1.ナカニシ、1〜6月期純利益31%減 国内歯科機器が反動
8月9日 日本経済新聞 電子版 |
歯科治療器具のナカニシが9日発表した2019年1〜6期連結決算は純利益が31%減の30億円だった。前年同期に好調だった滅菌装置や歯を削るのに使うハンドピースの国内販売が落ち込んだ。工作機械に使うドリルも米中貿易摩擦の影響で販売に苦戦した。期中に発売したハンドピースの新製品の受注が好調なため、通期の業績予想は据え置いた。
売上高は9%減の172億円だった。ハンドピースは新製品の販売を見越した買い控えで欧米も減収となった。同社は全量を国内生産して輸出しており、為替が円高に振れたのも減収要因となった。営業利益は29%減の40億円だった。
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2.前期高齢者医療費 負担急増健保に補助金 肩代わりを緩和 厚労省
8月6日 毎日新聞 |
厚生労働省は今年度、大企業の社員らが加入する健康保険組合などが前期高齢者(65〜74歳)の医療を支えるために負担する納付金が急増した場合、一部を補助することを決めた。納付金は組合に加入する前期高齢者の医療費に連動するため、高額医薬品の相次ぐ登場により前年度の2〜3倍に膨れ上がる事例が生じていた。急な財政悪化で健保組合が解散するのを防ぐ狙いがある。
前期高齢者の1人当たり年間医療費は65〜69歳が49万円、70〜74歳が64万円で、全世代平均の33万円を上回る。8割は国民健康保険(国保)に加入するが、健保組合や公務員の共済組合も納付金の形で負担を一部肩代わりしており、その額は組合に加入する前期高齢者(扶養家族を含む)の1人当たり医療費に応じて決まる。2017年度の健保組合連合会の決算ベース(見込み)では、加入者から集めた保険料の約2割が納付金に充てられていた。
ここ数年、C型肝炎薬「ハーボニー」やがん治療薬「オプジーボ」など、治療に数百万〜数千万円かかる超高額薬に公的保険が相次ぎ適用された。規模の小さい健保組合で加入者が高額薬を使うと、翌年度の納付金が一気に跳ね上がる。組合財政の悪化は解散につながりかねず、新たな補助制度を設けることにした。健保組合が解散すると、加入者は全国健康保険協会(協会けんぽ)に移る。協会けんぽには健保組合にはない国費補助があるため、加入者が増えると国の財政支出も増える課題もある。
18年度または17〜18年度の平均と今年度を比べ、増え幅に応じて超過分の40〜80%を補助する。総額は23億円。消費税による増収分の一部を充てる。厚労省の試算では、健保組合が1388のうち178組合、共済組合が85のうち4組合が対象になる。納付金額が2倍を超えるのは10組合で、最大3.9倍になった組合もあるという。
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3.歯間ブラシの技術生かし歯周病診断 大阪のOEM国内最王手
8月6日 日本経済新聞 電子版 |
大阪・八尾を中心とする関西の地場産業、歯ブラシ製造業に新たな動きが出てきた。OEM(相手先ブランドによる生産)の国内最大手、ヤマトエスロン(大阪府八尾市)が小型の歯周病診断器を開発した。検体となる歯垢を採取するキットに歯間ブラシの製造技術を生かした。各社が歯ブラシの高機能化でしのぎを削る中、将来を見据えた新事業に挑戦する。
同社発スタートアップのオルコア(同)が開発した。歯間ブラシに歯垢を付着させて希釈液に入れ、診断器にセットする。40分ほどで歯周病菌の代表格であるジンジバリス菌の量を推定できる。量は0〜5千の範囲で示し、3千を超えると「菌が多くケアが必要」として赤色のランプで知らせる。歯垢を採取する歯間ブラシに技術力を生かした。採取する歯垢の量は多すぎても少なすぎても正確な検査ができず、採取量を一定にすることが必要。このため、ブラシの毛の太さやブラシに余分についた歯垢をこそげ落とすために使うキャップの形状を0.1ミリメートル単位で精密に調整した。
診断器の開発に取り組むのは初めてで、ノウハウはなかった。樹脂や材料を担当していた2人の研究者が中心となり、大阪大学に助言を求めたり学会に足しげく通ったりするなどして知見を深め、開発にこぎつけた。従来の診断器が小型冷蔵庫ほどの大きさなのに対し、炊飯器程度に小型化した。従来の診断器は口内の複数の菌を同時検査できるが、オルコアは診断する菌をジンジバリス菌だけにするなど機能を絞り、使用する部品も見直してコンパクト化に成功した。
患者が歯科医院で施術を受けている間に検査する用途を想定する。従来の診断器は300万円程度と高額でスペースも取るため、歯科医院は導入しにくかった。このため、歯科医院は診断器を備えた専門機関に検体を送り、結果がわかるまで1週間程度かかっている。新しい診断器なら歯科医院に設置しやすく、検査時間も40分程度と大幅に短縮できる。機器は月額2万円程度で歯科医院にリースする方式を想定する。従来の診断器は保険適用外の場合、患者が支払う検査費が1万円から数万円に上るが、新しい診断器なら3千円程度にできるという。
厚生労働省によると、歯周病の国内患者数は2017年で398万人と14年に比べて約2割増えており、検査需要を見込む。検査キットは自社で、診断器は同じ八尾市内の協力会社が生産する。まずは歯科学会などで営業活動する。当初は分析器として発売するが、医療機器としての認可を目指す。19年末から順次提供を始め、20年に1千台、21年に5千台の採用を目指す。
ヤマトエスロンは1928年創業の歯ブラシや樹脂容器のメーカーで、歯ブラシのOEMメーカーとしては国内最大手。花王やハウス食品、資生堂など日用品、食品、化粧品メーカーの-部製品や容器を手掛ける。年間売上高は安定しており、リーマンショック時も含め130億円程度で推移している。ただ、既存事業では将来の成長を求めにくい。新規事業に投資する余裕のあるうちに、得意とする樹脂技術を使った新事業を模索していた。関西の歯ブラシのOEMメーカー各社は幼児の事故防止のために柄がしなるタイプなど高機能化への対応でしのぎを削るが、新分野参入などの踏み込んだ取り組みは珍しいという。
経済産業省によると2016年の歯ブラシの国内出荷額は489億円と増加傾向で、関西は26%を占める。とくに大阪府の八尾・東大阪の両市は歴史的に歯ブラシ生産が盛んな地域で中小零細メーカーが集積する。奈良県などに工場を移す動きもあったが今も大きな存在感を示す。各社は大手メーカーのOEMを手掛ける。歯ブラシ産業は明治中期に河内地方の農家の農閑期の副業として発展した。植毛の自動化や消費者の衛生への関心の高まりなどで生産量が増加。戦前から戦後にかけて大阪は全国でほぼ唯一の生産地だった。
現在はホテル向けなど業務用は輸入品が増えているが、国内の市販品の80%は国産品だ。国内大手は短いサイクルで複雑な形状の新製品を相次ぎ発売するため、OEM生産には高い技術力が必要だ。関西を中心とする国内勢が牙城を築く大きな理由となっている。それでも原料高など中小零細メーカーを取り巻く環境は厳しく、「中国勢も成熟し技術力を高めている」(全日本ブラシエ業協同組合、東大阪市)。歯ブラシ技術を別の形で生かすなど、収益源の多様化が求められている。
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4.生活保護受給世帯 歯の病気、一般の子比10倍超 東大チームが分析
8月5日 毎日新聞 |
生活保護受給世帯では、アレルギーや歯の病気がある子どもの割合が一般世帯の10倍以上にもなるとの研究結果を、東京大の近藤尚己准教授(社会疫学)らのチームがまとめた。特にひとり親世帯で病気がある子の割合が大きかった。生活上のストレスやハウスダストなどの居住環境のほか「対処の仕方を教えてくれたり助けてくれたりする人がいない」という孤立状況も背景にあるとみている。
国や自治体は2021年から受給者への健康管理支援事業を始めるが、子どもにも有効な支援が届く仕組みが求められる。分析の対象は、二つの自治体で16年に生活保護を受給していた世帯の15歳以下の男女573人。同年代の全体状況も調べ比較した。
受給世帯でぜんそくにかかっていた子は年齢、性別が違っても20〜31%と多く、一般の子に比べいずれも10倍以上。虫歯や歯肉炎など歯の病気、アレルギー性鼻炎も10倍以上の差があった。格差が比較的小さいアトピー性皮膚炎でも5倍程度の開きが見られた。また受給世帯の中でも、ひとり親世帯の子は、ひとり親でない世帯の子に比べアトピーが4倍、歯の病気が2倍などで、健康状態が悪かった。
経済的な困窮に加え「ワンオペ育児」と呼ばれる孤独な育児も影響したとみられ、近藤准教授は「子育ての面などで追加的な支援をすることで、子どもの健康を改善できる可能性がある」と指摘する。
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5.口腔崩壊、石川県の4割の学校に 背景に貧困やネグレクト
7月30日 毎日新聞 |
石川県内の約4割の学校で、10本以上の虫歯があるなどの「口腔崩壊」の児童・生徒がいることが、県保険医協会による初の調査で分かった。また学校健診で「要受診」とされた高校生の6割以上が、その後に歯科を受診していなかった。背景には親のネグレクト(育児放棄)や貧困、歯に対する無関心があり、同協会は「関係機関とも連携し、子供の口腔崩壊の状況を改善するきっかけにしたい」としている。
同協会は、口腔崩壊を「未処置の虫歯が10本以上ある、もしくは10本には満たないが虫歯が原因で上下左右でかめない状態にある」と定義。子供の口腔崩壊の状況を把握しようと、昨年9〜10月、県内の小学校、中学校、高校、特別支援学校364校を対象にアンケート調査を行い、200校から回答があった(回答率54.9%)。
調査結果によると、ここ2〜3年以内で口腔崩壊とみられる児童・生徒が「いた」と答えたのは42%(84校)で、内訳は小学校44%、中学校37%、高校48%、特別支援学校13%だった。養護教諭からは「(歯が痛くて)給食が食べられない」「痛くて我慢できないと泣いて保健室に来た」「ネグレクト。親に受診を促しても無視される」といった回答もあった。
また2017年度の学校歯科健診で、「要受診」とされた児童・生徒が2〜3割だった一方、その後、歯科を受診していない割合は、小学校25%、中学校35%、高校64%、特別支援学校54%だった。県保険医協会の担当者は「口腔崩壊は将来の健康にもすごく影響が出てくる。対策を進めるための機運を高めていきたい」としている。 |