1.骨と同成分の材料開発 九大、歯科で製品化「医療新世紀」
4月24日 共同通信社 |
九州大の石川邦夫(いしかわ くにお)教授(歯科・生体材料学)は、骨の主成分である「炭酸アパタイト」を顆粒(かりゅう)状にした新しい人工骨材料を開発し、歯のインプラント手術にも使える製品として実用化したと発表した。
インプラント手術では顎の骨に人工歯根を埋め込んだ上で人工の歯をかぶせる。顎の骨が欠けたり、足りなかったりすると体の別の骨を移植しなければならなかったが、人工材料で骨を補えれば、患者負担が大きく軽減されるとしている。粉末状の炭酸アパタイトの製造技術は以前からあったものの、粉末のまま体に入れると炎症を引き起こす難点があった。石川教授らは、粉末より粒が大きい顆粒にした炭酸カルシウムの組成の一部を置き換える方法で、顆粒の炭酸アパタイトを作ることに成功。動物への移植実験で、既存の骨とつながり、骨に置き換わることを確かめた。その上で、九大と東京医科歯科大、徳島大が協力し臨床試験(治験)を実施。22人の患者に新材料を移植し、計27本のインプラントを設けた。治験の結果は、新材料を移植して骨が太ってからインプラント手術をする方式と、インプラントと同時に新材料を移植する方式のいずれでも、患者の骨と新材料、インプラントが一体化し、力が加わってもインプラントをしっかり支える有効性が確認された。
石川教授は「歯科では全ての骨の再建に使え、整形外科分野でも応用できる。移植した新材料に造血機能など骨の生物学的機能を担わせることも目指したい」と話す。新材料を使った製品は歯科材料・機器の製造販売会社「ジーシー」(東京)の骨補填(ほてん)材「サイトランスグラニュール」。
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2.保険料は誰のため?苦境の健保組合、4割は高齢者へ
4月23日 日経新聞 電子版 |
健康保険組合連合会(健保連)は23日、2018年度の予算集計を公表した。健保組合は、多くの会社員が自身の病気やケガへの備えと考えている医療保険制度だが、従業員と企業が負担する8兆円余りの保険料収入のうち、4割強は高齢者の医療費を賄うための「仕送り」に回る。その苦境をみると、誰のために保険料を払っているのか、との疑問も浮かぶ。
「もはや保険とはいえない」。健保組合の関係者はいう。「保険」とは本来、お互いに費用を少しずつ出し合い、リスクが現実となった際に応分の給付を受けられるもの。保険料を払う加入者のための仕組みだ。だが高齢者医療の世界は事情が異なる。「保険」の枠組みの外側にまで、支え合いの考え方を大きく広げているのだ。主に大企業の健保組合の集まりである健保連の集計によれば、加入者への保険給付よりも高齢者医療への拠出金の方が多い組合は、全体の2割にあたる283組合に上る。収支が赤字の組合は62%に達し「仕送り貧乏」が常態化しつつある。
高齢者医療費への拠出金は、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度への支援金と、65〜74歳が加入する国民健康保険への納付金の2種類がある。特に負担が重いのは後期高齢者への支援金で、18年度は総額1兆9千億円を見込む。健保連の推計では、これが25年度に2兆8千億円まで膨らむ。08年に始まった後期高齢者医療制度は「75歳以上の高齢者にも応分の負担を求めつつ、現役世代の支援も組み合わせて支え合う仕組み」(厚生労働省OB)として始まった。その考え方を反映し、後期高齢者医療への支援金は当初、「連帯保険料」と呼ぶはずだった。しかしその名称に待ったがかかる。「現役世代はお金を払う一方で、保険料といえない」との不満が表面化したのだ。
高齢で保険料の負担が難しいお年寄りの医療にかかる財源を賄うなら、税を投入するなど社会全体で広く支える考え方もあるが、増税は政治的に難しい。「取りやすいところから取る」という発想が負担と給付の関係を曖昧にし、現役の会社員が加入する健保組合の苦境を深めている。
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3.「医療ビッグデータ」提供へ始動 カルテなど集めて匿名化、企業・研究機関に
4月22日 朝日新聞 デジタル |
診療録(カルテ)や検査データなど個人の医療情報を集めて企業や研究機関に提供する新制度が5月に始まる。国が認定した民間事業者が病院などから実名で集約した情報を匿名化して「医療ビッグデータ」として提供する。情報の漏洩(ろうえい)や悪用を懸念する声もあるが、副作用の発見や新薬の開発、病気の早期診断に役立つと期待されている。
仕組みは5月11日までに施行する「次世代医療基盤法」で新設される。早ければ今秋にも認定を受ける事業者が出てくる見通し。情報の管理能力や匿名化技術について、一定の基準を満たしているかを国が審査する。事業開始時に年間100万人以上の情報を集められる体制を基本とし、すでに大学病院など複数の医療機関の情報を扱っている組織が想定されている。認定事業者は、カルテや検査報告書、学校や職場の健康診断結果を収集できる。複数施設から集めた同一人物の情報を統合、暗号化し保管。個人が識別できないように加工し有料で企業や研究機関に提供する。
政府は今回の仕組みで、先端技術の開発や新産業の育成を目指す。大勢の患者の診療内容を把握できれば、病状ごとにより適した治療の選択に役立ち、薬の副作用調査も効率化できると期待される。検査画像を人工知能に学習させることで早期診断、早期治療につながる可能性がある。こうした構想は、事業者が膨大な情報を集めやすい環境が前提になる。そのため、患者本人が拒否しなければ同意したとみなし、病院や診療所は事業者に情報を提供できる。ただし本人が気づかないうちに情報が提供されたり情報が漏れたりするリスクが審議の過程で指摘された。そこで情報を提供する病院や診療所には、受診時に患者に書面で説明することを求める。情報の提供までに30日間ほどあけて、患者が拒否できる機会を担保する方針。政府は近く、安全対策などの基本方針を閣議決定する。
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4.オンライン服薬指導実現を 規制改革推進会議が意見
4月21日 毎日新聞 |
政府の規制改革推進会議は20日、全ての医療サービスを在宅で受けられるようにするため、オンラインでの服薬指導の実現を求める意見を公表した。5月にも策定する答申に盛り込むことを目指し、関係省庁と協議を進める。
高齢化の進展で在宅医療のニーズが高まる中、政府は情報通信機器を使って医師が患者と対面せずに行う「遠隔診療」を一般診療で事実上、解禁した。しかし院外処方される薬を購入する際は薬剤師の対面での服薬指導が義務づけられており、在宅で全てを済ますことは難しい。
推進会議の意見では、対面と適切に組み合わせ、スマートフォンなどを活用したオンライン服薬指導の仕組みづくりを早急に行うよう求めた。また処方箋の完全電子化も提言した。
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