1.歯科医「新宿食支援研究会」代表、五島朋幸さん「最後まで食べる」実現へ疾走
1月7日 朝日新聞 デジタル |
ふだんは穏やかな口調だが、「その話題」になるとスイッチが入る。7月中旬、東京の管理栄養士を対象にした講演会。「(最期まで口から食べられるのを)あったりまえにしたい」。情熱で語気が強まる。(フロントランナー)五島朋幸さん「食べる権利は、生きる権利なのです」
高齢者の「ロから食べる」を支援するプロ。加齢や病気でロから食べられなくなり、胃にチューブで栄養を入れる「胃ろう」をつける高齢者は多い。そうした患者ら約1500人を、21年間の訪問歯科診療で助けてきた。
きっかけは、大学病院に勤めていた1997年秋。東京・新宿で、高齢者の訪問診療をする在宅医に同行したことだった。衝撃を受けた。みんな入れ歯を外され、食べられるものだけを食べていたのだ。歯科医として悔しかった。大学病院の外来がない日曜に訪問診療を始めた。ここでまたショックを受ける。入れ歯をどんなに調整しても、なぜか食べてもらえない。ちょうどそのころ、咀嚼やのみ込みがうまくできない「摂食嚥下障害」という言葉を知る。「これかもしれない」
本や学会への参加で勉強を重ねた。誰でも自宅で食べるための訓練ができるよう、試行錯誤しながら、スルメを使って舌を動かす方法などを考案した。
2003年に開業。徐々に成果が出てきた。病院で「一生、口から食べてはだめ」と言われた胃ろうの80代女性がいた。ゼリーやせんべいで訓練を続け、1年後にステーキを食べられるまでに回復したのだ。「多くの人が病院で胃ろうをつけ、『誤嚥性肺炎を防ぐために禁食』という流れになってしまった。食事の禁止は無意味。睡眠時の唾液の方が、誤嚥のきっかけになることが多い」と訴える。訪問診療が軌道に乗り始めたころだった。ある患者家族の一言が、胸に突き刺さる。「夫の楽しみは、2週間に1度の先生の訪問。ゼリーを食べさせてもらえるから」。ああ、食事が日常になっていないんだ。
介護や医療の専門家と連携する必要性を痛感する。まず管理栄養士を常勤で雇った。09年、 ケアマネジヤーや医師らに呼びかけ、14人で新宿食支援研究会を立ち上げた。それぞれの知識や経験を寄せ集め、リスクを回避しながら、希望する人には最期まで食事を楽しんでもらう。今は23職種、約150人が意見を交わし、技術を磨く研究会に育った。
休日はほとんどない。でも、食べる権利を奪われた高齢者が、また食べられるようになる姿を見る喜びは、何物にも代えがたい。「食べることは生きること。最期までロから食べられる国・日本こそ、最期まで幸せな国・日本なのです」
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2.診察時の通訳費を加算 訪日客に「医療」以外を転嫁へ 厚労省目安
1月5日 毎日新聞 |
厚生労働省は、通訳の確保など医療行為以外のコストのかかる外国人の診察に関し、コスト分を患者に転嫁できるよう算定の目安を定める。訪日客など外国人患者は今後も増える見通し。同省は、医療機関の経営への影響などを考慮。今年度中に、患者にコスト分を請求する際の算定方法などの具体例を示す。
厚労省が「月50人の外国人患者のある中規模病院」を想定し、医療行為以外にかかる追加コストを試算したところ、「ウェブサイトの多言語対応など初期費用」に50万〜200万円、「通訳や外国語対応できる看護師の確保など運営費」に年1800万〜2600万円がかかる。患者1人当たり3万〜5万円に相当する。だが、厚労省の調査(2016年)によると、8割の医療機関が外国人患者に追加コスト分を請求していなかった。一方で通常の医療費の2〜3倍に設定しているケースもあり、国民生活センターに「喉に刺さった魚の骨を大学病院で取り除いてもらったら5万円近くも請求された」と中国人からの苦情が寄せられた。
4月には外国人労働者受け入れを拡大する改正入管法の施行も外国人患者増加の要因になりそうで、同省は、放置すれば地域医療の混乱を招きかねないと判断。患者の理解を得られるような方策を示す。追加コストに基づく患者負担の積算方法を示すことなどが想定される。
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3.ライオン、52年ぶりに歯磨き粉の工場新設へ 販売好調
12月31日 朝日新聞デジタル |
ライオンは、香川県坂出市に歯磨き粉を製造する新工場を建設する。2019年に着工し、21年中の稼働を予定している。同社の歯磨き粉工場としては、52年ぶりの新設となる。訪日外国人のまとめ買いなどで販売が好調なことから、生産能力を増やす。
坂出市には、歯ブラシやボデイーソープなどをつくる工場があり、新工場はその敷地内につくる。投資額は約400億円で、年間約1.3億本(1万6千トン)をつくる能力を持つ。同社の歯磨き粉工場は、兵庫県明石市と神奈川県小田原市にあり、3カ所目。歯周病や口臭の予防をうたった商品がよく売れている。広報担当者は「日本製の高機能製品には訪日客の注目も高い。今後も販売が増えるとみて、工場の新設を決めた」としている。
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4.どうすれば安全安心 半数超が「歯科先延ばし」
12月27日 毎日新聞 |
https://www.jda.or.jp/jda/release/pdf/
DentalMedicalAwarenessSurvey_h30.pdf
歯科健診、歯科の受診について「できるだけ先延ばしにする」「どちらかというと先延ばしにする」という人が計53%に上ることが、日本歯科医師会のインターネットを通じた調査で明らかになった。
今年4月、全国の15〜79歳の計1万人から回答を得た。日常生活の行動全般について問うと、「できるだけ先に片付ける」「どちらかといえば先に片付ける」と答えた人が計73%と多数派を占めている。このため歯科健診・受診が先延ばしにされがちなことがはっきりした。
年代別では20代で先延ばし派が61%と最多。そのうち63%が、自分の歯を「健康だと思わない」と回答していた。
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5.19年度予算案 社会保障費1200億円抑制 消費増税にらみ充実策も
12月26日 毎日新聞 |
政府が21日閣議決定した2019年度予算案は、例年通り社会保障費の抑制が最大の焦点だった。一方で、来年10月の消費税率10%への引き上げを踏まえた社会保障の充実策も盛り込まれた。暮らしに関わる部分を中心に予算案のポイントを解説する。
総報酬割りを拡大
16〜18年度は高齢化などによる社会保障費の伸び(自然増)を各年度で5000億円とする目安があったが、19年度に関しては、こうした数値による「基準」がなかった。最終的に8月の概算要求段階の6000億円から約1200億円を圧縮。自然増を4768億円とした。
主な削減は、所得の高いサラリーマン(40〜64歳)の介護保険料が高くなる「総報酬割り」の拡大で約610億円▽来年10月改定の薬価引き下げで約500億円▽生活保護費の生活扶助(食費など生活費相当分)削減で30億円などだ。16〜18年度には1300億〜1700億円圧縮したことに比べ、今回の削減幅は1200億円と小さい。
75歳以上の後期高齢者の伸び幅が一時的に鈍り、自然増自体が例年より小さかったことに加え、来年夏の参院選を控えて国民負担につながる制度の見直しに踏み込まなかったことが大きく影響した。厚生労働省幹部は「既に決まっている総報酬割り拡大など過去の『貯金』を使った結果だ」と解説する。
診療報酬0.41%引き上げ
医療機関や介護施設などの仕入れには消費税がかかるが、医療・介護サービスは非課税なので患者や利用者から消費税を取れない。来年10月の消費税率10%への引き上げに向け、医療機関などの「持ち出し」の補填(ほてん)の方法も予算編成の焦点の一つだった。これまでも消費増税時には報酬を引き上げて対応してきた。今回は診療報酬を0.41%(国費200億円程度)引き上げた。これにより初診料や再診料が数円から数十円増える見込みだ。
介護報酬は0.39%(同50億円程度)、障害福祉サービス等報酬も0.44%(同30億円程度)それぞれ引き上げた。ただ、これだけでは補填不足になるケースも想定される。厚労省は、施設整備が目的の「地域医療介護総合確保基金」を200億円積み増した。さらに、電子カルテ標準化などに使える「医療ⅠCT化促進基金」(300億円)も創設した。日本医師会の横倉義武会長は19日の記者会見で「現時点で医療にかかる消費税問題は解決した」と評価した。
年金80万円以下の人 生活支援金で収入増
75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度(後期医療)で、低所得者向けの保険料軽減措置が来年10月に廃止される。同時に介護保険料軽減や低年金者への生活支援金制度が実施され、収入の増える人が多いが、一部の人は負担増となる。
年金収入80万円以下の人は後期医療の月額保険料(全国平均)が本来より750円、80万円超〜168万円の人は560円低い.財務省の試算によると、支援金などを加えると80万円以下の約380万人は全員が収入増となる。年金収入61万円の単身世帯の場合、介護保険料が880円下がり、支援金3940円が支給され、負担増となる750円を差し引いても月4070円のプラスとなる。78万円では5130円の収入増だ。
一方、年金88万円超の世帯は支援金の対象外となる。それでも120万円までは介護保険料軽減の効果でプラスになるが、120万円超〜155万円以下の世帯は月270円、155万円超〜168万円以下では560円の収入減になる。
厚労省は、80万円超の世帯に対し、来年10月からの1年間は後期医療保険料の軽減分を補填し、負担が増えないようにする。対象者は約370万人で、来年度予算案に250億円を計上した。
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6.歯科麻酔、2歳死亡 両親「寝ているだけと手当てされず」
12月23日 朝日新聞デジタル |
福岡県内の歯科医院で昨年7月、虫歯治療のために麻酔を注射された女児(当時2)の容体が急変し、死亡する事故があった。両親からの届け出を受けた県警は、業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査を開始。容体変化への対応や麻酔の投与量が適切だったかなどを調べている。
女児の遺族や歯科医院側の代理人弁護士によると、亡くなったのは山口叶愛(のあ)ちゃん。事故は昨年7月1日、福岡県内の歯科医院で起きた。夕方に両親と訪れた叶愛ちゃんは、口内の複数箇所に麻酔薬を注射された後、治療を受け始めた。叶愛ちゃんは治療中、断続的に泣いていた。
50分ほどで治療が終わった後、付き添っていた両親は叶愛ちゃんがぐったりしていることに気づいた。担当医はすでに帰っており、代わりに院長が「疲れて寝ているだけで、よくあることですよ」などと説明。特に手当てはされなかったという。叶愛ちゃんは両親に連れられて歯科医院を出た後、大学病院などで治療を受けたが、意識は戻らなかった。2日後に亡くなり、司法解剖の結果、死因は麻酔中毒による低酸素脳症と判明した。
治療後の経緯について、双方の主張は異なる。両親は「診察室で抱き上げた時点で様子がおかしかったので、その場で訴えた」と話すが、医院側の弁護士は「診察室を出て、10〜20分ほど経ってから受付に異変を訴えてきた」とする。叶愛ちゃんの容体についても、両親は「体が固まり、呼びかけにも応じない状態。けいれんも起こしていた」。
医院側は、脈拍計測や目視の上で「緊急な対応を要する状況ではなかった」と説明する。叶愛ちゃんの父(32)は「様子が変だと言っても取り合ってもらえなかった」と訴えるが、医院側の弁護士は「(死亡の経緯は)医院を出たあと、他の病院での治療についても精査する必要がある」と話す。
死亡事故、過去にも
麻酔薬を使った歯科治療中の子どもの死亡事故は、過去にも起きている。福岡市で2000年、2歳の女児の容体が治療中に急変して死亡。埼玉県深谷市でも02年、4歳の女児が亡くなった。いずれもショック症状を起こしていた。 二つの事故をめぐる裁判では、病院側が患者の容体変化に対して十分に注意したかや、救護措置を果たす態勢をとっていたかという点が争われた。福岡市の事故の刑事裁判では、治療した担当医が容体変化の確認を怠った点と、女児の死亡に因果関係があるとは認められなかった。一方、深谷市の事故の民事訴訟では、治療中に患者の血圧や呼吸への配慮を尽くさなかったとして、担当医の過失が一部認定され、遺族への損害賠償が命じられた。
日本救急医学会が認定する救命処置のインストラクターで、歯科医の鈴木崇儀さん(67)=愛知県岡崎市=は、患者の容体確認の重要性を強調する。「麻酔を使う以上、患者の体調が悪くなることはある。常に対応できるようにしておくのが歯科医の義務だ」鈴木さんによると、麻酔を使う際は、患者の脈拍や血中の酸素濃度の確認が欠かせない。また、容体の急変に備えて、酸素吸入や心臓マッサージの救命措置を学んでおく必要がある。救急車を呼ぶこともためらうべきでないという。
厚生労働省では、容体の急変に対応できるよう、歯科医向けの救急救命研修のガイドラインを設けている。血圧や呼吸、重症度の適切な把握などが目標として盛り込まれているが、担当者は「必ずできなければならないという意味ではない」と話す。
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