1.社会保障費 伸び4800億円 薬価引き下げなどで抑制
12月18日 毎日新聞 一部変更 |
政府は17日、2019年度予算案のうち、高齢化に伴う社会保障費の伸びを約4800億円とする方針を決めた。根本匠厚生労働相と麻生太郎財務相が同日、合意した。概算要求段階では6000億円と見込まれていたが、薬価の引き下げなどで1200億円の財源を捻出した。
具体的には、高所得者に負担増となる介護保険料の「総報酬割り」により約600億円、来年10月に実施される実勢価格に近づける薬価の引き下げで約500億円、生活扶助費の見直しによる30億円など。社保費の伸びについて、16~18年度の3年間は毎年4997億円に抑えていたが今回はそれらを下回った。
来年10月に10%に引き上げられる消費増税に対応するため、診療報酬を0.41%(医科0.48%増、歯科0.57%増、調剤0.12%増 国費200億円相当)、介護報酬は0.39%(同50億円相当)、障害福祉サービス等報酬0.44%(同30億円相当)をそれぞれ引き上げ、仕入れなどにかかる消費税負担分を補填(ほてん)する。
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2.後期高齢者医療制度 低所得者向け負担減廃止 来年10月に
12月13日 毎日新聞 |
厚生労働省は、75歳以上の人を対象とした後期高齢者医療制度(後期医療)の保険料に関し、低所得者向けに特例で負担軽減している措置を来年10月に廃止する方針を固めた。消費税率10%への引き上げの際に給付金支給などの低所得者対策が実施されることから、特例廃止の影響が小さいと判断した。ただし、年金のみで年収80万超~168万円の人は給付金の支給対象外になるため「負担増」になる。厚労省は、この分を1年間だけ補填(ほてん)する。
後期医療には、年金のみで年収168万円以下の人を対象に、保険料を軽減する特例がある。本来は月1140円だが、年収80万超~168万円の人は月570円、80万円以下の人は380円に抑えている。政府は軽減措置を2017年度から段階的に廃止する方針を決めていたが、消費増税の延期に伴い、廃止も先送りされ、18年度は約600億円が投入された。特例が廃止されると、年収80万円以下の人は来年10月から20年3月までの半年で約4500円の負担増になるが、低所得者への給付金として月最大5000円が受け取れる。
一方、80万円超の人は給付金が支給されないため、同時に実施される介護保険料の軽減を考慮しても負担増になるケースが多いとみられる。このため、厚労省は来年10月からの1年間に限り、負担増分(月570円)を補填する方針だ。対象者は約370万人で、約250億円の財源が必要と見込む。
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3.がんゲノム医療、来春保険適用 オーダーメイド型普及へ
12月13日 朝日新聞デジタル |
患者のがん細胞の遺伝子を網羅的に調べ、患者ごとに最適な治療法を探る「ゲノム医療」の遺伝子検査システムについて、厚生労働省の部会は13日、製造販売を了承した。近く承認され、対象者は限られるが、来春に公的医療保険が適用される見通し。がん細胞の特徴に合う薬を選ぶオーダーメイド型医療の普及につながる。
がんは遺伝子の異常な働きが原因で起こり、異常のタイプの違いで薬の効き目が変わる。検査はがん細胞の遺伝子100種類以上を一度に調べ、どの遺伝子に変異が起きているかを解析。患者個々のがん細胞の特徴に合った、治療効果が見込まれる薬を選ぶ。
部会で了承されたのは、国立がん研究センターとシスメックスが開発した「NCCオンコパネル」と、中外製薬が扱う「ファウンデーションワンCDx」の二つの検査システム。厚労省が認めた全国11カ所の中核拠点病院と、連携する135の医療機関で検査ができる。対象は、日本癌学会などがん治療に関連する学会が合同で決めた指針に基づき、固形がんで再発や進行して標準的な治療が受けられない患者、小児がんや希少がんなどの患者に限られる。新たにがんと診断される人は年に約100万人いるが、対象者は初年度で7万~10万人とみられる。
先進医療で実施されているNCCオンコパネルは、約67万円の検査費を患者の自己負担と研究費で賄っている。公的医療保険が適用されると、患者の負担額が減り受けやすくなる価格は今後、中央社会保険医療協議会で議論される。検査をすることで、治療法がないとされてきた患者に合う薬が見つかる可能性がある。ただ、その薬が承認されていなかったり、開発されていなかったりするため、遺伝子異常に合った薬を使って治療できるのは10~20%とされる。
胃や大腸といった臓器別のがん治療が、今後は遺伝子変異の違いによる治療に変わる可能性がある。近畿大学の西尾和人教授は「がんのゲノム医療が進む第一歩になる。治療薬が少ない希少がんの患者らにとって、治療法が見つかる可能性が広がる。検査で見つかった薬がすぐに使える体制整備を急がなければならない」と話す。
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4.薬の市場価格、公定価格より7.2%安い 厚労省発表
12月6日 朝日新聞 |
厚生労働省は5日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で、薬の公定価格(薬価)と比べて市場価格(9月取引分)が平均で7.2%低かったという調査結果を公表した。来年10月の消費増税に合わせた薬価の臨時改定で、市場価格水準への引き下げと増税分の引き上げを同時に実施する。これにより薬価に組み込んでいる国費400億円超が減り、社会保障費の抑制につながる。
薬価改定は通常2年に1度。今年4月に実施したばかりだが、消費増税時には臨時改定を行うことになっている。
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5.医師の残業上限、3類型で規則 働き方で有識者検討会で方針
12月5日 毎日新聞 |
医師の働き方改革を巡り、厚生労働省は5日の有識者検討会で、残業時間の上限を3類型に分けて規制する方針を示した。一般労働者の上限「年720時間(休日を除く)」を超える見通しで、地域医療の中心となる病院の医師と、高い技能を身につけようとする若手医師はより高い上限として長時間の残業を容認する。具体的な上限時間案は年内にも示す予定。
2016年の厚労省調査によると、病院常勤医の4割が休日を含め週60時間以上働いていた。法定労働時間は週40時間のため、残業は月80時間以上になる。6月に成立した働き方改革関連法は一般労働者の残業時間上限を「年720時間(休日を除く)」と定めている。同様に規制すると地域医療が崩壊する恐れがあることなどから、医師は24年4月まで規制の対象外として、個別に検討している。
3類型は「一般的な医療機関の医師」「地域医療に従事する医師」「技能などを高めたい若手医師」。1カ月と年間の上限時間(休日を含む)を定める。上限を最も低くする一般医療機関の医師は、過労死の労災が認められる基準の月80時間(休日含む)を目安に、年間上限を定める。一方で、仕事を終えてから次に働き始めるまで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」を設けることを、雇用主の努力義務とする。
地域医療を担う医師は、より高い上限を設定。医療機関の再編・統合により効率的な医療提供ができるまでの「経過措置」で、将来的に一般の医療機関の上限時間に合わせる。若手医師も高い技量を身につける経験を積めるよう、別に上限を設定。医療機関を定めた上で医師本人の申し出を要件とする。地域医療、若手医師ともに、インターバルは義務付ける。月の上限を超えた場合は別の医師の面談をうけさせ、健康状態に応じて労働時間や当直を控える措置も義務付ける。
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6.集計ミスで消費税対応の把握遅れ 診療側が厚労省に猛省促す
8月5日 健保ニュース |
厚生労働省は7月25日、医療機関と薬局の消費税負担に関する診療報酬の対応状況をめぐり、27年11月に公表した26年度調査の結果が間違っていたことを、診療報酬調査専門組織の分科会に報告した。26年4月に消費税を5%から8%へ引き上げた際の3%相当額の補てん率について、当初は病院が102.36%で充足しているとみなされたが、改めて集計したところ、82.9%だった。厚労省によると、DPC病院の集計で増点項目を重複集計していたことが原因だという。
一般診療所、歯科診療所薬局については、当初とわずかな違いにとどまったが、病院の下方修正が影響し、全体の補てん率は当初の102.07%を大幅に下回る約90.6%となった。厚労省は27年11月に「補てん状況にばらつきは見られたものの、マクロでは概ね補てんされていることが確認された」との分析結果を同分科会に示していた。
今回の報告を受けて日本医師会の中川俊男副会長は、「大きな衝撃を受けている。厚労省の二重、三重の不手際だ。猛省を求めたい」と強調し、問題点として診療報酬の配転不足、27年度の検証誤り、補てん不足のまま4年間が経過などをあげた。
全日本病院協会の猪口雄二会長は、「大型、急性期の病院は疲弊している。28年度と30年度の診療報酬改定で議論できたはずが、30年度改定も逃した。1%あるかなかの利益で運営していて、影響は計り知れない。さかのぼってもう1回議論したい」と述べた。
日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行は、病院団体が合同で27年4月に独自調査した結果、病院の補てん率は84.2%で65%の病院で補てん不足だったものの、後から公表された厚労省のデータによって覆され、議論の材料として取り上げられなかったことを指摘した。
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