1.薬価引き下げで400億円削減へ 来年度の社会保障費
12月5日 朝日新聞デジタル |
来年度の社会保障予算の伸びが、5千億円程度に抑えられる見通しとなった。もともとは6千億円の伸びが見込まれていたが、薬の公定価格(薬価)を来年10月の消費増税時に引き下げることなどで少なくとも1千億円抑制できる。薬価と薬の市場価格の差を厚生労働省が調べた結果、薬価のうち国の負担分を400億円超減らせることがわかった。
薬価引き下げに加え、40〜64歳で所得の高い人たちが払う介護保険料の段階的引き上げ(約400億円)、協会けんぽからの国庫補助金の返納(数百億円)、生活保護の段階的引き下げ(数十億円)で、社会保障費は1千億円程度削減できると財務、厚労両省はみている。財務省はさらなる削減を厚労省に要求している。薬価は通常2年に1度、市場価格に合わせて引き下げている。今年4月に実施したばかりだが、消費増税時には臨時に改定することになっている。来年10月には、市場価格に合わせる引き下げと増税分の引き上げを一度に実施する。
厚労省は今年9月から臨時改定に向けて、薬価と市場価格の差を調査。5日の中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)で結果を公表する予定だ。高齢化や医療の高度化に伴う社会保障費の増加分(自然増)は来年度、6千億円にのぼる見通し。政府は財政再建の観点から「高齢化による増加分」だけに抑える方針だが、具体的な目安は決まっていない。政府は、自然増が6300億〜6700億円だった2016〜18年度の伸びについて、「年5千億円程度」に抑える目安を設定。財務省は、生まれが終戦前後の人口が少ない世代が75歳以上になる19〜21年度はさらなる抑制が可能と主張している。
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2.薬局6万店、再編の風圧 手厚い報酬に問われる機能
11月24日 日本経済新聞 |
今や社会のインフラともされるコンビニエンスストアを上回る業態が日本にある。医師の処方をもとに医薬品を出す「調剤薬局」だ。コンビニより多い6万店弱の薬局は地域医療を支えてきたものの、扱う医薬品は公定価格で競争は乏しい。厚生労働省は在宅医療などの新しい施策に対応できる薬局を育て、再編を促す方向にカジを切る。医療費の抑制に向け、薬のインフラも変革を迫られている。病院で医師の診察を受け、受付で処方せんをもらう。スリッパから靴にはきかえて自動ドアが開くと、小さな「お薬屋さん」が何軒か目に飛び込んでくる。誰もが経験するこんな風景が今、批判にさらされている。
指導役機能せず
「期待されている役割を果たしていないのではないか」。8日に厚労省が開いた審議会で、薬剤師の代表に有識者からの厳しい指摘が続いた。この日のテーマは今後の薬局や薬剤師の役割をどう考えるか。関係者の脳裏には、病院のそばにある「門前薬局」が浮かぶ。
厚労省は1970年代から、もうけの誘惑にかられる医師の過剰な投薬を薬剤師にチェックさせる「医薬分業」を推進するため、院外処方を進めてきた。日本薬剤師会の乾英夫副会長は「患者に適した処方が可能になり、いわゆる薬漬けは死語になった」と語る。国は調剤報酬を手厚くして院外処方を進め、できあがったのが門前薬局だ。国内の薬局は2017年度末で約5万9千店ある。厚労省のサンプル調査では常勤換算の薬剤師が2人以下の薬局が半数弱にのぼる。17年度の薬局への技術料と薬剤料を合わせた「調剤医療費」は、処方せん1枚あたり9187円。半数以上の薬局は特定の病院の処方せんに頼り、少数の薬剤師が調剤して患者に渡すだけのビジネスが成り立った。
「薬局大国」の足元は危うい。薬剤師に求められる役割は、患者のアレルギーや過去の副作用を把握したうえでの服薬指導だ。だが厚労省が調べたところ、電話などでの継続的な指導をしたことのある薬局は4割ほど。8割は必要性を感じていると答えたにもかかわらず、半数以上はできていない。薬の値段は公定価格で院内でも院外でも変わらないが、院外は薬剤師の技術に対する報酬が手厚い。同じ薬を受け取るのに病院から薬局へ移動すると、健康保険に高い請求がまわる。負担するのは患者だ。日本医師会の中川俊男副会長によると「院内ですべて処方すれば、現状との差額は年1兆7千億円になる」。身内のはずの医師からも批判が出る。
厚労省は薬局にある矛盾の解消に動く。過去の診療報酬改定では、門前薬局への調剤報酬を下げてきた。次の一手が薬局の機能を高め、事実上の再編を促す施策だ。厚労省は社会保障費の抑制に向け、お金がかかる入院を抑えて自宅で診療する「在宅医療」ヘの移行を進めている。在宅を担う「かかりつけ医」にあたる仕組みとして「地域密着型」の薬局をつくる。休日や夜間でも対応できるだけの薬剤師を持ち、患者を訪問して服薬を指導する。
質の良さで差
薬局に差も付ける。特殊な抗がん剤の副作用などについて適切な指導をできる薬局を「高度薬学管理型」とする。19年の通常国会に医薬品医療機器法の改正案を提出し、2つの薬局を法的に位置づける。そのうえで、要件を満たす薬局は20年度にも調剤報酬を増やす方向で議論する。厚労省幹部は「しっかりコストをかけた質の良い薬局を作りたい」と話す。
調剤医療費は17年度に7兆6664億円と、5年前の12年度に比べて16%増えた。高齢化に伴って薬にかかるお金は増え続け、税や保険料を通じて国民の負担になっている。コンビニは顧客のニーズを満たすことで市場を作り出してきた。街角の薬局は患者のニーズを満たしているかどうか。医薬分業がもたらした非効率を見直すには、ニーズを満たさない薬局には市場からの退出を迫るといった政策も必要になる。
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3.きょうのセカンドオピニオン 9歳孫、歯が生え変わらない
答える人・内川喜盛教授(日本歯科大学附属病院・小児歯科)
11月21日 毎日新聞 |
Q 9歳孫歯が生え変わらない
9歳の孫娘の歯が生え変わりません。歯科医師に「歯が多い特徴を持つ子だ」と言われました。このまま様子見でいいのでしょうか。(奈良県生駒市 女性)
A 過剰歯なら早め手術も
乳歯は通常、6歳で前歯から奥歯の順に生え変わり始め、前歯の場合、10歳ごろに永久歯ができあがります。9歳では前歯と奥歯の計12本の永久歯が生えているのが標準なので、1本もないのなら、どこかに問題があると考えられます。歯は顎(あご)の骨の中にある「芽」が育って骨から出て、歯肉を突き破って生えます。
「永久歯に生え変わらない」という相談で最も多い原因は、骨の中にこの芽が普通より多い場合です。「過剰歯」と呼ばれ、子どもの30〜50人に1人みられます。上の前歯の近くに1、2本あるのが一般的です。正常な歯の進路が邪魔されるため、外に出られなかったり、曲がったりします。その他、歯牙腫と呼ばれる、歯に似た組織が邪魔している場合もあります。
これらの障害物の有無や外に出られない歯の状態は、エックス線検査や三次元で観察できるCT(コンピューター断層撮影)などで調べます。その結果を基に、永久歯への影響を考慮しながら、手術を検討します。以前は周りの永久歯の成長を妨げないよう、永久歯ができあがるのを待って、過剰歯を取り除くのが主流でしたが、現在は6歳以降の生え変わり適齢期に、早めに取り除くようになっています。対応が遅れると、永久歯が生えないばかりでなく、その根っこが曲がったりして、その後の治療が難しくなるためです。
障害物が見つからない場合は、体全体の成長がゆっくりだと考えられます。心配な場合は小児歯科専門医を受診してください。
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4.消費増税で初診・再診料引き上げ 数円〜数十円の見通し
11月21日 朝日新聞 |
来年10月の消費増税に伴い、医療機関にかかる際の料金や入院料が、同月から引き上げられる。具体的な増額幅は年明け以降に決まるが、初・再診料の自己負担は数円〜数十円増える見通しだ。
厚生労働省が21日、中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)の分科会で、消費増税に対応する診療報酬改定案を示し、おおむね了承された。医療機関が医療機器などを買う時には消費税がかかるが、患者が窓口で払う料金は非課税のため、医療機関に負担が生じる。このため、診療報酬を引き上げて医療機関の負担を減らす。
改定案は、現在2820円の初診料と720円の再診料などを上げるとした。これに伴い、患者が自己負担する額(年齢や年収によって1〜3割)も増える。消費税が5%から8%になった2014年度の増税対応で補えたのは、医療機関全体で負担増分の92.5%、病院は85.0%にとどまった一方、診療所は111.2%だった。こうしたばらつきをならすため、今回は病院の負担軽減を手厚くし、入院基本料の引き上げ幅を大きくする方針だ。入院基本料は、医療機関の種類や規模に応じて決まっている。
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5.栃木「口腔崩壊」の子ども 公立小中の5割超に
11月17日 毎日新聞 |
栃木県保険医協会(長尾月夫会長)が、県内の公立小中学校に子どもの歯の状況を尋ねたところ、5割を超える学校が、むし歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」と呼ばれる状態の子どもがいると回答した。むし歯が見つかっても治療しないケースも多く、学校側から「家庭の意識が低い」「部活動や塾で受診が後回しになっている」などの声が上がっている。
調査は、県内の医師・歯科医が加盟する同協会が9月に初めて実施した。県内の公立小中学校514校に調査票を送り、257校(回答率50%)の養護教諭らがファクスで回答した。その結果、136校(53%)が過去2〜3年以内で「口腔崩壊の児童・生徒がいる」と回答した。壬生町至宝の歯科医で同協会の君島充宣副会長(60)によると、口腔崩壊状況にあると、十分に食べ物をかめなくなり、偏食や低栄養、細菌が臓器にも影響を及ぼす恐れがあるという。また、昨年度の学校歯科検診で「要受診」と判断された児童・生徒のうち、実際に受診したのは51%にとどまっていた。
調査の自由記入欄には、子どもの歯の現状がつづられた。「同じ家庭がなかなか受診してくれない」「経済的理由で受診できない家庭は少なく、親の意識の低さが影響している」と嘆く声や、「受診よりもスポーツ少年団の活動が優先される」など意識の低さへの指摘も目立った。また、「乳歯のむし歯は放置されがち」という声も多かった。同協会は「乳歯のむし歯を治療しないと永久歯がむし歯になったり、歯並びが悪くなったりする可能性があり、乳歯でも早期の治療が必要」としている。
県の調査によると、小中学生のむし歯を持つ割合は年々減少傾向にある。君島副会長は「口腔内の状況は二極化している。治療を受けられない背景は複雑化していて、歯科医や学校、行政など関係者全体が関わって支援していかねばならない」と話した。
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