1.自治医大、医師国家試験合格率V7の秘密
7月7日 日本経済新聞 電子版 |
自治医科大学(栃木県下野市)は医師国家試験の合格率で、名だたる大学を抑え7年連続でトップに立つ。全都道府県から集まった123人の学生を「留年無し、一発合格」の目標に向け、速習カリキュラムや夜間補講で鍛え上げる。スパルタ教育の背景には、地域医療の担い手を6年間で育てて出身地に返すという開学理念がある。
「加齢黄斑変性の代表的な治療法はなに?」「急性ぼうこう炎の症状は?」。自治医大医学教育センター長の岡崎仁昭教授から矢継ぎ早に質問が飛ぶ。指名した学生が回答に詰まると、「基本中の基本だよ」「医学用語で答えないと」と厳しい指摘。同大学名物の夜間補講、通称「夜スペ」の1コマだ。夜スペは岡崎教授ら3人の医学教育センター専任教員が成績が振るわない3~6年生を対象にみっちり鍛えるもので、通常の授業が終わった午後6時から開く。6月26日は2020年試験を迎える6年生ら21人が出席。岡崎教授は国家試験の過去問を題材に症状や治療法などを細かく尋ね、学生は頭にたたき込もうと3時間にわたり黙々とノートをとり続けた。
全国に医学部は81あるが、自治医大は19年までの10年間で医師国家試験合格率1位を8回獲得。17年には現役・浪人合わせ全員合格も達成し、「合格率1位」はホームページや大学案内でもうたう看板文句となった。夜スペはその原動力の1つで、18年度の開講回数は6年生だけで80回、延べ235時間にも及んだ。
独特なカリキュラムも学生に膨大な医学知識の速習を促す。自治医大は全国で唯一、3年生までに基礎医学と臨床医学の学習を終え、4年生から臨床実習に入る。6年生の夏まで80週に及ぶ実習期間を確保するためで、他大が終えるのは早くて4年生の夏だという。全寮制で学生同士が切嵯琢磨しながら医師を目指す環境も大きい。小児科に関心がある6年生の氏川恵美さんは「同級生はライバルではなく戦友。寮でなければ進級できていなかったかも」と話す。
1位にこだわるのは開学の経緯が関係している。自治医大は山間部や離島、過疎地などへき地の医療を担う医師を育成するため、1972年に47都道府県が共同で設立した学校法人が運営する。学力試験や面接で選抜する入学者は都道府県ごとに2~3人とし、全額貸与する2300万円の学費は卒業後に出身地で9年間勤務すれば返済を免除する。これまでに4300人以上の医師を輩出してきた。
自身も卒業生の岡崎センター長は「自治医大の使命は預かった学生を留年させず、医師として6年後に出身地に返すこと」と力を込める。実際、医師国家試験の合格率だけでなく、留年せずに6年間で卒業する学生の割合も95%と8割台の全国平均を大きく上回る。ただ、高い合格率を維持するのは年々難しくなっている。各都道府県から決まった人数を選抜するため、学生数の多い大都市の出身者と少ない地方の出身者では入学時点の学力差がみられる。地方の医師不足解消に向け国は08年度以降、医学部の定員増と合わせ自治医大と似た仕組みの「地域枠」を導入。自治医大の合格者が他大に流れるケースもじわり増えている。
こうした状況を危慎した岡崎教授は08年のセンター長就任以降、夜スペを始め、専門の内科では870ページに上る試験対策本を執筆するなど奔走してきた。国家試験本番には学長と副学長も駆け付けてハイタッチで激励するなど合格率塾1位は全学挙げての目標になった。岡崎教授は「学生と教員が一丸となれば、10年連続1位も夢ではない」と意欲をみせる。
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2.協会けんぽ 過去最高、5948億円黒字
7月6日 毎日新聞 |
中小企業の従業員や家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は5日、2018年度の決算見込みが5948億円の黒字と発表した。黒字は9年連続で黒字額は過去最高。協会けんぽによると、保険料を負担する加入者や賃金が増えたのが要因。収入は10兆3461億円(前年度比4%増)。保険料を負担している加入者数は2361万人(同2.7%増)、支出は9兆7513億円(同2.6%増)。
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3.音楽聞きながら楽しい歯ブラシ 子どもが喜ぶその秘密は
7月3日 朝日新聞デジタル |
京セラとソニーとライオンは3日、歯にブラシをあてると音楽が聞こえる歯ブラシ「Possi(ポッシ)」を共同発表した。親による仕上げ磨きを嫌がる子供に楽しんでもらえるようにして、親の負担軽減をねらっている。
発案は3児の父である京セラ社員。骨伝導技術を使い、ブラシが歯にあたるとヘッド部分の振動が歯と頭の骨に伝わり、耳に音として届くしくみだ。音は子供にしか聞こえない。子供がすぐに気に入り、親は心ゆくまで歯を磨いてあげられるようになった。音楽データの電気信号を振動に変える京セラの技術を活用。スマートフォンやテレビと付属のケーブルでつなげ、好きな音楽をかけることもできる。開発にあたり、ソニーが社外向けに展開する新規事業支援プログラムを使い、製品化への助言を受けた。ライオンは歯ブラシづくりのノウハウを提供した。3社が協力し、企画から9カ月で発表にこぎつけた。
ネット上で資金を集めるクラウドファンデイングで2千万円を募って需要を探り、商品化を考える。決まれば出資者にポッシを届け、商品化できない場合は全額返金。出資は専用サイトhttps://first-flight.sony.com/pj/possi から。9月3日までで、想定価格は替えブラシ3本つきで1万7500円。
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4.神奈川県海老名市、ロッテなどと連携 口腔機能改善へ
7月2日 日本経済新聞 電子版 |
神奈川県海老名市はロッテや同市歯科医師会と歯や口の健康づくりに関する協定を結んだ。歯科医院で行う口腔機能の検査で使う「咀嚼チェックガム」をロッテが無償で提供する。口の機能の衰えを示す「オーラルフレイル」を予防する。
ガムは1分ほどかんで咀嚼力を測る。初めは緑色だが、かむ力が強いほど赤い色に変化していく。歯科医院以外でも、市民向け講座などでもガムを配る。
海老名市は2018年度から歯や口腔衛生の状態を調べ、改善に取り組む「オーラルフレイル改善プログラム」に取り組んでいる。舌の力を鍛える器具などで機能改善を進める。18年度は65歳以上が対象だったが、19年度は市独自の施策として対象を55歳以上に広げた。
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5.新薬3千万円超は高すぎ?不透明な原価計算に国がメス
7月1日 朝日新聞デジタル |
国内最高額となった新薬の登場を機に、薬の公定価格「薬価」の算定方法の見直しを求める声が強まっている。製薬会社の情報開示が不十分で、原価計算が適正かなどがチェックできないからだ。高額薬は国が負担する社会保障費の増加にもつながるため、厚生労働省は来年度の薬価改定に向けて、新たな算定方法を検討する方針だ。
見直し議論が盛り上がったきっかけは、遺伝子治療技術を使った白血病など向けの製剤「キムリア」の薬価が5月、過去最高の約3349万円に決まったことだ。新薬の価格は、参考になる類似薬がない場合、「原価計算方式」で決まる。製薬会社が報告する、①製品総原価(原材料費や研究開発費など)②営業利益③流通経費④消費税の合計をベースに、薬に画期性や有用性があれば「補正加算」を上乗せする。補正加算は、①~④の合計に、製品に応じて一定割合をかけて、額を算出する。
総原価などは、いわば製薬会社の「自主申告」で、詳しい内訳は企業秘密が含まれるなどとして明かされないことが多い。そこで厚労省は昨年度から情報開示を促すため、総原価の内訳の開示度に応じて補正加算が増減するようにした。「開示度80%以上」なら満額だが、「50~80%未満」なら4割減、「50%未満」なら8割減になる。
それでも、キムリアの開示度は50%未満。そのため補正加算は、開示度が80%以上だった場合より約1100万円少ない、約277万円だった。販売するノバルティスファーマ社は朝日新聞の取材に「できる限り開示した。通常の医薬品と違う製剤なので、コストを示すのが難しい」と説明している。これに対し、薬価を決める中央社会保険医療協議会(中医協)の委員の一人は「補正加算を8割減らしてまで、開示を拒むのはおかしい。かなりの部分がブラックボックスだ」と、元々の原価自体の不透明さを指摘する。
これまでに開示度に応じて補正加算を決める仕組みの対象となった15製品のうち、9製品の開示度が50%未満で、3製品が50~80%未満だった。新薬の開示度が50%未満だったファイザーは「原価の開示は競合上の事由で難しい」、中外製薬は「開示すると、別の新薬の薬価戦略も想定されてしまう」と話す。業界関係者からは「原価の中身をさらしたら、もっと薬価を安くする算定方法が作られるかもしれない」と警戒する声も聞かれる。
ただ今後、遺伝子治療や再生医療など新たな医療技術に対応した新薬が相次いで登場する可能性もあり、中医協でも「(もっと)情報開示を促す制度を、もう一度考える必要がある」との意見が出た。厚労省は、国が負担する社会保障費を抑える観点からも検討を進める考えだ。 |