1.厚労省 医師の負担軽減策実施へ 患者説明など業務移管
2月17日 毎日新聞 |
厚生労働省の有識者検討会は16日、医師の負担軽減に向け、患者への説明など一部の業務を他の職種に任せるタスク・シフテイング(業務移管)の推進を柱とした緊急対策をまとめた。同省は月内にも、この対策を医師会や病院団体に通知し、医療現場での実施を求めたいとしている。
医師の働き方改革に関しては、今後、労働時間の上限規制などが議論の対象となるが、医師の健康やワークライフバランス確保のため、業務移管を先行させる格好だ。緊急対策は、移管される業務として(1)薬の説明や服薬指導(2)入院や検査手順の説明(3)診断書などの代行入力(4)尿道カテーテルの留置―などを挙げた。研修を受けた看護師らが役割を担うことを想定している。同省によると、一部の医療機関では、こうした取り組みは既に始まっているが、緊急対策として打ち出すことで、さらに広げたい考え。他の医療機関に比べ大学病院では取り組みが遅れているとして、一層推進するよう求めている。
医師の出退勤記録を客観的に把握することや、労使協定(36協定)で定めた上限時間を超える時間外労働(残業)がないか確認し、必要ならば見直すことも盛り込んだ。出産や育児などで医師のキャリア形成が阻害されないために柔軟な働き方ができるような対応策を取ることや、労働安全衛生法が定める衛生委員会などの仕組みを使って労働時間短縮の議論を進めるべきだとしている。当直明けの勤務負担の軽減や、仕事を終えてから次に働き始めるまでに一定の休息を義務付ける「勤務間インターバル」、複数主治医制など、それぞれの医療機関が置かれた状況に応じて導入に向けて検討することも提案した。
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2.後発薬使用率、沖縄1位・東京44位 地域差なぜ?
2月11日 日本経済新聞 電子版 |
膨らみ続ける医療費を抑える切り札である後発医薬品。最も使われているのは沖縄県、最低は徳島県でその使用率は実に20ポイントもの開きがある。なぜこれほど違うのか。住民の所得、年齢構成や慣習などが複雑に絡み合う。
全国の都道府県で後発医薬品の使用率でトップを走るのが沖縄県だ。2017年3月末で79.9%と全国平均の68.6%を大きく上回る。一つは経済的な事情がある。沖縄県の県民所得は1人当たり213万円(14年度)で全国で最も低い。後発薬は先発薬の半額ほどで済むため、懐に優しい。しかし理由はほかにもある。米国統治下時代の名残だ。
日本の医療保険制度ではかかった医療費の1〜3割を病院の窓口で支払う。だが「当時の沖縄では医療費全額を患者が立て替え、後で自己負担分以外の費用を還付してもらう」(沖縄県薬剤師会の亀谷浩昌会長)方式だった。立て替えとはいえ大きな出費が嫌われた。同じ都道府県内でもばらつきがある。例えば東京23区。最高の足立区が68.4%なのに対し、最低の新宿区は55.4%だ。1人あたりの所得は足立区は23区中で最低だが新宿区も8位と中間で所得では割りきれない。数字を読み解くカギは人口構成だ。国民健康保険(国保)では、新宿区は加入者に占める20〜29歳の割合が約22%で全国平均の約3倍と高い。外国人留学生が多いことが影響している。一方、60〜69歳の割合は18%と全国平均より14ポイントも低い。
厚労省によれば1人当たり医療費は15〜44歳は年間12万円だが70歳以上は84万円。新宿区の1人当たり医療費は23区中で最も低い。「医療費負担が軽い自治体では後発薬の使用を促すメリットが小さい」(厚労省幹部)後発薬の使用を増やすには医師に後発薬名か成分の名称で処方してもらい、患者に後発薬を選ぶように促す必要がある。栃木県の南西部にある安足地区は自治体が病院に働きかけ、後発薬の使用率を高めた。協議会で先進的な病院が自らの取り組みを発表、共有する。各参加病院は「何かやらざるを得ない」(関係者)。調査にあたったみずほ情報総研によると使用率が3割ととても低かった2つの病院は今や8割を上回る。一方、徳島県は全国で使用率が唯一6割を切る。大手調剤薬局が他地域に比べて少なく、県内展開の小規模店が多い。全国健康保険協会徳島支部によると、県内の大学病院前薬局は後発薬の調剤率が3〜4割程度で全国展開の薬局では8割超だった。小規模な薬局では次々と登場する後発薬の在庫を十分そろえられないためともいう。
政府は後発医薬品の使用率について、2020年9月までに現在の60%台後半から80%まで引き上げる考えだ。米国は9割を超え、英国も8割程度。日本でも障壁は多く達成は容易ではないが、この水準を目指す。使用率が80%になれば、医療費が数千億円規模で削減できるとの試算がある。
後発医薬品は「ゾロ薬」と呼ばれた時期があった。先発医薬品の特許が切れると、様々なメーカーがその薬をゾロゾロと出すからだ。薬価も安くなることもあり先発薬に劣るイメージがつきまとった。例えば花粉症の人などに芯じみ深い抗アレルギー剤の「アレグラ」。主成分のフェキソフェナジン塩酸塩錠という名称で、後発薬がたくさん出ている。アレグラ錠60ミリグラムの薬価は65円だが後発薬なら多くが半額以下だ。安くても薬の効能は同じ。
政府は後発薬の使用が多い薬局への調剤報酬を増やし、患者の後発薬への信頼感を高めるための啓発に取り組む。実際、世界的にみても、後発薬を使うのが基本だ。しかし日本では「後発薬の使用をためらう医師は依然として少なくない」(後発薬メーカー幹部)という。肝心の処方菱を出す医師が、後発薬を積極的に使わない例がある。後発薬の使用を促すのに並行して、政府は後発薬のある先発薬の価格を後発薬の水準まで段階的に下げる仕組みまで繰り出し、薬価の圧縮を目指している。
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3.女性医師、働き続けやすく 育児での離職者を再研修
1月30日 日本経済新聞 |
遅れていた女性医師のキャリアと出産・育児との両立を後押しする動きが広がっている。20代では医師の3割超が女性になった。日本の医療を支えるために女性の活躍は不可で、復職支援や働き続けやすい環境づくりを進める。
東京女子医大 再研修 復職プロジエクト
「この1,2年で症状が変わったことはありますか」。東京女子医科大学病院(東京・新宿)の総合診療科で1月上旬、山口あけみ医師(40)が精密検査に訪れた男性を診察していた。山口さんは2017年秋、約10年間の専業主婦生活から、非常勤医師として医療現場に復帰した。同大学卒業後、付属の医療機関に勤めていたが、4年目に夫の仕事の都合で米国に引っ越すため離職した。現在4〜10歳の2男2女を育てている。17年1月の帰国を機に、医師の仕事を通じて社会に役割を持ちたいと復帰を願ったものの、長く現場を離れ不安があった。「仕事を忘れているのでは」「ミスを起こしてしまったら」。後押ししたのが同大の女性医師再研修部門が提供する「再研修-復職プロジェクト」だった。
原則3カ月で希望者の要望に沿った頻度、内容の研修をする。制度は06年度に始まり、結婚や育児などで医療現場から離れた女性医師が対象だ。卒業校は問わない。17年1月までに233人が相談し、96人が研修を受けた。休職していた相談者のうち75%が復職した。山口さんは子育てとの両立を考え週1度、総合診療科で研修した。指導医にアドバイスをもらいながら実際に診療をして「自分にもできる役割がある」と前向きになれたという。再研修部門の唐沢久美子部門長は「キャリアが多様化し、一旦離職する医師も増えた。復職したいときに相談できる人がいないことが課題。人材という宝を掘り起こす必要がある」と話す。
厚生労働省によると医療機関で働く16年末の女性医師数は6万4305人で全体の21%。ただ男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占める。20年前と比べると29歳以下も、全世代でみても8ポイント高くなった。日本医師会の今村定臣常任理事は「女性には妊娠・出産など男性と異なるライフステージがあるが、女性に働いてもらわなければ医療現場は立ちゆかなくなる」と指摘。医師会は厚労省から委託を受け、就業希望者に医療機関を無料で紹介する「女性医師バンク」をつくった。
岡山大学病院 キャリア支援制度
一方、08年から子育てや介護中の医師らに基本3年間の「キャリア支援制度」を提供するのが岡山大学病院(岡山市)。それまでの定員と別に応募医師を配置する。勤務時間や頻度が比較的自由になる。制度利用後は大学病院で常勤復帰したり、地域の病院に就職したり。希望者が増え、来年度からは受け入れ可能時間を増やす予定だ。
働き方改革も進む。久留米大学病院(福岡県久留米市)は18年度、小児科のワークライフバランスを進める取り組みを、他科に紹介し広げる意向だ。ママさん医師が活躍中の小児科は13年末から土日にしっかり休めるよう体制を整備。休日にも主治医が担当患者の見回りやガーゼ交換をしていたのを、基本的に全て当直医が対応するよう変更した。入院患者らに対応する医師約20人の土日の平均勤務時間は、1日平均3.5時間から2.7時間に減少。患者から大きな不満はないという。
キャリア支援を担当する一人、守屋普久子医師は「結婚出産を控える若手の女性医師が増える中、働き続けやすい環境作りが必要。大学病院で人材が不足すれば地域に医師を派遣できなくなる可能性もあり、地域医療に影響を及ぼしかねない」と話す。
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4.平成30年度介護報酬改定の主な事項について
1月26日 厚生労働省 社保審 介護給付費分科会 |
1月26日に社会保障審議会介護給付費分科会は、平成30年度介護報酬改定を答申した。改定率は+0.54%で、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民1人1人が状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、平成30年度介護報酬改定により、質が高く効率的な介護の提供体制の整備を推進する。その概要は次の通り。
Ⅰ 地域包括ケアシステムの推進
中重度の要介護者も含め、どこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制を整備
‣ 中重度の在宅要介護者や、居住系サービス利用者、特別養護老人ホーム入所者の医療ニーズへの対応
‣ 医療・介護の役割分担と連携の一層の推進
‣ 医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設
‣ ケアマネジメントの質の向上と公正中立の確保
‣ 認知症の人への対応の強化
‣ 口腔衛生管理の充実と栄養改善の取組の推進
‣ 地域共生社会の実現に向けた取組の推進
Ⅱ 自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
介護保険の理念や目的を踏まえ、安心・安全で、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスを実現
‣ リハビテーションに関する医師の関与の強化
‣ リハビリテーションにおけるアウトカム評価の拡充
‣ 外部のリハビリ専門職等との連携の推進を含む訪問介護等の自立支援・重度化防止の推進
‣ 通所介護における心身機能の維亡持に係るアウトカム評価の導入
‣ 褥瘡の発生予防のための管理や排泄に介護を要する利用者への支援に対する評価の新設
‣ 身体的拘束等の適正化の推進
Ⅲ 多様な人材の確保と生産性の向上
人材の有効活用・機能分化、ロボット技術等を用いた負担軽減、各種基準の緩和等を通じた効率化を推進
‣ 生活援助の担い手の拡大
‣ 介護ロボットの活用の促進
‣ 定期巡回型サービスのオペレーターの専任要件の緩和
‣ ICTを活用したリハビリテーション会議への参加
‣ 地域密着型サービスの運営推進会議等の開催方法・開催頻度の見直し
Ⅳ 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定化・持続可能性の確保
介護サービスの適正化・重点化を図ることにより、制度の安定性・持続可能性を確保
‣ 福祉用具貸与の価格の上限設定等
‣ 集合住宅居住者への訪問介護等に関する減算及び区分支給限度基準額の計算方法の見直し等
‣ サービス提供内容を踏まえた訪問看護の報酬体系の見直し
‣ 通所介護の基本報酬のサービス提供時間区分の見直し等
‣ 長時間の通所リハビリの基本報酬の見直し
歯科関連では口腔衛生管理体制加算は施設系サービスに限定されていたが、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護といった居住系サービスも対象となり、1ヵ月30単位を新設。現行の口腔衛生管理加算は、要件を見直したうえで1ヵ月90単位に変更した。
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