1.くらしナビ・ライフスタイル 乳歯の思い出いつまでも
3月25日 毎日新聞 |
子どもの乳歯が抜けたら、どうする? 上の歯が抜けたら床下に、下の歯が抜けたら屋根の上に投げる、という風習はよく知られているが、乳歯を投げずに自宅で保管したり、再生医療に活用したりする人たちもいる。今どきの乳歯事情を探った。
記者の次女(6)の歯が、グラグラし始めた。毎日鏡でうっとりと歯を眺め、「いつ抜けるかな」とドキドキワクワク。乳歯は赤ちゃんのころから一緒にいる「友達」のような存在らしく、抜ける日が待ち遠しくて仕方がないようだ。
この冬、ついに上の前歯が1本抜けた。「大人に近づいたってことだよね」と大騒ぎする次女を横目に、記者は乳歯をどう処分するか悩んだ。暮らしているマンションのベランダから外に投げるのは抵抗がある。かといって「友達」をごみ箱に捨て去るのも心苦しい。ひとまず、セロハンテープで折り紙に貼り付けて保管。次女と話し合い、帰省した実家の庭に埋めた。でも、グラグラしている乳歯はまだある。さて、どうしよう。
○増える「保管派」
東京都内の出版社に勤務する男性(39)は、長男(7)の乳歯を厚紙に貼り付けて保管している。赤ちゃんのときに生えた、思い出深い小さな歯を外に投げるのは忍びなく、テーブルに置いたままにしていたところ紛失。その反省から、抜けた乳歯を紙に貼り付けているそうだ。
歯が生え変わる年齢の子どもを持つ保護者数人に話を聞いたところ、「保管」派が優勢。子どもがお菓子の空き箱に乳歯を集めていたり、子どもの成長を記録したノートにそのまま貼り付けたりと、方法はさまざまだった。保管したい人向けに、乳歯を入れる専用の容器も市販されている。1本ずつ収容できる歯の形をしたケースや、桐でできたケースなど形もユニークだ。
乳歯ケースを取り扱う東急ハンズ渋谷店(東京都渋谷区)の女性店員は「お孫さんやお子さんへの贈り物として買っていく方がいました」と教えてくれた。東京都中央区に住む40代女性も専用ケースを購入した一人。「乳歯を保管して、子どもが10歳になったことを祝う『2分の1成人式』の時に手渡してあげるつもり。へその緒を我が子にプレゼントするみたいなもの」と話した。
乳歯を家庭で保管するときの注意点はあるのだろうか。東京歯科大の新谷誠康教授(小児歯科学)は、「保管する場合は、歯についた血液をきれいに洗い流して、よく乾燥させて清潔にしておくこと」とアドバイスする。乳歯に残った歯髄(歯の神経)組織が腐って細菌が繁殖する場合もあるため、気をつけたい。
○再生医療に提供
乳歯は再生医療にも生かせるという。日本歯科大は2015年から、乳歯や永久歯の中にある歯髄から取り出した細胞を預かる「歯の細胞バンク」を始めた。歯髄細胞は短期間でたくさん増やせ、骨や神経などさまざまな細胞に変化することができる。大きな病気やけがで体の組織や臓器が影響を受けたとき、自分の細胞を使って再生医療に生かせるのが、このバンクを利用する最大のメリットだ。
すでに100人以上が登録。うち半数が乳歯の提供だったという。日本歯科大の中原貴教授は「お金を銀行に預けるように、乳歯を1本でも預けてくれたら、将来は自分の細胞で再生医療を受けることが可能になる。いざというとき、必要になったら使ってほしい」と話す。
歯の細胞を預けたい人は、「歯の細胞バンク」に登録されている全国各地の歯科医(認定医)に乳歯や永久歯(抜歯による治療が必要と診断された歯のみ)を抜いてもらい、抜いた歯を特殊な培養液に入れてバンクに送ってもらう必要がある。その歯から、日本歯科大の施設で細胞が培養され、増やした細胞は液体窒素の中で半永久的に凍結保存される。認定医がいる歯科医院の情報などは、(http://www.ndu.ac.jp/cell-bank/)サイトで紹介している。
抜けた「友達」を投げるか、記念に保管するか、バンクに預けるか。選択肢は増えている。次女本人や夫とも相談して決めていきたいと思った。
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2.診療明細、国保連合会が審査を省略 医療費過払いの恐れ
3月20日 朝日新聞 デジタル |
国民健康保険の加入者の医療費を支払う国民健康保険団体連合会(国保連合会)が、病院などから提出された診療報酬明細書(レセプト)の内容に誤りがないかについて、必要なチェックを省略していたケースがあることが、会計検査院の調べでわかった。レセプトの誤りが見過ごされ、医療費の支払いが過大になっていた可能性があるという。
国保加入者が保険診療でかかった医療費は、加入者の自己負担分を除き、市町村が各都道府県の国保連合会を通じ、レセプトをもとに病院側に支払っている。国保連合会はレセプトに誤りがないか、コンピューターで事前にチェックしたうえ、職員や専門家が審査しているという。
検査院は今回、2018年4月の1ヵ月間に東京都や北海道、大阪府、福岡県など25都道府県の25連合会で実施されたコンピューターチェックについて検査。うち24団体が、一部の項目をチェックから外していたことがわかったという。血液検査で、検査当日に医師が患者に結果を説明した場合に限って医療費が支払われるケースにもかかわらず「口頭での説明は後日でも良い」と独自に解釈し、チェックを省略するなどしていた。
コンピューターチェックはすべての国保連合会に導入され、チェック項目は現在、計約5100項目ある。しかし、各団体が任意で項目の採否を決めることができ、統一はされていないという。
検査院は、独自の解釈でチェックが省略されたケースがあることは「適切でない」とし、「すべての項目を整理したうえで、全国で統一的に運用する必要がある」と指摘した。厚労省保険局は取材に「実態を調査した上で、一定の統一化を図る」としている。
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3.19年医師国家試験に9.029人が合格、合格率は89.0%
3月18日 厚生労働省 |
厚生労働省は3月18日、2019年2月に実施した第113回医師国家試験の結果を発表した。受験者数1万146人(前年比136人増)に対し、合格者数は9,029人(5人増)。合格率は前年から1.1ポイント減の89.0%となった。合格者の男女別内訳は、男性6,029人(構成比66.8%)、女性3,000人(33.2%)。男女別合格率は、男性88.1%、女性90.8%だった。合格者のうち新卒者は8,478人、合格率は92.4%だった。既卒者の受験回数別合格率は、2回目73.1%、3回目51.5%、4回目34.3%などとなっている。
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4.会員有功章授与式 開催される
3月15日 日本歯科医師会 |
日本歯科医師会は平成30年度会員有功章授与式を3月15日に歯科医師会館で開いた。4人の受賞者のうち、「困難なる環境の中で、30年以上診療に従事し、地域社会の歯科保健衛生の向上に特に著しい功労があったと認められる者」の該当者に沖縄県の上原淳(56回)氏が選ばれた。
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5.歯の再生医療の安全性と効果は?順天堂大チームが臨床研究へ
3月15日 毎日新聞 |
濃縮した血小板(PRP)を使う歯科の再生医療について、順天堂大の飛田守邦准教授(口腔外科学)のチームは15日、安全性を検証し、効果もみる臨床研究を厚生労働省に届け出た。同様の再生医療は、再生医療安全性確保法に基づき全国で行われているが、臨床研究が実施されていないケースがあり、専門家から「安全性や効果が担保されていない」などの指摘があった。
血液に含まれる血小板は、傷ついた体の組織を修復するたんぱく質を出す。この性質を利用してPRPが使われている。保険が適用されない自由診療のため費用が高額で、患者の経済的負担は大きい。歯周病で失った骨の再生を促す場合、保険診療で1本数千円のところ、数万円以上請求されることもある。
臨床研究では患者2人ずつで、代表的な5つの治療を検証する。歯周病のほか、抜歯後の傷口の治癒促進▽インプラント治療での骨の強化▽割れた歯の修復▽一度抜いた歯の再移植 で、採血した血液20ミリリットルからPRPを作り、ゼリー状にして患部に移植する。1カ月安全性を重点に確認し、来年度にも効果を確かめる別の臨床研究も始める。
厚労省によると、血小板など患者自身の体細胞を加工して移植し、再生を促す医療は、同法が施行された14年11月以降、全国で2000件以上実施され、約半数が歯科関連という。飛田准教授は「安全性と効果について議論できるだけのデータを集め、検証したい」と話している。
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6.診療データ共有形骸化 公費530億円投入でも登録1%
3月14日 日本経済新聞 電子版 |
IT(情報技術)を活用した医療の効率化がかけ声倒れになっている。診療データを病院間で共有する全国約210の地域ネットワークの登録患者数は、国内人口のわずか1%であることがわかった。国と自治体は医療責の抑制や患者の利便性向上を狙い、計530億円を超す公費を投じたが、重複医療を解消する効果が出ていない。医療IT政策の仕切り直しが必要だ。
全国で210以上のネットワークが乱立
患者が病院や診療所を移ると、検査や治療、薬の処方が重複するケースがある。非効率な医療は患者の身体的な負担や医療費増につながる。これを防ぐには病院間のデータ共有が有効とされ、国は地域医療情報連携ネットワークの整備を促してきた。中核病院や医師会が運営し、電子カルテや検査画像、処方箋を共有する仕組みだ。
日本経済新聞は「地域医療介護総合確保基金」などの補助金を受けたネットワークを調べた。その数は211。北海道の44が最も多く、大阪の23、東京の17と続く。2009~17年度の補助額は計532億円で、福島が最多の116億円だった。
登録患者・参加施設数は運営者や自治体に聞き取り、191事業に関する回答を得た。薬局や歯科を含む参加施設は2万9500と、全施設の12%。登録患者は137万2千人にとどまる。福岡県医師会のネットワークは約8千人の登録で、17年の県議会で明かされた「25年度に29万人」の目標にはほど遠い。
電子カルテの普及率は3割台
そもそも日本は電子カルテが普及していない。病院と診療所の普及率は3割台。データ共有の環境が未熟で、英国やオランダが9割を超すのと対照的だ。東京都内のある病院職員は「医療ミスや過剰治療の発覚を恐れ、外部に診療内容を見せたくない医師は多い」と医療の閉鎖性を指摘する。
情報共有に患者の同意が要ることも壁だ。首都圏の医師会によると「医師は患者に説明する手間をかけたがらない」。18年春に稼働予定だったネットワークの参加がいまだゼロの名古屋市の病院は「情報漏洩を恐れる施設が多い」としている。
総合確保基金は14年の消費増税に伴い創設された。医療分野は病床再編や在宅医療推進など地域医療体制の充実に使う。その一環で国は医療のIT化を促してきたが利用率は期待を裏切る。公費投入のメリハリを欠き、病床再編も遅れている。
先進例はオランダ
医療先進国といわれるオランダは12年に全国で医療情報を交換するシステムをつくった。患者がいつでも見られるように透明性を高め、国民の8割が参加する。米国では患者データをインターネットで管理・閲覧できる仕組みが普及している。
厚生労働省は20年度にも全国共通のネットワークを整える方針。 地域別のIT政策を事実上転換するが、既存ネットワークの検証には後ろ向きだ。「一元化」ありきで事を進めれば、過去の投資はムダになる。患者の同意や医師の理解を得やすくするソフト面の対策も必要だ。
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