1.入れ歯誤飲、見落とす 除去し患者に謝罪 奈良県総合医療センター
5月18日 毎日新聞 |
奈良市七条西町の奈良県総合医療センターが3月、体調不良で受診した女性患者(81)をCTスキャンやレントゲンで調べた際、誤飲して食道内にあった入れ歯を見落としていたことが分かった。家族からの指摘を受けて発覚し、翌日、除去手術を行った。同センターは患者や家族に謝罪し、再発防止策を徹底するという。
患者の家族やセンターによると女性は3月26日、食欲不振と発熱で、入居していた特別養護老人ホームからセンターに搬送された。診察でいったんは異常なしとして帰ったが、翌日、老人ホームの職員が女性の入れ歯がないことに気づいた。センターは家族からの指摘で見落としに気付き、その日夜に内視鏡手術で胃から入れ歯を除去した。女性は現在、回復しているという。
患者の家族は毎日新聞の取材に「初歩的な診察ミスで許し難い」と話し、センターを相手取った損害賠償請求や、業務上過失致傷容疑での刑事告訴を検討していると明らかにした。
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2.高額薬の価値しっかり検証を
5月18日 日本経済新聞 電子版 |
新しい白血病治療薬の公定価格(薬価)が1回あたり3349万円に決まった。医療保険でカバーされ患者負担は数十万円ですむ。高額薬が増えれば公的な医療保険財政を圧迫する。価格に見合う価値があるか常に検証が必要だ。
この薬はスイスの製薬大手ノバルティスの「キムリア」で、既存の治療法で治らない患者にも効果的だとされる。欧米の4千万~5千万円程度に比べ、日本の価格はやや低めとなった。キムリアは患者に1回だけ投与する。それで健康な生活に戻れ、職場復帰なども可能になるとしたら、価格は高すぎないという見方もあろう。当面は適用対象の患者が限られ、ただちに保険の支払いが膨らむわけではない。問題は「密室の値決め」ともいわれるように公表資料だけからは薬価の根拠が見えづらい点だ。
高額薬への関心は、少野薬品工業による2014年の免疫治療薬「オプジーボ」の発売を機に高まった。当初、1人あたり年間3000万円以上かかったが、高すぎると批判され17年に薬価は半分に下げられ、今は約4分の1だ。同じ轍(てつ)を踏まぬよう、キムリアの価格は最初から抑え気味にしたのではないかという見方もある。こうした不透明さがあるとメーカーは売り上げを予想しづらく、海外の新薬が日本に入りにくくなるおそれもある。
厚生労働省は4月、薬の費用対効果を評価する制度を開始した。だが、発売時点の薬価は従来通り原価や販売費を積み上げて算出している。その後の薬価改定時に初めて評価結果を反映する、わかりにくい仕組みだ。英国などでは費用対効果の評価を、保険適用の対象とすべきかどうかの判断材料にも使う。最終的には社会的影響なども考慮して費用負担のあり方を決めている。
がん治療や再生医療の高額薬は今後、確実に増える。厚労省は費用対効果の手法を最大限生かし、海外の例も参考に制度の不断の見直しを進めてほしい。
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3.マイナンバー活用、医療費控除簡素化 21年から入力作業不要に
5月15日 朝日新聞デジタル |
政府はマイナンバーカードを活用して、確定申告の際の医療費控除の手続きを2021年から簡素化する。それを可能にするための健康保険法等改正案が14日、参院厚生労働委員会で自民党や公明党、立憲民主党などの賛成多数で可決された。15日の参院本会議で成立する見通し。
医療費の自己負担が-定額を超えた場合に税負担が軽減される医療費控除は、いまもマイナンバーカードを使ってネット上で申告できるが、医療機関名や医療費などを領収書をもとに自分で入力する必要がある。
今回の改正に基づき、保険診療のデータをもつ社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会、マイナンバー制度の個人用サイト「マイナポータル」、国税庁のシステムをそれぞれ連携させる。システム連携によって、申告書作成が自動化され、21年9月診療分から領収書の保管も入力作業も必要なくなる。
21年3月からは、カードを健康保険証の代わりとして使えるようにする。転職や引っ越しで加入する公的医療保険が変わっても、新しい保険証の発行を待たずに受診できる。ただ、カード普及率は今年4月時点で13%。医療機関などがカードを読み取るシステムを整備する必要もあり、どこまで普及するかは不透明だ。
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4.歯ブラシもIoT デンタルテック続々
5月6日 日本経済新聞 |
スタートアップ企業が活躍するのはロボットや宇宙、金融といった分野だけではない。小型で低価格なセンサーの普及などで、歯科領域の「デンタルテック」企業も登場しつつある。歯周病などで歯科医院にかかる患者が増えている背景があり、商機を見いだす動きが広がり始めた。
小児歯科の悩み相談サービスを手掛けるノーブナイン(大阪市)は2020年、センサーで歯周病菌があるか調べる電動歯ブラシ「スマッシュ」を発売する。3ミリ角のセンサーに息をかけ、菌が発する「メチルメルカプタン」や硫化水素を検知する。無線経由で、スマートフォンアプリに日々のデータを蓄積できる。
歯ブラシもあらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器になるわけだ。歯科医師でもある竹山旭代表は「消費者が受診する動機になる上、歯科医への相談に生かせる」と話す。夏からの実験を経て、800の医院から発売する。1本5千~8千円の見込みで年8万本の販売を目指す。
センサー付き製品は今後増えるとされ、いち早く実用化する。開発には関西の町工場が協力している。歯科分野では予約管理システムなど一部にIT(情報技術)が活用されてきたが、今後広がりをみせそうだ。コンピューター断層撮影装置の画像などの分析で先行して応用されているAIも、活用される時代がくる。
システム会社の歯っぴー(熊本市)は、スマホ写真から歯周病の可能性をみるAIを開発中だ。口の中の写真を撮り、歯石や歯肉の状態をみる。狙いは検診サービス会社への納入で、デンタルサポート(千葉市)が20年の導入を決めている。18年に歯っぴ-を設立した小山昭則社長は大手電機メーカーで画像処理などの技術開発に携わった。起業のきっかけについて「熊本地震の際、ボランティアで避難住民の歯を磨いて回るなかで思い立った」と語る。
厚生労働省によると、ある調査日の時点で継続的に歯科医院にかかっている患者の数は17年に推定134万人おり、02年から17%増えた。この需要の側面と、センサーの価格が下落したり分析技術が広がったりしている供給面の双方を背景にデンタルテックの市場が出現しつつある。
ITが解決するのは病気だけではない。例えば慢性的に不足する歯科衛生士の確保に生かせる。HANOWA(大阪市)は7月、専用画面で自宅近くの医院を探し、勤務時間を1時間単位で選べるサービスを始める。資格を持ちながら現場を離れたままの主婦らと歯科医院を仲介する。
マネーも集まるだろう。「歯科業界でも治療の高度化や効率化が急務」。歯科のスタートアツプに投資するM&Dイノベーションズはこうみる。同社は三井物産が18年11月に設立した子会社だ。デジタルや素材の力を活用した「革新的な予防や治療につながる製品・サービスに需要がある」という。
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5.予防医療
4月23~27日 朝日新聞デジタル |
「全世代型社会保障改革の大きな柱である病気予防や介護予防」。3月20日、首相官邸で開かれた「未来投資会議」で首相の安倍晋三はこう表現した。
異色の課題設定だ。これまで「社会保障改革」の中心テーマは「給付と負担のバランスをどうとるか」だったからだ。日本の公的な借金の水準は先進国中で最悪。一方、高齢化で国民が必要とする医療や介護サービスは増える。どこまでの給付を公で確保し、どう負担を分かち合うか。地味でしんどい議論が行われてきた。
これに対して、首相に近い経済産業相の世耕弘成は「カットするとか制度をいじるというつらくて難しい議論ではなくて、明るい社会保障改革の議論が求められている」との考えだ。これが官邸に持ち込まれ、政府全体の方針に反映されている。背景には「予防が医療費を減らす」ことへの期待がある。首相の安倍自身も昨年9月の総裁選後、NHKの報道番組で「医療保険においても、しっかりと予防にインセンティブを置いていく。健康にインセンティブを置いていくことによって、医療費が削減されていく方向もある」と述べた。
病気の予防で、私たちが健康に暮らす期間が長くなるのは望ましい。一方で、人の一生を考えると、予防は医療費がかかるタイミングを先送りしているだけであり、長期的にはむしろ費用を増加させるというのが医療経済学者の主流の見方。それなのに、「予防による健康寿命の延伸」という目標が、「予防で医療費は削減できる」という期待に乗じ、真の「社会保障改革」を先送りする方便にならないか。「予防」が強調されることには、もう一つ懸念がある。「病気は悪い生活習慣が原因」とする自己責任論の強まりだ。
昨年10月、財務相の麻生太郎の会見での発言が注目を集めた。「『自分で飲み倒して、運動も全然しれえで、糖尿も全然無視している人の医療費を、健康に努力しているオレが払うのはあほらしい、やってられん』と言った先輩がいた。いいこと言うなと思って聞いていた」と他人の発言を引いて自らの思いを語ったのだ。
生活習慣病を自己責任で予防し、医療費を削減する。このストーリーを広めている官僚が経産省の政策統括調整官、江崎禎英 (1989年入省)だ。厚生労働省の幹部ポストも兼務する。江崎が「クビを覚悟で書いたという自著の説明に、厚労相(当時)の加藤勝信を訪ねたのは昨年6月だった。
目的は、自著「社会は変えられる 世界が憧れる日本へ」の説明だ。主要テーマは社会保障。職場のお墨付きを得たものではなく、波紋を呼ぶと考えていた。しかし、加藤の反応は好意的だった。面談は予定の時間を超え、30分間に及んだ。そして、最後に「君を採用しようと思う」と告げられた。間もなく厚労省の幹部ポストの併任が発令された。加藤は、江崎の「プレゼン能力を高く評価していた。
江崎は著書で「現在の社会保障制度の状況は、太平洋戦争の末期に似ている」と書いた。「このままではこの豪華客船ともいえる公的皆保険制度は遠からず沈没する」と断じている。江崎の主張する改革の核は、医療費の約3割を占める「生活習慣病」対策だ。江崎は糖尿病(2型)などの生活習慣病は「本来予防が可能」とし、「主として患者自身の自己管理に原因がある」と書いた。
ところが今の医療保険制度だと、健康管理に努めていようが、不摂生な生活をしていようが、病気になれば全く同じ負担で治療を受けることができる。透析治療を受ける糖尿病の患者に手厚い支援があることについては「不摂生は得? 生活習慣病を容認する制度」と評した。
そして、病気の原因の違いに応じて適切に対応すれば医療費の「適正化はできると主張。予防によって医療費を削れば、公的保険制度を維持できる。そのためには、魅力的な健康管理サービスを提供するヘルスケア産業の育成が必要だと説く。
江崎が示したストーリーはその後、安倍政権が掲げる「全世代型社会保障」の底流をなすことになる。医療・介護分野を担う厚生労働省は、経産省とは犬猿の仲だった。局長経験者の厚労省OBは経産省について「社会保障は企業の負担としか考えず、保険料の引き上げにはいつも反対。医療は給付をカットしろ、混合診療を解禁しろと制度を弱めるようなことばかり主張してきた。それで何か国民のためになったことがあったか?」と、嫌悪感をあらわにする。
だが今の雰囲気は、少なくとも表向きは、違う。ある厚労省の幹部は「江崎さんは国士だ。彼みたいな破壊者がいないと1ミリも動かないんだよ。僕もその一味だから」とやや自潮気味に話す。一方で、「ペテン師と言われてもしかたがない情報発信をする」(医系技官)という評価もある。
病気を予防すれば、医療費を削減できる.…・・こんなメッセージを発する経済産業省。表向きは連携する姿勢の厚生労働省。苦々しい思いを抱くのは財務省だ。
ある財務官僚は、病気予防の価値は認めつつ「予防が医療費を抑制するという厚労省の主張にエビデンス(証拠)がないことは分かっているのに総括されていない。そんな政策を進めるのか」と批判する。小泉政権下の2006年、歳出カットの圧力を受け、厚労省はメタボ健診の普及などの生活習慣病対策で「25年度時点で2兆円の医療費を抑制すると大見えを切った。その後、事態はどう進んだか。「メタボ健診」など生活習慣病対策(特定健診・特定保健指導)の医療費抑制効果額は200億円という試算がある。一方、対策は国費だけで年230億円ほどかかる。つまり、抑制額は現時点で、目標額2兆円のたかだか1%程度に過ぎず、かつ対策の費用は抑制額を上回る。
だが、こうしたデータは、財務省が昨年10月の財政制度等審議会で公表した資料からは省かれた。直前で「幹部からストップがかかった」(同省関係者)という。この時、財務省が作成した資料は、個人の生活や社会の活力のため「予防医療は重要な課題」としつつも「一部にはむしろ(医療費や介護費を)増大させるとの指摘もある」とクギを刺し、東大教授の康永秀生のコラムから「(医療費や介護費を)予防医療によって抑制することはほぼ不可能」という文章を引用した。これに反発したのが、日本医師会会長の横倉義武だ。首相の安倍晋三や財務相の麻生太郎に近い横倉は「地域での健康づくりの活動に水を差すものであり、強い怒りを感じる」と不満をぶちまけた。
昨年11月には審議会の建議が急きょ「修正」された。脚注にあった「予防医療による医療費削減効果には限界があり、むしろ増大させる可能性がある」という文言と、その支えとなる康永の見解が取りまとめ直前に削除されたのだ。公表された議事録によると、臨時委員で読売聞グループ本社最高顧問の老川祥一が「予防医学の費用削減効果を否定するために、早く死んだほうが金はかからないというのは適切でない」と反発。他の委員も同調した。
政府は昨夏の時点で、国民負担を伴う社会保障改革の議論は今夏の参院選以降に先送りすると決めた。財務省も「消費増税と同じ時期に国民に負担増をお願いする議論はできない」(幹部)と従った。一連の経緯を別の幹部は「霞が関も(事実が重視されない)ポスト真実の時代」と嘆いた。経産省主導の「予防医療」。この動きに危うさを感じていたのが、医師で日本福祉大名誉教授の二木立(にきりゅう)だった。
「江崎さんは人生最後の1カ月で生涯医療費の50%を使うとおっしゃった。これは200%間違いです」昨年10月25日、都内でのシンポジウム。生活習慣病の予防など「超高齢社会への対応」をテーマに講演した経済産業省の江崎禎英は「医療費は死ぬときが一番高い。死ぬ人が多いほど医療費が高くなる。ある健保組合だと、人生最後の1カ月で生涯医療費の50%以上を使っている」と話した。
これに反応したのが、日本福祉大名誉教授の二木立医師で、医療経済や政策を45年以上研究する学者はフロアから「明らかにデマ。死亡前1カ月の医療費が国民医療費ベースで3%強というのは確固たるデータがある」と強い調子で批判した。江崎は「私は大学病院の医師から話を聞いている。全体をまとめると、どこに問題があるかわからなくなる」と返した。
その後、文芸誌で若手社会学者が「財務省の友だち」と検討した結果として、「最後の1カ月の終末期医療に金がかかる。その延命治療はやめる提案をすればいい」と述べたくだりがネット上で「炎上」した。二木が注目したのは「長期的には『高齢者じゃなくて、現役世代に対する予防医療にお金を使おう』という流れになるはず」という発言だった。このロジックは財務省ではなく経産省が使っているからだ。
三木自身も、予防医療を重視して健康寿命を延ばすことは、強制やペナルティーを伴わない限り、賛成だ。ただし、それで医療・介護費を抑制できるとの主張には、強い疑問を持っていると話す。
二木によれば、様々なモデル事業や研究があるが、費用削減効果はほとんど確認されていない。逆に健康改善による医療費削減は長生きによる医療費増加で相殺され、予防のための費用も含めれば長期的に医療費は増える。「予防でも医療や介護のサーヒスは人間が提供する。そう安くはできない。『良かろう高かろう』なんです」
さらに心配なのは、予防医療の推進が「生活習慣病は個人の不健康な生活に責任・問題がある」との前提に立ち、個人に行動変容を迫るインセンテイブ(動機づけ)が提唱されていることだ。「かつてナチス・ドイツが『義務としての健康』を国家の公式スローガンにしていたことを思い出す」と二木は話す。
「生活習慣病」の要因は、成人期の生活習慣だけではない。有害物質やストレスなどの外部環境、遺伝など個人の責任に帰することのできない要因が関与している。小児期や妊娠期にさかのぼれる要因もある。「病気が自己責任と誤認させる『生活習慣病』という用語の見直しを検討すべきだ」と主張する二木。だが、自己責任論が、じわり広がる気配はある。
小学校入学と同時に生命保険会社と契約し、ウェアラブル端末を下着に貼り付ける。集められた生体情報は、政府のシステムで一元管理。規則正しい健康的な生活を送れば、将来、医療保険の保険料が安くなる。このようなインセンティブで健康的な生活を推奨するのは国の健康増進・医療費削減施策の一環だ。集められたデータは、次世代の子どもの健康推進や効果的な治療のためにも使われる。
国際的なコンサルティング会社、「アクセンチュア」が2017年に出版した「ヘルスケア産業のデジタル経営革命」は、こんな近未来像を描く。この部分を執筆した同社の医療分野担当、永田満は「こんな制度ができるのはちょっと先の話。でも技術的にはすでに可能。国からすれば、国民が規則正しい生活を送って医療費も削減できれば望ましいだろう」と話す。
すでに生命保険各社は、顧客の健康情報を吸い上げ評価し、特典を与える商品を開発している。契約者がウェアラブル端末を身につけ、1日平均8千歩以上歩くと達成状況に応じて保険料の一部を還付。健康増進活動への取り組みをポイント化し、保険料を増減させる、といった具合だ。
経済産業相の世耕弘成は今年1月の記者会見で「ウェアラブル端末を使った健康管理は有望な分野になってくる。端末で運動量や血圧や血糖値の数値を取れるようになれば、生活習慣病の予防につながり、ひいては医療費抑制につながる可能性があると思っている」と期待を語った。
政府は、公的健康保険を運営する都道府県・市町村、企業健保組合の予防・健康づくりの取り組み具合に応じインセンティブやペナルティーを強化する方針だ。経産省が推進する「健康経営」のもとでは、社員が健診を受けないと本人と上司のボーナスをカットする「ローソン」のような会社もある。個人が自主的に健康管理や予防の努力をするのは素晴らしい。だが、政府が「社会保障改革」として推進することには懸念がぬぐえない。何らかの理由で努力していない、できない人が病気になったとき、「自己責任だから」と社会保障から排除してしまうおそれはないか。
「予防で医療費は減らせる」という根拠の薄い期待が、社会保障改革の本丸である増税や給付見直しを避ける言い訳に使われないか。ある厚生労働省幹部はこんな不安を吐露する。「消費税を延期したら政権が長持ちすることを政治家が見ちゃった。どう影響するかだね」
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