1.医薬品広告 不適切な事例67件 誇大表現など 厚労省
5月12日 毎日新聞 |
厚生労働省は、医師の処方が必要な医療用医薬品の広告を、医療機関を通じて調べた結果、抗がん剤や麻酔薬など延べ52製品で、誇大な表現など法律や通知違反が疑われる事例が67件あったと発表した。重大な健康被害を招いた例はないが、厚労省は自治体と連携し、製薬会社への行政指導を進めている。
調査は製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)を巡るデータ改ざんなどを受けて始まり、今回で2回目。2017年度の5カ月間、「覆面モニター」として抽出した複数の医療機関を通じて、製薬会社の営業担当者らによる説明や資料を確認した。違反が疑われる67件のうち「事実誤認の恐れのある表現」が28件で最も多く、未承認の効能や用法を示した例も8件あった。厚労省は「違反の疑いがある段階」として製品名を明らかにしていない。
病院で医師に不適切な説明をした後に、営業担当者が使用した資料を回収する例もあったといい、厚労省の担当者は「証拠が残らないようにするなど巧妙化しており、今後も適切な監視を続ける」としている。
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2.武田7兆円買収 メガマージャ―の裏にある危機感
5月10日 日本経済新聞 電子版 一部掲載 |
日本企業の大型M&A(合併・買収)が加速している。武田薬品工業は日本企業で過去最大額の6兆8000億円でアイルランドの製薬大手シャイアーを買収することで合意した。日本企業による海外企業買収は2017年に過去最多となった。なぜ今、メガ・マージヤー(巨大な合併・買収)に踏み込むのか。経営者を突き動かす衝動を探る。
武田はシャイアー買収で世界トップ10に入る巨大製薬会社(メガ・ファーマ)となる。クリストフ・ウェバー社長は「グローバルで通用する強い製薬会社になる」と宣言するが、狙いは規模の拡大だけではない。14年に就任して以来の危機感があった。「過去15年間、日本の研究所では新薬をひとつも生み出せていない」シャイアーが強みを持つのが治療が難しいとされる希少疾患向けの薬だ。患者数が少ない分、企業にとっては開発が報われないリスクが大きい。だが、その開発手法は、大勢の患者を一律に治療する「ブロックバスター」と呼ぶ大型薬と違い、個人個人の特性に応じたゲノム(全遺伝情報)創薬につながる。
大型薬の開発が難しくなるなか、新しい創薬手法は武田の悲願だ。かつて大半を自社でまかなった創薬は現在、スタートアップや外部の研究機関に頼っている。「シャイアー買収で強い研究開発のエンジンを持つことができる」。ウェバー社長の言葉からはイノベーション(革新)ヘの渇望がにじむ。
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3.社会保障費の抑制策、焦点 政府、甘い成長予測 財政再建目標
5月8日 朝日新聞 デジタル |
政府は、新たな財政再建目標の2025年度の達成に向け、再建計画の詳細を詰める作業に入る。政権内でも反発が強い社会保障費の抑制策をどこまで具体化できるかが最大の焦点となる。
政府が調整中の新目標は、国と地方の「基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)」をこれまでより5年遅い25年度に黒字にする内容だ。内閣府が1月に公表した試算によると、25年度のPBは日本経済が高い成長をした場合でも3.8兆円の赤字。歳出削減などをしない場合、黒字化は27年度の見通しで、25年度に黒字化するには歳出の3分の1を占める社会保障費をどう抑えるかがカギを握る。22年には「団塊の世代」が75歳以上になり始め、医療や介護の費用の急増が見込まれ、達成は容易ではない。
そこで財務省は社会保障費の伸びに厳しい「目安」を設け、後期高齢者の窓口負担の引き上げなど、具体的な抑制策も計画に盛り込みたい考えだ。だが来夏に参院選を控え、与党議員の反発は強い。相次ぐ不祥事で財務省の発言力の低下も否めず、見通しは厳しい。PBを試算するうえで政府が置いた甘い成長率見通しにも問題がある。政府は20年度以降、税収を左右する名目成長率を3%超と想定する。だが、3%超が続いたのはバブル期が最後だ。最近も成長率が想定を下回った結果、内閣府は18年度のPBが税収の下ぶれで約4.3兆円悪化するとの見通しを示したばかりだ。
これまでも、PB黒字化の達成時期は、06年には「11年度」、09年には「今後10年以内」、10年には「20年度」と延期が繰り返されており、今回も「絵に描いた餅」になりかねない。
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4.急増する保険料負担 国保、慢性赤字解消は遠く
5月7日 日本経済新聞 |
地域医療の矛盾が噴出している。発足から80年を迎えた国民健康保険(国保)は2018年度から一部の加入者の保険料が上がる見通しだ。過剰な病床も放置できなくなり、自治体間のきしみが生じている。住民に身近な地域医療が岐路に立っている。
兵庫県三木市で農業を営む60代の男性が悩んでいる。「保険料が1割も上がるなんて……」。同市では18年度から国保の保険料が加入者平均で9%増える。この男性は家族の分と合わせて年間60万円程度を支払っているが、負担は6万円ほど増える見込みだ。なぜこのような負担増を求められるのか。国保の財政構造に理由が潜む。三木市は国保財政の赤字を補うため、年間数億円の税金を投入してきた。同市のように一般会計から法定外の繰り入れをする自治体は約1300。国は国保加入者以外の税金で穴埋めするいびつな構図をやめるよう求め始めた。三木市は繰り入れを残すため、保険料の上昇幅は9%にとどまると見ることもできる。もし全廃すれば保険料は平均で20%も上がる。同市は「今後の引き上げについては未定」とするが、住民には「今回で終わるとは思えない」との懸念がくすぶる。
国保の慢性的な赤字の背景には高齢化や産業構造の変化に伴う加入者層の激変がある。1965年度には農林水産業とその他の自営業が加入者の7割を占めていたが、2015年度には両者の割合は計17%に低下。代わりに退職した高齢者を含む無職者や非正規労働者が全体の8割に迫る。「今や国保は非正規と退職高齢者のための保険。低収入と高い医療費のダブルパンチだ」。ある自治体の担当者は嘆く。
国保の課題は税金による穴埋めの解消だけではない。4月から運営主体が市町村から都道府県に移行したのに伴い、市町村間の保険料格差も難題になる。奈良県は24年度を目標に保険料水準の統一を目指している。県内には加入者が100人程度の村もあり、1人でも高額な医療を受けると保険料に跳ね返る。「水準を統一すれば高額医療の影響も吸収できる」と県の担当者は話す。奈良県の1人当たりの保険料格差は1.88倍。長野県のように3倍を超える自治体もあり、統一の道は険しい。
国は都道府県を運営主体とするのに伴い、3400億円の公費を投入する。うち半分は健康保険組合などが負担する。健保は既に年間1兆数千億円を国保に「仕送り」しており、負担増への批判が根強い。「医療費適正化の実績に応じて配分する方法などに改める必要がある」と日本総合研究所の西沢和彦主席研究員は指摘する。高齢化時代の課題を先送りし続けてきたツケが健保などにまた回ろうとしている。
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5.生活保護法改正案が可決 野党不在、論議深まらず 与党、働き方優先
4月26日 共同通信社 |
衆院厚生労働委員会は25日、生活困窮世帯の大学進学時の一時金支給などを盛り込んだ生活保護法などの改正案を自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決した。野党は辞任した福田淳一財務事務次官のセクハラ疑惑に関する政府対応や、過労死があった野村不動産に対する特別指導の経緯を巡り反発。維新を除く野党は欠席した。
働き方改革関連法案の審議入りを急ぐ与党は野党不在のまま採決。改正案は5月にも成立する見通しだが、専門家は「中身が全く検討されないままだ」と批判している。改正案は、保護世帯の高校生が進学する際の一時金支給(親元を離れる場合は30万円、同居の場合は10万円)や、生活保護受給者は原則として価格が安いジェネリック医薬品(後発薬)を使用することを盛り込んだ。また生活困窮者に居場所を提供する「無料・低額宿泊所」の防火態勢や個室の広さに最低基準を設け、自治体が改善命令を出せるように規制を強化。宿泊所やシェルターの利用者の社会的孤立を防ぐため、生活相談や通院・服薬の確認など支援を拡充する。
生活保護費は低所得世帯の支出額とのバランスで支給額が決められ、政府は10月から一部世帯で最大5%引き下げる方針。維新を除く野党は「子育て世帯への影響が大きい」として3月末に対案を提出。保護基準の算定方法見直しや、児童扶養手当の月額1万円アップを盛り込んだものの、4月18日から審議を拒否していた。審議時間計約23時間のうち、野党に配分された約11時間は、政務三役が出席する中、何もせずに時間だけが過ぎる「空回し」で終わった。「生活保護問題対策全国会議」代表幹事の尾藤広喜弁護士はジェネリックの原則使用を「お金のない人は我慢しろと言っているようなもの」と批判。「制度の根幹に関わる保護基準の算定方法も、国会できちんと議論するべきだ」と憤った。
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