1.歯科医院 院内感染対策 厚労省、徹底狙い診療報酬に差
8月27日 毎日新聞 |
歯科医院の一部で治療に使う機器を患者ごとに交換して滅菌する感染対策が徹底されていないとして、厚生労働省は対策が十分かどうかで診療報酬に差を付ける仕組みを10月から導入する。感染対策が不十分な歯科医院でB型肝炎患者が治療を後回しにされるケースもあり、患者や支援する弁護士らも改善を求めている。
問題の機器は、歯を削るドリルを先端に付ける「ハンドピース」と呼ばれる金属製の柄の部分。直接歯に当たるドリルは患者ごとの交換が常識だが、ハンドピースも唾液や血液が付く可能性があるため、厚労省や日本歯科医学会は患者ごとに交換し、高温高圧の水蒸気で滅菌するよう求めている。
歯科の感染症対策に詳しい厚労省国立感染症研究所の泉福(せんぷく)英信・細菌第1部第6室長によると、米国では機器を使い回していた歯科でヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染が広がったケースがある。国内で同様のケースは報告されていないが、泉福室長は「感染源が分かっていない患者や、感染した自覚がない患者も多く、日本では『ない』とは言い切れない。リスクを減らすことは重要だ」と強調する。だが実際は対策が十分とはいえない。
東北大大学院の江草宏教授らが2016〜17年、全国の歯科医1000人を対象に実施した調査(700人回答)で、ハンドビースを患者ごとに交換・滅菌していると答えたのは52%にとどまり、感染症患者と分かった場合のみ滅菌が17%▽状況に応じて滅菌・交換が16%▽消毒薬で拭くが14%だった。
こうした現実を踏まえ、厚労省は今年度の診療報酬改定で、歯科治療における感染症の院内感染を防ぐための基準を新設。10月以降、滅菌の具体的方法や使用する機器名、保有するハンドビースの数などを同省地方厚生局長に届け出た歯科の初診料と再診料を30円加算する一方で、未届けだとそれぞれ80円と40円減算する。
ただ、感染対策の徹底にはコストも手間もかかる。福岡市中央区の「ヘぎ歯科医院」は患者ごとにハンドピースを交換しているが、そのために1本十数万円のハンドピースを十数本用意し、1人の治療が終わるたびに専用機器で滅菌処理する。
扮(ヘぎ)浩一院長(63)は「小さな医院では、採算が合わなくなるところもあるだろう」と指摘。歯科医の中には「歯科の診療報酬はただでさえ低く、未届けなら減算というのは厳しすぎる」という声もある。泉福室長は「診療報酬に直結させることで対策を徹底する強い動機付けになる。効果を見守りたい」と話している。
B型肝炎患者差別根絶に期待
山口県に住むB型肝炎患者の大山美紀子さん(64)は2,3年前、県内の歯科医院で治療を後回しにされた経験がある。問診票で感染者であることを伝えたところ、歯科助手に渡された紙片に「肝炎患者さんは、午前の最後か午後の最後に来てください」と書かれていた。感染が判明したのは25歳の時。幼少時に受けた集団予防接種で注射器が使い回されたのが原因だった。出産で入院した時に他の妊婦と隔離されるなど、医療現場で差別的な扱いを何度も経験してきた大山さんは「感染症への対策と理解が広がれば、私のように悲しい思いをする人がいなくなるはず」と訴える。
全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団の武藤糾明弁護士(福岡県弁護士会)も『歯科治療でB型肝炎患者が後回しにされたという話はよく聞くが、対策が十分ならそうする必要はない。そもそもB型肝炎は注射器の連続使用で広がっており、医療現場での同様の被害は二度と許されない」と語る。
|
2.たばこの社会的損失「2兆円超」厚労省が推計
8月24日 朝日新聞 デジタル |
たばこが社会に及ぼす2015年度の総損失額が、約2兆500億円に上るとの推計を、厚生労働省研究班がまとめた。がんの治療費など喫煙者の医療費が最も多く、全体の半分以上を占めた。
研究班は、厚労省の「たばこ白書」でたばこと病気の因果関係が「十分ある」とされたがんや脳卒中などに加え、「示唆される」と判定された認知症やぜんそくなどにかかる医療費を推計した。さらに病気がもとで必要になった介護費用や、たばこが原因で起きる住宅や山林の火災による損失も加えた。最も多かったのは喫煙者の医療費で約1兆3594億円。内訳は、がんが5477億円、歯の治療費が1016億円を占めた。受動喫煙による医療費は、3295億円に上った。一方、介護費用は2617億円で、原因となった病気別では認知症が780億円と最多で脳卒中715億円が続いた。この他、火災による損失は975億円、吸い殻の清掃費用は16億円だった。
「因果関係が十分」とされる病気に限って推計した14年度の医療費は喫煙者1兆1669億円、受動喫煙者は3233億円だった。調査をした東京大の五十嵐中(あたる特任准教授(医薬政策学)は、「たばこは健康面だけでなく、社会全体に様々な影響を与えている。喫煙率の低下により医療費などは今後、減ることが予想されるが、損失はいまだに大きい。さらなる対策が必要だ」と話している。
|
3.滑らか繊維で微細な歯こうも除去
8月24日 日本経済新聞 電子版 |
ライオンの「クリニカアドバンテージ なめらかスリムフロス」は、細めで滑らかな素材を活用して複合繊維にし、初心者にも使いやすくしたデンタルフロスだ。従来品はナイロンだけだったのを、摩擦性の低いポリエステルと組み合わせることで、滑りやすく、歯と歯の間に入れやすくした。
フロスを構成する一本一本の繊維が細いため、歯に付いた微細な歯こうまで除去しやすい。ライオンによると、歯ブラシとフロスの併用で、歯間の歯こう除去率は歯ブラシだけの場合より約1.5倍向上するという報告もあるが、日本ではフロス利用者は3割にとどまる。「うまく磨けなさそう」「歯間に入りにくそう」と感じて使わない人も多いという。そうした不安に対応し、歯と歯の間にするつと入り、操作もスムーズにしやすい複合繊維を採用した。
フロスの容量は40メートル。1回40センチメートルほどを容器から引き出して指に巻き付け、使う部分をずらしながら、歯と歯の間に挟まった食べかすや歯こうを除去していく。歯と歯の間でスムーズに動かせるワックスコートタイプとし、キシリトールを配合している。ケースはブルーなど3色を用意。パッケージのイラストには初心者も使いやすいという意味合いで、自動車運転の初心者マークを付けた。
【評価委員の目】
フロスが軟らかく滑らかで、楽々と歯間に挿入できたのには感動した。未経験者が考えがちな「フロスで歯ぐきを痛めそうだ」といった潜在的な懸念を払拭し、継続利用を促す魅力がある。繊維が細いため、細かい歯こうを従来以上に落とせ、達成感や充実感を得られた。糸がうまく歯間に入らないというストレスを減らし、既存ユーザーにもアピールしそうだ。健康面の利点やフロス普及を促す社会貢献の側面もあり、バランスが良い。〈雑貨業界関係者〉
オーラルケア市場は歯ブラシと歯磨きが中心。フロスも広まりつつあるが、まだまだ開拓の余地がある。歯間系は高齢になるほど使用率が高まるが、本製品は初心者向け。確かに既存の「膨らむ」タイプよりするつと入って使いやすい。しっかり掃除するには若干心もとない感もあるが、初めてのフロスとしては非常に使いやすく、歯間に糸を入れるなんて痛そうといった心の壁は軽く越えられそうだ。色の選択肢があるのも重要だ。〈大学教授・流通サービス〉
フロスは使ったほうがいいと思われているにもかかわらず、利用者が少ないのは手間がかかるためだ。本製品は初心者にハ一ドルが高いロールタイプが身近になるようにきめ細かな工夫をした。使いやすさは既存品と一線を画す。ワックスタイプ、ミントの香りで軽快さや爽快感がある。化粧品感覚のかわいいケースや、初心者マークのデザインに好感が持てる。使い方をパッケージ裏に記したQRコード経由で動画で学べるのもいい。〈流通コンサルタント〉
【リサーチヤーの視点】習慣付けや使い分けで歯の健康に貢献
デンタルフロスは口臭予防にもなり、米国など普段からあいさつで口を近づける習慣がある国で普及している。デンタル業界でよく話題になる映画が1990年にヒットした「プリティーウーマン」。主人公のジュリア・ロバーツが食後に口元で何かしているのをリチヤード・ギアがドラッグかと見とがめると、手に持っていたのはフロスだったというシーンだ。フロスを小道具に使い「実はきちんとした女性」と表現できるほど生活に根付いているというわけだ。
一方、日本ではまだ普及が進んでいない。ライオンの調査によると、フロス類の使用率は2014年の29%から17年には32%に増えたが未使用者が半数を占め、使ったことはあるがやめている人も2割いた。習慣化できた人は「歯の健康を保つにはフロスの使用が必要だ」と認識している割合が57%で、習慣化できない人の同21%に比べて高く、さらに「日常の習慣とセットで決まったタイミングで行う」「目に見えるところに出しておく」などの工夫も目立ったという。
今回の新製品は使いやすさという視点から新開発したもので、市販品と比べて約50%摩擦力を低減したという、物理的かつ心理的なバリアを減らす工夫が好評だった。実際にフロスを使うと食べかすや歯こうはよく取れる。ロールタイプのフロスだけでなく、Y字の樹脂本体の先にフロスが付いたタイプなども併用して、部位によって使い分けるとより効果的との指摘もある。
ライオンでは8月末までお笑いタレントを起用して使用体験の発信やプレゼントキャンペーンを実施。発売時にオリジナルフロスホルダーも用意するなど、利用のきっかけづくりを狙う。プロモーション映像でも親子でフロスを楽しそうに使っているイメージを取り入れている。早い時期から習慣化できれば「人生100年時代」に健康寿命を延ばすのにも役立ちそうだ。
|
4.酒気帯び運転、逆転無罪 入れ歯安定剤の影響
8月21日 共同通信社 |
道交法違反(酒気帯び運転)に問われた静岡県沼津市の男性医師(49)の控訴審で、東京高裁(秋葉康弘(あきば・やすひろ)裁判長)は20日までに「警察の呼気検査で、入れ歯安定剤に含まれるアルコールが検知された可能性がある」として、逆転無罪の判決を言い渡した。
男性は同法違反のほか暴行罪にも問われ、-審静岡地裁は懲役1年、執行猶予3年としていたが、高裁は暴行のみ有罪と判断、罰金30万円の判決を言い渡した。判決は6月27日付。弁護側と検察側の双方が上告せず、確定した。判決によると、男性は2015年3月と5月、浜松市と静岡市で酒気を帯びた状態で乗用車を運転したとして起訴された。通勤途中に呼気検査を受け、基準を超える呼気1リットル中約0.15ミリグラムと0.3ミリグラムのアルコールが検知された。男性は検査の約30分前に入れ歯を装着した際に、アルコール16.9%を含む安定剤を使っていた。
男性側の弁護士によると、控訴審では「入れ歯からはみ出た安定剤を指で取り除いた」とする男性の証言に沿った実験を実施。口の中に残った安定剤の影響で、飲酒していなくても基準超のアルコールが検知された。
|