1.患者への補償困難か 院長「保険で返金」千葉県歯科医師会は否定的 3医院休診
3月1日 千葉日報 |
千葉県内で3歯科医院を運営する「医療法人社団和洗会」(古谷充朗理事長)が医療法に従わず保健所に無届けで3医院を休診している問題で、古谷理事長が院長を務める「習志野台歯科」(船橋市習志野台)で、前払いした治療費の返金を求める一部患者に「保険で返す」と答えていたことが、28日までの千葉日報社の取材で分かった。ただ、千葉県歯科医師会は古谷院長に「医院の都合で診療継続できないケースは保険の対象外だろう」と説明しており、患者への治療費返還は厳しい見通し。
関係者によると、今年2月9日に古谷院長が習志野台歯科に姿を現し、一部患者に応対。高額な歯の矯正治療費を前払いした患者らが「治療できないなら返金を」と迫った。古谷院長は「県歯科医師会で加入している保険で払う」と回答したため、その場にいた船橋市保健所職員が県歯科医師会に電話で確認。同医師会の担当者は「歯科医師会で加入してもらうような保険はない」と回答した。同医師会によると、歯科医師会独自の保険制度はなく、医療関係者らの多くは任意の「医師賠償責任保険」に加入しているという。ただ、医療事故・過誤に対応する同保険では、医院や医師の都合で診療継続できない場合には適応できないとし「対象外だろう」との見通しを伝えた。
患者から相談を受ける保健所や消費生活センター、県歯科医師会などは、前例のない事態の対応に苦慮している。いずれも専用の「相談窓口」はなく、問い合わせに対しては「個別に弁護士に相談してもらうしかない」などと説明しているという。千葉日報社に28日、電話で窮状を訴えた女性(49)は「長男(12)の矯正治療費として約4年前に140万円を支払った。母子家庭で生活が厳しい中で、長男の将来を考えて治療に踏み切った。治療を続けるか、できないなら返金して」と声を震わせた。
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2.厚労省 高齢者の薬処方見直し 初の適正使用指針案 医療者向け
2月22日 毎日新聞 |
何種類もの薬を併せて飲むことが多い65歳以上の高齢者に副作用などのトラブルが出るのを防ぐため、厚生労働省は21日、医師や薬剤師向けに薬の適正使用を求めた初の指針案をまとめた。
典型的な症状や原因薬を例示。医療関係者が連携して患者の服薬状況を把握し、問題がある場合は処方を見直すよう促している。同省は「患者は自己判断で薬の服用を中止せずに、必ず医師に相談してほしい」と呼び掛けている。高齢者は持病などで服用する薬が増加する傾向があり、飲み合わせによる副作用のリスクが指摘されている。また、内臓の機能が弱り、薬の効果が強く出る傾向がある。
指針では、複数の病院や薬局を利用する患者は、服用の実態が把握しにくいと指摘。入院時や介護施設の入所時、在宅医療の開始時などの機会を捉え、かかりつけ医が処方状況を把握するとともに、薬の必要性を見直したり、薬局を一元化したりする取り組みが有効だとした。また、降圧薬の服用で転倒や記億障害などの症状が出やすくなるなどと、高齢者に特徴的な副作用と原因薬を具体的に示した。副作用とみられる症状が出れば、処方の中止や減量などを検討するよう求めた。健康食品や市販薬も他の薬との併用で影響が出ることがあるという。
レセプト(診療報酬明細書)を基にした調査によると、75歳以上の4割超が5種類以上処方されている。薬の服用数に応じて副作用の発生も増え、6種類以上の服用で転倒などにより要介護と認定されるリスクが2倍以上高まるという研究結果がある。
高齢者に出やすい症状と主な原因薬剤は次のとおり。
薬剤:症状
降圧剤:ふらつき 記憶障害
睡眠薬:ふらつき せん妄
抗うつ薬:ふらつき 記憶障害 便秘 排尿障害
てんかん治療薬:記憶障害
パーキンソン病治療薬:せん妄
抗不安薬:せん妄
中枢性降圧薬:抑うつ
抗ヒスタミン薬:抑うつ 便秘 排尿障害
抗精神病薬:抗うつ
非ステロイド性抗炎症薬:食欲低下
アスピリン:食欲低下
過活動ぼうこう治療薬:便秘 排尿障害
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3.子ども医療費の無料化拡大、是か非か? その1
2月21日 朝日新聞デジタル |
子ども医療費の無料化が広がっている。かつては富裕自治体のサービスが目立ったが、無料化は今や全自治体に広がってしる。いま、通院費では「中学生まで」と「高校生まで」助成するケースが8割に達する。子育て世帯のつなぎとめ策だが、過剰医療の懸念もある。
・子育て支援策として有効か
・子どもの健康にプラスばかりか
・医療費の膨張は許容できるか
自治体が居住する子どもの医療費の自己負担分を助成するサービス。通常、医療費では、就学前で2割、小学生以上で3割を患者が自己負担するが、自治体が肩代わりしていることが多い。自治体によって、親の所得制限や一部負担金を設けているところもある。
矢嶋茂裕さん(小児科医)「低いコスト意識 過剰医療も」
子どもの医療費の無料化対象を自治体が競って広げているような現状は、行き過ぎだと思います。無料であるがゆえに、一部の患者は過度に受診し、過剰な検査・投薬をしている医療者もいる。それが、公費負担の増大を招いているからです。無料だからと、軽症でも夜間・休日を問わずに受診する「コンビニ受診」を生んでいます。
地方では少子化が進んだため減りましたが、全国的にはまだ安易な受診も指摘されています。自宅でも対応できる鼻づまりの対処や、薬局で買えるハンドクリームのような薬を処方してもらうために、子どもを漫然と医者に通わせ続ける方もいます。自己負担はゼロでも、費用は保険料と税金で支払われます。受診回数の問題以上に気になるのは、自己負担がないからと、健康のためには必ずしも必要とは思えない医療が野放図に行われる面があることです。たとえば、「念のため」のCT検査1回でも放射線被曝(ひばく)の影響は無視できませんし、超音波検査も安易に行われている可能性があります。思春期に少し背が伸び始めるのが遅いだけで「低身長」と診断し、月30万円ほどかかる成長ホルモン投与をした例も。費用と効果、リスクのバランスがとれていないのです。
本当に子どもの健康を考えるなら、むしろ予防に費用をかけるべきです。新生児が精密な健診を受けられるようにすれば、病気の予防や早期発見につながる。子どものためになり、医療費も減らせると思います。子育て支援策としての優先度も考える必要があります。例えば、給食無料化なら、無料でも食べる量が大幅に増えることはなく財政負担額は見通せます。ところが、医療費が無料になると、利用が増え、予算額はどんどん膨張しがちです。にもかかわらず、子どもの医療費無料化が拡大されてきた背景に、自治体間の宣伝合戦があった面は否めません。そして、一度広げた無料化を見直すのは政治的に難しい。だからこそ、私は、医療者が声を上げる必要があると思います。もちろん、就学前の幼児の医療費無料化で、貧困家庭の受診控えを防いだり、診察を通じて育児を指導したりすることはあっていい。自治体の差をなくすために、国が全国一律に就学前まで無料としてもいいのかもしれません。ただ、それ以上の年齢の子どもへの助成は見直すべきです。
コスト意識を高めることも重要です。無料は維持しても、いったん自己負担してもらったあとで還付するのが効果的です。英国は医療費は無料でも受診までに時間がかかり、米国は受診はできても医療費が高い。それに比べ、日本は受診しやすい上に、医療費負担も軽い。悪いことではありませんが、たとえば医者の再診料は720円でも、薬局で2種類の軟膏(なんこう)を混ぜる費用が800円かかる場合があるといったことを、どれだけの人が知っているか。一度は自己負担するようになれば、各自がもっと医療費について考えるのではないでしょうか。
子どもの医療は決して「ただ」ではありません。公費が使われ、多くは借金で賄われています。そして将来、その借金を利子をつけて返していくことになるのは子どもたち自身なのです。そのことをもっと自覚し、本当に必要な時期・対象以外の方には、きちんとコストを負担していただく必要があると思います。
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4.医師が月268時間残業 高知の病院に是正勧告
2月19日 日本経済新聞 電子版 |
高知医療センター(高知市)の男性医師2人が2016年度、労使協定(三六協定)の上限である月250時間を超えて最長で月268時間残業したとして、運営する高知県・高知市病院企業団が、高知労働墓準監督署から是正勧告を受けていたことが19日、企業団への取材で分かった。
企業団によると、医師2人は心臓血管外科に所属。労使協定では特別な事情がある場合、医師は月250時間までの残業を年6回まで可能と規定。昨年2月の労働署の調査で、医師2人が16年度に計4回、上限を上回っていたことが判明した。過労死で労災認定される目安「過労死ライン」は月100時間の残業とされる。
是正勧告は昨年3月7日付。企業団の古昧勉企業長は「医師不足に加え、心臓血管外科は特に専門的な技術を要し、交代勤務や複数の主治医を置くといった対策を取ることが難しい」と説明。「当直明けはできるだけ早く帰宅するよう呼び掛けるなど改善に努めたい」としている。 |