1.スマホアプリで電子お薬手帳、広島県が日本薬剤師会と連帯
10月18日 日本経済新聞 |
広島県と日本薬剤師会(東京・新宿)は患者が薬を正しく服用できるよう、電子お薬手帳の普及で連携する。日本薬剤師会の提供するスマートフォン(スマホ)向けの電子お薬手帳のアプリに、県内の病院で処方された薬の情報が自動で記録される仕組みを整えた。紙のお薬手帳は複数保有して管理が煩雑で紛失したり、忘れたりするリスクもある。飲み合わせや重複による副作用のリスクを減らすため、県民に利用を働きかける。
広島県は患者の診療情報を共有して最適な医療を届けるため、病院や診療所、薬局とをネットワークで結ぶ「ひろしま医療情報ネットワーク」(HMネット)の普及を目指している。患者には病院などから「HMカード」が発行される。広島県と日本薬剤師会はHMカードと、日本薬剤師会の提供する電子お薬手帳のアプリ「日薬eお薬手帳」を連動させた。患者はあらかじめアプリをダウンロードし、HMカードを利用する初期設定をしておく。薬局で処方茎とともにHMカードを提示すれば、薬局で薬を受け取ったときにアプリに自動で服薬情報が記録される。
患者はアプリに情報を読み込ませる手間が省けるメリットがある。アプリのデータは専用のサーバーに保存されるため、スマホの故障や機種変更でもデータの引き継ぎができる。HMネットに参加していない薬局で薬を受け取るときには、患者が薬の用法、用量が記載された紙に印字されたQRコードを読み取ることでアプリに情報を記録できる。
HMカードの発行枚数は約3万枚と県民への認知はまだ低い。広島県内の歯科医院を含めた医療機関(全4363施設、今年7月末現在)のうち、HMネットに参加しているのは約450施設。薬局(全1629施設)は約260施設にとどまる。HMカードとスマホのお薬手帳アプリとを組み合わせる利便性を県民に理解してもらいながら普及を目指す。
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2.薬価が引き下げの方向、消費増税伴う改定で 業界は反発
10月17日 朝日新聞 デジタル |
消費増税に伴う2019年度の臨時改定で、薬価が引き下げられる方向だ。薬価の一部には国費が組み込まれており、政府は引き下げで浮く国費を社会保障費の財源として当て込む。社会保障をめぐる給付と負担の見直しを来夏の参院選後に先送りするなかでの「薬価頼み」に、医薬品業界は反発を強めている。
厚生労働省で17日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の会議で、日本製薬団体連合会(日薬連)の手代木功会長(塩野義製薬社長)は語気を強めた。「19年度は増税対応のための異例、特例の改定のはず。慎重な検討をお願いしたい」2年に1度の通常改定で、薬価は今年度1.74%引き下げられたばかり。来年度の臨時改定という「特殊事情」を利用した2年連続の引き下げに業界は反発する。日薬連などはこの日の会議で薬価引き下げ自体は否定しなかったが、通常改定と同程度の引き下げは見送るよう求めた。
診療報酬全体で消費増税対応の臨時改定が行われるが、政府は薬価について通常改定と同様に市場価格に合わせた引き下げも行う考えだ。消費税率が3%から5%になった1997年度も臨時改定で薬価を引き下げた。5%から8%に増税された14年度は通常改定と重なり、0.63%引き下げた。今年度の通常改定では、薬価引き下げによって国費1800億円が浮いた。19年度の臨時改定でも数百億円を確保できると見込む。厚労省幹部は「患者の負担増につながる議論が来夏の参院選後に先送りされる中、薬価は年末の予算編成に向けて最も期待できる財源だ」と話す。
薬価引き下げは患者負担の軽減にもなるため、政治的に進めやすい。財務省関係者は新薬の開発には補助制度や優遇税制もあるとして、「公費が使われる以上、機会あるごとに下げるべきだ」と強気だ。だが、製薬業界関係者は「一つの新薬開発に数百億円を投資するが、商品にならない場合もある。薬価値下げは事業計画の変更につながる」と訴える。別の関係者も「いつも薬価が狙い撃ちなのはおかしい」と嘆く。
薬価の大幅引き下げを阻止するため、市場価格の低下を防ぐ動きも出始めた。医薬品卸業の関係者は「今年は値を下げすぎないようにとの覚悟を持って、病院側と価格交渉をしてきた」と明かす。過度な価格競争を控え、市場価格の維持を狙う。ただ、業界でタッグを組めば独占禁止法に触れる恐れもあるため、あくまで「各社の判断」という一線は守っていると強調する。
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3.財務省 高齢者の医療費、自己負担増が柱 財政審で提案
10月10日 毎日新聞 |
財務省は9日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、医療、介護にかかる費用などを抑制する社会保障改革案を提示した。高額医療品への保険適用の除外を検討することや、高齢者の医療費の自己負担増などが柱。ただ、政府は来年夏の参院選を控え、厳しい歳出削減に及び腰で、本格的な議論は来夏以降に先送りされる見通しだ。
財務省は、高額化する最新の医薬品や医療技術について費用対効果なども考慮して保険適用の可否を判断するよう提案した。また、75歳以上の後期高齢者について、医療費の自己負担を現行の1割から2割に引き上げることや現役世代と同じ3割負担を求める「現役並みの所得」の判定基準を厳格化する案も示した。ただ、ほとんどの改革案はこれまでの主張と同じ内容で新味はなかった。
安倍晋三首相は今月2日の内閣改造後の記者会見で、今後3年で社会保障改革を進めると強調したが、初年度に議論されるのは65歳までの継続雇用年齢の引き上げなど、高齢者にとって痛みを伴わないものだけ。来年10月の消費増税による経済失速を避けたい財務省も「個人消費を冷やす負担増に踏み込みにくい」(幹部)という事情があり、抜本改革は先送りされる。
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4.再生医療、監視強化へ 効果不明瞭な「がん免疫療法」も
10月7日 朝日新聞 デジタル |
厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めた。効果がはっきりしない多くの「がん免疫療法」も対象となる。医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高める。
がん免疫療法をめぐっては、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授の研究をもとに開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されている。再生医療安全性確保法が規制する免疫細胞を用いた治療法とは別の手法だが、「免疫療法」と、ひとくくりで混同されることもある。
細胞を用いる治療は、2014年施行の同法で規制された。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容分野の医療に網をかける狙いもあった。同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させる。ただ、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していない。
iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できる。東海大の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上ることがわかった。高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されている。
同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きたときの対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務づける。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、委員会で出た意見を厚労省に報告させる。これまで努力義務だった苦情を受け付ける窓口の設置は、義務とする。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とする。審査の議事録などはウェブ上に公開させる方針だ。厚労省は19日に専門家会合を開き、早ければ省令を今月中にも改正、公布する。
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5.厚労省 上手な医療のかかり方 議論スタート
10月6日 毎日新聞 |
厚生労働省が「上手な医療のかかり方」に関する議論を始めた。常態化する医師の長時間労働是正に向け、急を要しない夜間や休日の受診を減らすよう国民に呼びかけるのが狙いで、厚労省の有識者懇談会が5日、初会合を開いた。年内に意見をまとめる。
委員の一人でアーティストのデーモン閣下さんは初会合後、記者団に「(医師働き過ぎの要因に)軽症で時間外に来る患者の診療があまりに多い。それを知ってもらいたい」と述べ、医師の労働環境改善のために受診のあり方の見直しに理解を見せた。医師法には「正当な理由なく患者を断ってはならない」との「応招義務」の規定がある。患者がいれば診なければならず長時間労働になりやすい。医師の働き方見直しには不要不急の受診を減らすことがカギになる。
ただし、患者が「不要不急」を判断するのは難しい。特に子どもの場合、親は不安だ。会合では、「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」(東京都杉並区)の阿真京子代表が「親の不安を解消しなければ、結果的に軽症の受診が減ったとしても、ただ我慢を強いているだけだ」と発言。患者が必要な医療を受けなくなり、健康に影響を与えかねないとの懸念を示した。
一方、企業に働き方の見直しを提案する「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長は「(医師と患者の)お互いの健康につなげるために、どちらかが犠牲になるのではない解決を目指すべきだ」と述べ、医師と患者の双方のメリットになる議論が必要だと強調した。企業と消費者との関係を例に、「消費者のイメージダウンを恐れ、サービス短縮に踏み込めない企業は多い。だが、問題点を知ることで解決への工夫はできる」と指摘した。
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6.病院の電子カルテ、スマホから音声入力で素早く
10月4日 日本経済新聞 電子版 |
音声認識ソフトのアドバンスト・メディアは4日、医師や看護師が音声入力で電子カルテなどの情報を記録できるサービスを始めたと発表した。病院向けに提供し、医療現場の業務改善につなげる。スマートフォン(スマホ)から簡便に入力が可能。チャット機能も搭載しており、医療スタッフ間の情報交換にも使える。
サービスの名称は「アミボイス・アイノート」。HITO病院(愛媛県四国中央市、石川賀代理事長)と共同開発した。アドバンスト・メディアの鈴木清幸社長は同日都内で記者会見し「業務負担が下がれば本来の仕事に時間を割ける。『働きがい改革』につながるサービスだ」と述べた。
専用アプリをインストールしたスマホに話しかけると音声が専用サーバーに上がり、音声認識エンジンでテキストに変換して記録する。電子カルテのほか患者の状態や医療機器の稼働状況など、多様な情報の記録に使える。スマホで撮影した画像も送信可能。当面は米アップルのスマホ「iPhone」に対応する。手作業でスマホに入力するより2〜4倍速く記録できるという。
従来は現場で手書きしたメモをデスクに戻ってパソコンに入力することが多かった。スタッフごとの利用状況を記録し、労働負荷の把握にも活用できる。料金は初期導入費が税別300万円で、月額利用料が1人あたり同1500円から。3年で300施設への納入を目指す。6月から試験導入したHITO病院では、リハビリテーション科で、患者1人あたりの電子カルテ入力に要する時間が、約70%(約2分)減少したという。
アドバンスト・メディアは音声認識ソフト最大手で自治体の議事録向けなどに納入している。病院向けでも6000施設以上を顧客に持つ。従来は電子カルテの入力など個々の作業を支援していたが、新サービスではサーバーデータを上げることで、情報共有や作業の分担をしやすくした。
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7.健保連 赤字組合4割 高齢者医療負担響く 昨年度
9月26日 毎日新聞 |
大企業の社員らが加入する健康保険組合の全国組織である健康保険組合連合会(健保連)は25日、2017年度の決算見込みで、赤字となる組合が全体の41.6%に上る580組合だったと発表した。前年度より39組合増えた。高齢者医療制度への拠出金の増加が要因で、健保連は「現役世代の負担が重すぎる」として、制度の見直しを求めている。健保組合は大企業の社員やその家族ら約2960万人が加入し、全国に1394組合。企業と社員が負担する保険料で運営し、加入者の医療費だけでなく、高齢者の医療費も負担している。
健保連によると、17年度の拠出金は前年度比7.5%増の3兆5265億円で過去最大。加入者より高齢者の医療費負担が上回る組合は127組合増えて490組合に上った。財政難から解散を選ぶ組合が相次ぎ、17年4月から18年4月までに12組合が解散した。全国の派遣労働者ら約50万人が加入する「人材派遣健康保険組合」も本年度末での解散を決めており、健保連の佐野雅宏副会長は25日の記者会見で「制度見直しの方向すら見えないことが解散の背景にある。政府は早急に検討してほしい」と強調した。
17年度決算見込みは、全体では1346億円の黒字。保険料率の引き上げなどで4年連続の黒字を確保したものの、黒字額は1030億円減少した。
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