1.骨太の方針 閣議決定 社会保障費抑制の布石に
6月17日 毎日新聞 |
政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針2 018」が15日に閣議決定され、社会保障分野についても改革の方向性が大筋で示された。今年秋には自民党総裁選、来年春に統一地方選、夏は参院選と選挙が続くため、財務省が求めた社会保障分野での大幅な負担増は見送られた形。ただ、増大する社会保障費を抑制するため、厚生労働省は一部を今後取り組む医療、介護、年金の制度改革への布石としたい考えだ。実現の可能性が高い見直し案を中心に紹介する。
・医療 予防事業 市区町村主体に
医療では、財務省が求めていた75歳以上の高齢者が医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担(原則1割)を2割に引き上げる案は具体的な記述は見送られ、「後期高齢者の窓口負担のあり方について検討する」との表現にとどまった。ただ、厚労省幹部は「直近の見直しはなくなったが、将来的な検討は避けられない」と話す。
高齢者が病気や介護が必要な状態に陥ることを予防する仕組みの制度改正も検討する。現在は予防事業が都道府県単位と市区町村単位に分かれているが、住民に身近な市区町村主体の事業にしたい考えだ。来年の通常国会に法案を提出する方向だ。また、医療・介護サービスの自己負担割合が現役世代並みの3割となる高齢者の拡大も検討する。医療保険では70歳以上で世帯年収(2人以上)が520万円以上だと3割負担になるが、給与所得者の平均年収は420万円。財務省は、現役世代とのバランスを取る観点から70歳以上の年収基準を引き下げる余地があるとみている。ただ、来夏の参院選前は避け、早くても来年夏以降になる見通しだ。
・介護 ケアプラン有料化検討
介護分野では、高齢者が介護保険サービスを利用する際にケアマネジヤーが作成するケアプラン(介護計画)の有料化を検討する。今後、厚労省の介護保険部会で議論する方針だ。現在の自己負担はゼロのため利用者の反発も予想されるが、議論がまとまれば20年の通常国会に提出する介護保険法改正案に盛り込む。
ケアプランは要介護認定を受けて介護サービスを利用する際に、サービスの種類や利用回数を定める計画。基本的な作成費用は要介護3以上で約1万4000円で、仮に1割負担となれば1400円の負担が新たに生じる。定率負担ではなく、数百円といった定額負担になる可能性もあり、負担のあり方も含めて議論となる見込みだ。財務省が有料化を求めており、「利用者側からケアプランの質についてチェックが働く」とするが、与党内にも慎重論があり調整が難航する可能性もある。
・年金 働く高齢者の減額縮小
公的年金では、一定の収入がある高齢者の年金額を減らす「在職老齢年金制度」の見直しを、厚労省の社会保障審議会で議論する。年金の減額幅を少なくして、働く意欲をそがないようにするのが狙いだ。既に年金部会で検討が始まっており、20年の通常国会に関連法案の提出を目指す。
在職老齢年金は、60〜64歳は賃金と年金の合計が月28万円超、65歳以上だと46万円超が対象で、賃金が高くなるほど年金の減額幅も大きくなる。対象者は14年度時点で126万人。政府は健康な高齢者が働き続け、社会の担い手になれるよう社会保障制度や雇用制度の見直しを進めており、この流れの一環。自民党の一部から見直しを求める声が上がったこともあり、検討が具体化した。ただ、年金給付額が増えるため、経団連は「必要な人への給付の重点化に反し、年金財政への影響が懸念される」と慎重な立場だ。穴埋めする財源の確保も必要で、議論がスムーズに運ぶかは不透明だ。
・自然増の目安 具体的な数値目標見送り
「骨太の方針」で焦点となっていた社会保障費の自然増を抑制する19年度から3年間の「目安」は、「高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」との表現で決着し、具体的な数値目標の明記は見送った。3年前の15年の骨太方針では、16〜18年度の3年間で自然増を1.5兆円程度に抑える「目安」を設けた。医療や介護保険の自己負担増や、サービスの見直しなどで、毎年約5000億円の目安を達成してきた。今回は、来年春の統一地方選や夏の参院選を控え、与党内には負担増につながる具体的な数値目標の明記に反対する意見が多く、財政再建を図りたい財務省も、額の記載は断念した。
19年度からの3年間は高齢化の伸びが鈍化するため自然増も低くなり、「目安」の水準はこれまでの年5000億円から下がる見込みだ。とはいえ、財務省が年末の予算編成時に自然増の圧縮を求め、厚労省との折衝で削減幅が決まる構図は変わらない。ただ、厚労省幹部は「今年の年末は参院選を控えているため、国民の負担増につながる抑制策は採らないだろう」との見通しを述べる。骨太には「各年度の歳出については一律ではなく柔軟に対応する」との記述も盛り込まれ、目安を多少上回る余地も残された形になった。
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2.日歯定時代議員会 開催される
6月14・15日 日本歯科医師会 |
日本歯科医師会は第188回定時代議員会を6月14・15日開催した。初日に議案可決および協議後に執行部の会務に対して地区代表事前質問7題を、2日目には個人事前質問25題が行われた。
今回質問をした校友会会員は地区代表質問では「会費を担う会員数の将来予想について」海野仁(74回福島)、「歯科衛生士の復職支援について」小山理(55回東京)の2名で、個人事前質問では「障害者歯科診療における診療報酬について」五十嵐史征(78回神奈川)、「身体障害者福祉法第15条第1項による医師の指定について」吉田直人(58回宮城)、「介護報酬について」又平基史(68回静岡)、「次世代医療基盤法に対する日歯の分析と方針について」小谷田宏(61回埼玉)の4名であった。
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3.手術前後、口の中を清潔に「口腔機能管理」、合併症予防に効果
6月13日 朝日新聞 デジタル |
手術後の肺炎や抗がん剤使用による口内炎を防ぐため、治療の前後に口の中の清掃などを行う「口腔機能管理」の取り組みが広がっている。合併症が減れば、患者の入院日数の短縮にもつながることから普及が期待されている。病院と地域の歯科診療所の連携が課題だ。
兵庫県西宮市の女性(69)は2014年8月、兵庫医大病院(西宮市)で、がんができた舌の左側を切り、切除部分を再建するため前腕の組織を移植する手術を受けた。耳鼻咽科・頭頚部外科が担当する手術の2日前、歯科口腔外科の菅原一真歯科医師に、口の中をきれいにしてもらった。電動器具で歯石を取ったり、殺菌消毒剤で歯肉を洗浄したり。菅原さんから「誤嚥性(ごえんせい)肺炎と創部の感染を防ぐためです」と説明された。手術後も歯ブラシや消毒用綿球を用いて週2回行われた。女性は朝夜、自分でも歯をみがいた。手術直後の食事は、鼻に入れた管から流し込まれる栄養剤。術後7日目に初めてゼリー状の食事を口からとった。9月に入ると、おかゆと通常の副食を食べられるまでになり、約1カ月で退院できた。
女性は「手術直後は痛みと食事ができないストレスで辛かったが、3カ月くらいになるかもしれないと言われていた入院期間が思ったより短くてよかった」と振り返る。菅原さんによると、術後の筋力低下を防ぎ、免疫力を高めるため、なるべく早く食事やリハビリを再開することが重要。そのためにも、手術前後は口の中を清潔に保ち、口の中にいる細菌による術後の誤嚥性肺炎や手術の傷への感染を予防する必要があるという。
兵庫医大病院は、手術前後の口の中の清掃や食べる機能を保つリハビリなどを行う口腔機能管理に積極的に取り組む。主な対象はのどや舌にできたがんの手術、術後肺炎が起こりやすい食道がん手術などで年間約700件にのぼる。「手術に伴う合併症のリスクを極力減らすのが目的。必要があれば虫歯や歯周病の治療を行い、手術直前に抜歯することもある」と歯科口腔外科の岸本裕充教授は話す。
手術前に口腔内をきれいにすることの効果を示すデータはいくつも報告されている。13〜16年に信州大病院で肺がんの手術を受けた患者457人のうち肺炎になった割合は、口腔機能管理をしなかった場合が6.8%に対し、行った場合は1.9%だった。厚生労働省は6年前から、手術時などの口腔機能管理について医療機関が診療報酬を請求できるようにして、その対象を少しずつ広げてきた。現在は、がんや心臓の手術、臓器移植のほか、がんの放射線・抗がん剤治療、緩和ケアなどが対象となっている。手術時の請求件数を見ると、16年は12年に比べ約7倍に増えている。
口腔機能管理の多くはいまのところ歯科のある病院で行われている。口腔機能管理などを行うために歯科を新設する病院もあり、信州大の栗田浩教授(歯科口腔外科)によると、長野県内の全身麻酔手術を行う中規模以上の病院で歯科があるのは、11年の18から現在は28に増えたという。ただ、厚労省の16年の調査では、全国の一般病院(7380カ所)のうち「歯科」があるのは15%、「歯科口腔外科」があるのは約13%。口腔機能管理を病院と協力して行う歯科診療所を増やさないと、対象患者の増加に対応するのは難しいとみられる。
東京歯科大市川総合病院(千葉県市川市)の歯科・口腔外科では、手術時などに口腔機能管理を担当した患者の約7割を地域の歯科診療所に紹介し、その後の管理を依頼している。野村武史教授は「口内炎の発症率が高い抗がん剤を長期間にわたって服用する患者など、日常的に口腔機能管理を必要とする人も増えているので、病院と歯科診療所の連携がますます重要になっている」と言う。
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4.入れ歯を超音波洗浄、5分でOK
6月8日 日本経済新聞 電子版 |
ライオンの「デントヘルス デンチヤーケア 超音波入れ歯クリーンキット」は、超音波振動と除菌液とを組み合わせて入れ歯の汚れ落としや除菌が5分でできる洗浄キット。超音波を使う洗浄機器は歯科医院が業務用では既に使っているが、一般家庭用は初めてという。
除菌液を水で溶かしたなかに入れ歯を浸し、4万2000ヘルツの超音波振動をかけることで、金具周りや、入れ歯の土台となる部分の裏側の汚れもハブラシを使わずに取り除ける。歯周病の原因となる細菌の発生を抑え、残っている健康な歯のリスクも減らせる。容器の洗浄槽は直径76ミリメートル、深さ40ミリメートルで、底から水位線までの深さは約34ミリメートルとなる。部分入れ歯の洗浄を想定するが、上記の水溶液に浸る大きさならば総入れ歯も洗える。他社の洗浄液はひどい汚れは一晩漬けておくことを勧める商品が多いが、5分で洗浄が完了するので時間が短縮できる。次亜塩素酸系などではなく、中性の界面活性剤を活用するため、入れ歯の樹脂や金属への影響が小さい利点もあるという。
今回の洗浄キットは2017年4月に、高齢者の入れ歯利用率が高い北海道で先行発売した。売れ行きが計画比1.6倍と好調だったため、全国発売に踏み切った。ドラッグストアや家電量販店、ネットショップなどで販売中だ。
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5.全国6万件の歯科医を検索・予約 8日からサイト運営
6月6日 日本経済新聞 電子版 |
歯科用品の通販を手掛ける歯愛メディカルは、全国の歯科医の検索や診療予約ができるボータルサイトの運営を8日から始める。同社の顧客である6万件超の医院の情報を掲載。近くの医院の探索や口コミ機能なども設け、使い勝手を高めて顧客拡大につなげる。
同社は歯ブラシなど歯科用品の通販で全国の歯科医と取引がある。このネットワークを生かして「さがそう歯医者さん」という検索サイトを構築。スマートフオン(スマホ)やパソコンで近所の医院を探したり、すぐに診療ができる医院を絞り込んだりできる。掲載料金は課金制とし、サイト経由で診療予約が入った場合に1980円(税別)の料金を月額で徴収する。予約がゼロの月は無料となり、1件でも予約が入れば件にかかわらず定額となる。年内に1万件の予約をめざす。
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6.12歳むし歯、10年で半減 沖縄県内1.7本 文科省調べ
6月5日 琉球新報 |
全国の12歳児を対象に毎年実施される永久歯列のむし歯調査で、2017年度の沖縄県の1人当たりのむし歯羅患(りかん)本数は1.7本で、06年度の3.5本から半減したことが4日、分かった。沖縄はこれまで全国ワーストを独走してきたが、近年は毎年0.2本減を記録するなど、改善率が他府県と比べ著しい。県歯科医師会の玉城斉理事は「教育と医療の各機関の連携強化が結実した」と述べ、改善傾向が維持できれば、年内または来年度にも初めて最下位を脱却できる可能性を示唆した。
調査は文部科学省の学校保健統計調査の一環で、全国平均は0.82本だった。北海道(1.5本)、鹿児島(1.4本)が沖縄に続いた。全国でむし歯が最も少なかったのは、新潟と愛知の0.4本だった。玉城理事は、県内児童のむし歯率が高い傾向にある背景に(1)保護者の口腔(こうくう)環境整備への意識の低さ(2)低所得を理由とする未治療一などを挙げた。ただ、近年は学校教育の中でも積極的にむし歯予防について考える機会を設けているほか、医療機関の周知活動が奏功し「飛躍的に状況は改善されている」と評価する。
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所によると、全国小学生歯みがき大会の参加率は全国平均が18.8%・那覇市は58.3%で全国の政令都市または県庁所在地で最高だった。同研究所の吉松治郎保健研究部課長も歯科教育の充実・強化により沖縄の状況は着実に改善していると評価。「身体の健やかな成長には健康で丈夫な歯が欠かせない」と述べ、さらなる歯科教育の充実に期待を寄せた。
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