1.学習支援教室でむし歯予防 埼玉県、歯科医など派遣
6月27日 日本経済新聞 電子版 |
埼玉県は経済的に恵まれない中学生を対象に歯科医師などを派遣してむし歯予防を指導する「子供の健口(けんこう)支援事業」を始める。生活保護世帯などの子供は一般家庭に比べてむし歯になる割合が高いため、歯や口腔の健康格差縮小を目指す。29日から川口市、秩父市など5市町の学習支援教室に歯科衛生士が週1回程度出向き、口腔ケアやむし歯予防に効果のあるフッ化物水溶液を使ったうがいなどを指導する。歯科医による健診も年度末までに4回実施する。19年以降、実施する自治体を広げる。
東京都と首都大学東京が16年に共同実施した「子供の生活実態調査」によると、むし歯が4本以上ある中学2年生の割合は一般の家庭の1%に対し、生活困窮層では5%に上った。
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2.日歯連元会長に有罪判決 迂回献金「組織的かつ巧妙」
6月27日 朝日新聞 |
政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)による迂回寄付事件で、政治資金規正法違反の罪に問われた、いずれも日歯連会長だった高木幹正(73)、堤直文(76)の両被告に対する判決公判が27日、東京地裁であった。前田巌裁判長は、高木被告(求刑禁鋼2年)と堤被告(同1年6カ月)にそれぞれ禁銅1年6カ月執行猶予3年、団体としての日歯連に求刑通り罰金50万円の有罪判決を言い渡した。
高木被告側は取材に対し、控訴する意志を示した。判決で前田裁判長は「政治資金の収支をガラス張りにすることで政治活動の公正を確保しようとする法の趣旨を軽視した」と批判。 日歯連は組織的かつ巧妙に迂回寄付を行った」と指摘し、両被告は違法性を認識していたと認定した。
判決によると、高木被告は会長だった2013年の参院選前、会計責任者だった村田憙信(よしのぶ)被告(73)一審で有罪判決、控訴中と共謀し、支援を決めていた石井みどり参院議員(自民)の後援会に、同法の上限(5千万円)を超える計9500万円を寄付。これを隠すため、うち5千万円は他の参院議員(民主)の後援会に寄付したように装い迂回させ、政治資金収支報告書にうそを記載した。 また、堤被告も会長だった10年の参院選前に村田被告と共謀し、この選挙で当選した議員の後援会に5千万円を寄付したのに、議員が代表の民主党の支部に寄付したように装い迂回させ、収支報告書にうそを記載した。
公判で、高木、堤両被告は「村田被告に任せており、違法とは思わなかった」と無罪を主張していたが、判決は、2人が村田被告から相談を受けるなどしていたことから、「違法な提案を了承して実行に移させた」と認定した。日歯連を巡っては04年にも自民党旧橋本派への1億円ヤミ献金事件が発覚。当時の連盟会長や元官房長官らが有罪判決を受けた。事件を受け、政治資金規正法が05年に改正され、政治団体間の年間の寄付の上限が5千万円に定められた。判決はこの点にも触れ、「高木、堤両被告は、日歯連の不祥事の再発防止について取り組むべき立場にありながら、法令順守をなおざりにし、これをはき違えた。その責任は重い」と指摘した。
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3.検診で「むし歯」親の過半放置
6月25日 毎日新聞 |
学校の歯科健診でむし歯が見つかった子どものうち過半数が歯医者で治療をしておらず、むし歯が10本以上ある「口腔崩壊」の子どもがいる学校は3割を超えていたとの調査結果がまとまった。親の無関心や貧困が背景にあるため、眼科、耳鼻科でも同様の傾向がうかがわれ、医療関係者は危機感を募らせている。
全国保険医団体連合会が、小中高校と特別支援学校を対象に調査した。回答があった学校の児童・生徒数は計約147万人で、初の大規模調査となる検診時期は都府県により異なるが、2012〜17年度のうちの1年間。今年4月時点の集計では、小学校(21都府県)で「要治療」と診断されながら、歯医者を受診しなかった子どもは52.1%いた。中学校(21都府県)ではさらに状況が悪化し、未受診の生徒は66.6%に上った。
高校(3府県)は84.1%、特別支援学校(5県)は55.8%さらに、「口腔崩壊」している子どもがいた小学校は39.7%▽中学校は32.7%▽高校は50.3%▽特別支援学校は45.1%にも及んだ。子どもと接する機会が多い養護教諭に複数回答で未受診の理由を尋ねたところ「乳歯のむし歯は生え変わるから治療しなくてもいい」と誤解している親や、子どもの健康に無関心で歯医者に連れていかない親がいたという。また、長時間労働で仕事が休めず受診につながらなかったり、受診費用を払えず受診をためらったりする家庭もあった。
「乳歯全部がむし歯で、給食はハサミなどで細かく切って提供していた」「奥歯が溶けて無いため、よくかんで食べることができない児童が3、4人いる」「部活動や習い事により、歯科治療の時間を作ることが難しい生徒がいる」。全国保険医団体連合会には、養護教諭から数多くの事例が報告された。連合会は今後、子どもたちの口の中の健康を守るためにどのような取り組みが必要かを検討していく。
このうち、大阪府保険医協会と府歯科保険医協会は昨年末から今年初めに、10万人規模の調査を実施した。府歯科保険医協会は13年度から歯科の調査をしていたが、今回初めて府保険医協会と協力し、眼科▽耳鼻科▽内科・その他にも対象を広げた。その結果、歯科に限らず、眼科や耳鼻科でも学校検診の結果、医療機関を受診するよう指示されたのに、多くが未受診だった。視力低下で黒板が見えづらかったり、頻繁に鼻づまりによる頭痛を訴えて保健室に来たりといったケースも報告されている。
回答では眼科の未受診が目立った。16年度に学校検診を受けた11万8692人のうち4万1859人(35.3%)が医療機関への受診が必要な「要受診」と診断された。しかし、62.9%にあたる2万6338人が受診していなかった。未受診の割合は小学校46.7%▽中学校66%▽高校87.1%と年齢が上がるほど高い。
学校側の自由記述では、「眼鏡のつるが折れてもテープで留めて使っている」「眼鏡の度が合っていないのに、新たに買ってもらえない」など、家庭の経済的な事情の影響がうかがえた。直接、眼鏡店に行き購入しているケースもあるとみられる。眼科の学校医を務める大阪府松原市の岡田安司医師は「衛生環境が改善され、最近は眼病での受診勧告は減っているが、視力による勧告は逆に増えている。養護教諭から『昨年も受診勧告したのだが、そのままだ』との言葉も多く聞かれる。家庭の問題もあるので強く言えないが、むなしさを覚える」と話す。
歯科では、学校検診を受けた児童・生徒11万9798人のうち、3万9843人(33.3%)が要受診とされたが、63.8%が受診していなかった。府歯科保険医協会の矢部あづさ理事は「むし歯のある子どもは減っているのに、口腔崩壊状態の子どもたちがおり、二極化している印象だ。歯科治療から取り残される子どもたちを救いたい」と訴える。
また、耳鼻科は学校検診を受けた9万6186人のうち1万949人(11.4%)が要受診とされ、42.8%が受診していなかった。中耳炎を放置し、聴力が低下したため席の配慮が必要となったケースや、重度の花粉症なのに保護者からは「毎年のことだから」と言われ、医療機関に連れていってもらえない事例もあった。未受診の要因と関連が深いと思われるものを学校に尋ねたところ、「保護者の子の健康への理解不足」(54.4%)が最も高く、経済的困難(35.9%)▽共働き(35.6%)▽ひとり親家庭(34.4%)と続いた。
府保険医協会の井上賢二副理事長は「末受診が子どもたちの学習環境、学校生活上の安全に影響を及ぼしていることが明らかになった。自治体は必要な施策を講じるために、まずは実態把握に努めてほしい」と呼びかけている。
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4.抗がん剤 残薬、廃棄せず活用へ 厚労省
6月24日 毎日新聞 |
厚生労働省は、「オプジーボ」などの注射で使う高額な注射用抗がん剤について、1瓶で2回まで使用を認めるとする指針をまとめた。廃棄されていた残薬を安全に有効活用することで医療費削減を目指す。
液状の抗がん剤は「バイアル」というガラスの瓶に入っている。通常1本の瓶から患者の体重に合わせて必要な量を使った後は、細菌汚染の恐れから残薬を廃棄するようメーカー側は求めている。廃棄分が年数百億円に上るという試算があり、自民党行革推進本部が昨年7月、対応を求めていた。
残薬の使用が認められるのは、開封後も有効成分が分解しないなどの安定性がある抗がん剤。使用後はふたを消毒し、滅菌シールで保護するなどの厳格な取り扱いを求める。
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5.佐歯子がきっと来る〜佐賀の歯科医師「怪」動画
6月21日 朝日新聞 デジタル |
一見真面目な歯医者のインタビュー。その最中に突然、背後に白装束の女性の姿が。垂れ下がった髪に覆われた顔はよく見えないが、ニタリと開いた口に白い歯がのぞく……。画面はモノクロに切り替わり「おわかりいただけただろうか?」。実はこれ、佐賀県歯科医師会のPR動画だ。では、なぜこんな動画を?
白装束、長髪の不気味な女性は佐賀のご当地アイドル「ピンキースカイ」の園田有由美さん扮する「佐歯子(さばこ)」。「歯の妖精」との設定で、決めゼリフは「は(歯)〜っ」だ。動画は約3分〜約1分半の3本あり、うち約1分半の「歯の妖精とゾンビ」編では、歯ブラシやデンタルフロスを持ち、コミカルに動く。現役の歯科医もゾンビの特殊メイクで出演し、画面に向かって目をむく。動画の狙いは歯の健康に関する啓発。ただ、歯科医師会も歯科医師「怪」とする徹底さも見せる。
「有明海のエイリアン」とも呼ばれる珍魚ワラスボを起用し話題になった佐賀市のPR動画「W・R・S.B」などを作った佐賀広告センターが手がけた。19日に会見した同社の宮副直記取締役は、ネット上ではホラー調のものがよく見られているとして「真面目な団体ほど見てもらえない傾向があるが、強く印象づけられるものになっていると思う」と話した。会によると、これまでも会の活動や虫歯予防についての動画は作っていたが、広がりは見られなかった。「佐歯子」はイメージにそぐわないのでは、などと激しい議論があったが「若者に興味を持たれないなら将来、会の意義はあるのか。今までにないやり方を」といった若手の意見が通ったという。
会見に同席した県歯科医師会の寺尾隆治会長は「会の目的は治療以前に口の健康を守ることだが、なかなか健診を受けてもらえない」とインパクトにこだわった理由を説明「映像を見て、歯を大切にすれば健康で長生きできると知ってほしい」と訴えた。
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6.医療IT委員会答申「日医 IT化宣言2016実現に向けた方策」について
6月20日 日本医師会 |
石川広己常任理事は、6月20日の定例記者会見で、医療IT委員会が会長諮問「日医IT化宣言2016実現に向けた方策一地域医療連携、多職種連携のあるべき姿一」に対する答申を取りまとめ、6月5日に川出靖彦委員長(岐阜県医師会副会長)から横倉義武会長に提出したことを報告し、その概要について説明した。
答申は、(1)はじめに、(2)日医IT化宣言2016実現に向けた日本医師会の取り組み、(3)地域医療連携、多職種連携のあるべき姿、(4)おわりに-からなっている。(2)では、前期の医療IT委員会の答申を元に、平成28年6月公表された「日医IT化宣言2016に対して、その実現に向けた日医の取り組みとして、1.医療等分野専用ネットワーク構築に向けて、2.医療等ID創設に向けて、3.医師資格証の普及促進、4.ORCA 2nd Stage開幕、5.次世代医療基盤法への対応一の5項目について、提言を行っている。
3.では、医師免許取得時に医師資格証を発行することや、更なるアナログ利用拡大のために国に働き掛けるべきであること、各地の地域医療連携ネットワークの中にHPKIの利用を明確に位置付けること、一般の方や医療関係職種への認知度向上のための広報活動等について提言を行っている。
5.では、日医が中心となって、認定事業を行うための一般財団法人を設立する方向性が示されている他、各医師会や医療機関に丁寧に説明して協力を依頼することや、国から国民への広報、将来的に要件が緩和されて営利を追求する企業等が参入してこないよう注視することなどが必要だとしている。
(3)では、地域医療連携・多職種連携、医療現場におけるIT化に関する問題点や課題として、1.患者の同意取得、2.地域医療連携ネットワークの運営コスト、3.多職種連携におけるSNS利用とBYOD、4.遠隔医療、5.1Tリテラシーの醸成一の5項目を取り上げ、考察、提言を行っている。
2.では、島根県の地域医療連携ネットワーク「まめネット」を紹介しながら、コスト負担のあり方について考察。地域住民の健康を見守るための社会インフラである地域医療連携ネットワークの整備・運用には国や地方公共団体、保険者を巻き込んで事業を成立、維持していくことが必要であると提言している。5.では、医療のIT化を進めていく上で必要不可欠なITリテラシーを醸成するための教育コンテンツを生涯教育等に取り入れることを提言している。
石川常任理事は、今回の提言について、「1つでも多く実現できるよう、鋭意取り組んでいきたい」との考えを示すとともに、更なる医療分野のITに関係する問題として、「医療セプターで対応していくことになる標的型攻撃を始めとするセキュリティの問題」や「NDBや介護DB、MID-NETなどの公益データベースの利活用」「AIやIoTの活用」などを挙げた上で、「今後も現場の医師の考えを適切に反映できるよう、医療分野のIT化について積極的に取り組んでいきたい」と述べた。
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