢世代への所得移転が急激に進むことによる経済成長への影響を懸念。2022年から団塊の世代が75歳になるなど、今後の現役世代の負担がさらに増える見通しのため、世代間バランスの見直しが必要だと主張している。
この日提言した改革案は、高齢者に一定の負担増を求めるとともに、諸外国より多い外来受診回数や急増する薬剤費の抑制につなげる狙いがある。これに対し、日本医師会はこれまでの会議で、受診時定額負担や薬の保険適用除外に反対姿勢を示しており、今後の議論になりそうだ。
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4.ライオン 歯磨き粉、新工場で一貫生産 大日本印刷と
10月25日 日本経済新聞 電子版 |
ライオンと大日本印刷(DNP)は25日、ライオンが建設中の歯磨き粉の新工場(香川県坂出市)に隣接し、容器の工場を設置すると発表した。チユーブを製造するDNPが設備を設置・運営する。歯磨き粉の生産からチューブヘの充填、箱詰めまで1カ所で一貫生産することで生産効率を高める。チューブの歯磨き粉工場への搬入から内容物充填までの工程の無人化にも同社初で取り組む。
ライオンの新工場は2021年中の稼働を予定する。チューブ用の工場の建屋はライオンが建て、チューブの製造設備の設置と運営はDNPが担う。チューブ工場の面積は4900平方メートルで、製造設備の投資額は非公表。従来はチューブと歯磨き粉を離れた工場で作っていたため、チューブの運搬や在庫管理にコストがかかっていた。運用を効率化するほか、歯磨き粉工場とチューブ工場の資材の需給のデータを共有して無駄を省く。
省人化にも注力する。最新の設備を用いて、チューブの歯磨き粉工場への搬入から内容を充填する工程までを無人化する。ライオンは実現すれば同社初だとしている。ライオンは新工場をグループ会社ライオンケミカル(東京・墨田)のオレオケミカル事業所に建設する。国内での歯磨き粉工場の新設はライオンとして52年ぶり。投資額は約400億円で、生産能力は年間1億3千万本に相当する。虫歯予防や歯周病予防など付加価値の高い商品を増産する方針。国内の需要拡大に対応するほか、中国などアジア向けに輸出も視野に入れている。
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5.需要高まる中、歯科衛生士は不足
10月16日 毎日新聞 |
高齢化や予防歯科の意識の高まりで歯科衛生士の需要が高まる中、全国の現場で歯科衛生士の不足が問題となっている。人手不足から資格のない歯科助手に歯石除去などをさせるケースもあるといい、健康被害につながる可能性もあるとして関係者は危機感を強めている。
ある歯科衛生士の女性(40)が働く神奈川県内のクリニックには計5人の歯科衛生士が在籍。歯周病ケアなど予防歯科の患者が大半で、歯科衛生士1人につき1日約10人の患者を担当し、開院からほとんど休みはないという。女性は「求人を出しても人は集まらず、来ても仕事量が多くてすぐ辞めてしまい、歯科衛生士が足りないクリニックは少なくないと思う。知人の勤め先では歯科助手が代わりをしていると聞いた」と打ち明ける。
厚生労働省によると、2016年の歯科衛生士の資格保持者は約27万人で、5年前に比べ約3万人増加しているものの出産や介護などで離職している人も多く、実際に就業しているのは約12万4000人と半数以下。一方で歯科衛生士の需要は増加傾向で、厚生労働省は高齢化に伴って歯科を受診する患者が増え、今後は在宅や保健施設などでも需要が高まると予測する。
岡山県の歯科医師の男性(56)は「資金に乏しい小さなクリニックなどでは、給料が安く資格もいらない助手に歯石の除去などをさせているところも少なくないと思う。患者からは見分けがつかず、医療ミスなど問題が起きるまで表に出にくいのでは」と指摘する。
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6.歯科衛生士法違反容疑 歯科医の女を逮捕 愛知県警
10月16日 毎日新聞 |
無資格の歯科助手に歯石除去をさせたなどとして、愛知県警は16日、同県岡崎市岩津町申堂の「京田歯科」院長、京田典子容疑者(66)を歯科衛生士法違反と詐欺の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は1〜2月、歯科衛生士の資格がない歯科助手の女性に、患者3人の歯石除去などの歯科衛生士業務をさせたほか、診療していない患者2人のカルテを偽造して診療報酬計5600円を不正に請求して受け取ったとしている。
県警によると、京田容疑者は「歯石を取るところを見ておらず、頼んでもいない。架空請求は故意にしたものではない」と容疑を否認しているという。当時、歯科衛生士は在籍していなかった。健康被害はこれまでに確認されていないという。歯科衛生士は国家資格で、歯科医師の指示の下で歯石の除去や口腔ケア、歯周病の定期検診などを担う専門職。歯科助手には資格がないため、これらの治療や指導をすることはできない。
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